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北の果ての女王の恋物語  作者: 彩華
一章 北の果ての出会い
2/12

2、

 6歳のライはもの珍しく見回っていた。

 群青色の大きな瞳が忙しなく動く。


「父上。全部が真っ白だよ。外は寒いのに部屋の中は暖かいね」


 まず初めに雪の多さに驚いた。そして、一面真っ白な世界に感嘆した。

 玉兎は息子の笑顔に苦笑しつつ、疲れ切っている妻を労った。

 ここは、北の最果てにあるため、来るだけで三ヶ月以上かかったのだ。疲れが出ても仕方ない。

 女王の行為で温かい部屋着やコートなどが贈られている。


「ゆっくり休め」


 軽くて温かい布団をかけてやると侍女に後を託し、やんちゃなフォルを乳母に預けた。

 床には厚い絨毯がひいてあるため、幼い次男がコロコロと転がっているのを面白そうに見やった後、ライを連れて部屋を出た。


「お父様。ここまで来た理由はあるのですか?」


 片付けをしていた凛夏が手を止め聞いてきた。


「ここは私の出発点でな。()()()にはここが故郷というのもあって、来たんだ。丁度、華黒もくるし、調度よいしな」


 もう一人の同行者であった、マツリは先にこの国に入り故郷に帰っているはずだ。


 昔から父親の若い頃の話を凛夏はよく聞いていた。まるで夢見心地のおとぎ話のように感じていた国が、実際にここにあるのが不思議に思えた。


「確か、華黒様はお父様と旅をされたのでしたよね。それにしてもお若い方ですわね」


 華黒の顔を思い出し呟く。

 長く美しい黒髪に深い闇の瞳を思い出すと心が揺すぶられた。


「氷瑠国ー光の一族も月闇帝国ー闇の一族も我らと同じ()()なのだが、この二つは特に寿命が長い。あの華黒でさえ百の歳は超えているがまだ青年期のはずだ。だからこそ漓闇王が王座についておられる」

「そうですの」


 凛夏が呟く。


「確か、瑞加女王は玉座について300年立っているはずだ。瑞加女王には漓闇王の正妃、この花様の他もうひとかた王女がおられる。あの方は華黒より年上だが、今もなお子供の姿のままでいらっしゃる」

「どうしてです?」

「さあ・・・。その理由がわかれば、瑞加女王も安心なさるだろうに・・・」


 静かに呟いた。


「てなわけで、ライ。王女様に会っても失礼のないようにな。ライ・・・ライ?」


 息子に忠告するために振り返ったものの、そこには息子の姿はなかった。扉が開かれたのか、わずかな隙間が開いていた。


「ライィ!!」


 玉兎王の絶叫がこだました。

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