第9話
結果として、アインオウルについては、壊滅、とまではいかなくとも勢力を削りつつあるそうだ。公爵がもっていたパーソライトを売り払い、それによって拡大を図っていたようだが、その計画がとん挫したため、逆に借金取りのような裏組織からも追われることになったようだ。そのため、ほぼ自壊ともいうべき状況にあるようだが、それでも活動は縮小しつつも継続していることが、現地の警察からの情報で知れていた。
「……ほう、そうなるだろうな」
そのことを新聞を通して知ったハイデであった。すでにラングマン大公国にある家へと戻ってきており、ペクーニアを伯爵のもとへと引き渡してからは、1か月近くが経っていた。ちょうど、感慨深げにコーヒーを飲みながら新聞を眺めていたハイデであるが、郵便受けに何かが投かんされた音を聞いた。立ち上がって取りに行ってもよかったのだが、それも面倒になったハイデは、魔術を用いて郵便受けの中にはいってたものを一式、手元にあるテーブルの空きスペースのところへと呼び寄せた。多くは、ダイレクトメールや光熱費や費用の請求書だったりしたが、その中で一つだけ初めての名前を見た。
「おや、彼からの手紙か」
住所はそういえば、伯爵が知っていたか。と思いつつも、そのはがきの裏面を見る。彼、というのはペクーニアであり、今は伯爵がいる地域の小学校に通って、文字の読み書きから教わっているらしい。この手紙も、その授業の一環で、知り合いに送ろうというもので、実際に投函して送られてきたもののようだ。つたない文字であるが、確かに意味ははっきりと分かる手書き文字で、いろいろと現況が書かれていた。
「少なくとも、彼が元気そうで安心した」
手紙には、あのときに背中を押してくれてありがとうや、一歩踏み出せたから、今の自分がいるんだ。といった内容がつらつらと書かれていた。そこで授業の一環ということもわかった。そこでハイデはペクーニアに返信を書くことにした。いろいろとあったことや、これからも気を付けて、といった内容であったが、ペクーニアのことも考えて、平易な英語で書いておいた。これできっと彼も理解ができることだろうと考えたからだ。手紙を投函するために外へと出ると、男が3人立っていた。どうやらアインオウルからの兵士らしい。
「邪魔するぞ」
そういって3人はそれぞれの歩幅でずかずかとハイデの家の敷地の中へと入ってくる。はぁ、都督台のため息をついて、3人に向かって言い放った。
「だったらお引き取り願おう」
そしてそれぞれの人に向かって、有無を言わさずに指パッチンをして見せる。それも3回。1回目には彼らの動きは止まり、2回目で彼らは驚愕の顔を浮かべ、それから3回目でヒュンと何かが通り過ぎるときの耳元での音の、風切り音がはっきりと聞こえ、3人は瞬時に消え去った。
「マナーは、常に備えなければならない。相手がだれかわからないときには、特に必要だ。それが相手に対する最低限のエチケットであろう」
すでに聞こえていないことは自明である。それでも、こうやってやってきた3人の兵士に対しての礼儀として、あるいはその蛮勇さに対して、ハイデはつぶやいた。




