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作戦会議

「バカねえオルタ。カッコつけて、サイズオーバーのビキニなんかつけてくるからよ」


「スレンダーでもクールビューティなシャンパ姉さんにはわかんねえッス。黙っててほしいッスねっ」

 ビキニを直しつつ、オルタはボクを指さした。


「それよりお兄さんッスよ。こんなナイスプロポーションをお持ちのウサギさんと、添い遂げてらっしゃらない?」

 アゴを大きく広げて、オルタは首を何度も振った。


「でも、シズクちゃんとはそういう仲じゃないんだけど」

「ある意味で生殺しッスねえ」

「そういうオルタちゃんも、結構魅力的だと思いますよ?」


「全っ然。女として見られてないッス」

 シズクちゃんが褒めても、オルタは手をヒラヒラさせる。

 ボーイッシュな見た目に反して、出るところは出ていた。

 誰も放っておかないとは思うのだだけれど?


 入浴交代の時間となった。


「では、そろそろ出ましょ。みんな待ちくたびれているわ」

「健康になったら、お腹すいたッス」

「だったら、コーヒー牛乳をカズユキからもらいなさいな。ハマっちゃうわよ」


 風呂から上がり、ボクはオルタにコーヒー牛乳をあげる。


「おお、これぞ文明の利器ッスね! いつもまっずいポーションばっかだから、このチープな味が染み渡るッス! あ、褒め言葉ッスよカズユキ殿!」


 オルタも、気に入ってくれて何よりだ。


 安全地帯にキャンプを張り、ボクたちも食事にする。

 メインディッシュは、シズクちゃんが獲ってきた怪鳥の肉だ。


 まだ先は長い。今のうちに英気を養っておく。


「随分と、楽しげな旅ッスねぇ。オケアノスパイセンとは、逆の生き方ッス」


 ボクたちの旅行記を聞きながら、オルタがオケアノスさんの方を向く。


「そうなのですか?」

「ええ。騎士に入隊していたのは、まとまった旅費を稼ぐためらしかったッス」


 大型魔物の討伐といった、大きな仕事もできることも魅力だったそうな。とはいえ常に大勢のグループで行動しなければならず、不自由も多かった。


「何がイヤかって、俺が苦労して手に入れた金もアイテムも、隊で山分けだとさ。気にくわねえ。俺のモンは俺のもんだろうが!」


 会話に入ってきたオケアノスさんが、虚空を掴む。最終的に取り分について騎士団内でもめ事を起こし、隊を辞めたそうだ。


「で、俺は部隊を抜けて、冒険者になった」

「家庭も作らないので? シャンパ先生といい仲では?」


 オルタがニヤけると、シャンパさんは左手を見せた。金の指輪をはめている。薬指に。


「シャンパは故郷に夫がいるぜ。学者だとよ」


 オケアノスさんが、シャンパさんとダンナさんとの仲を取り持ったとか。

 三人は、幼なじみだという。

 シャンパさんの夫は魔法学校の講師で、優秀すぎて街を抜けられないらしい。定期的に、シャンパさんの口座へ金を送っているという。


「どうして旅に同行しないので?」

「頭はいいんだけど、性格が戦闘に向いてないからよ。特に虫が嫌いなのよね」


 だったら、ダンジョン探索は不可能だ。

 このフロアなんて、巨大グモの巣窟だったし。


「寂しくないんスか?」

「会いたくなったら、これがあるわ」


 付け根に飾りの付いたワシの羽根を、シャンパさんがアイテムボックスから取り出す。


「ホルスを呼び出す伝説のアイテムじゃないッスか。それで帰ると」

「そういうこと」


 いつでも会えるから、シャンパさんは心配がないのだという。


「わたしが調査した資料を魔法学校へ文章で転送して、あの人がまとめるの。温泉資料は、興味深いって言っていたわ」


 回復の泉の存在価値は、魔法学校でも見直されているそうだ。


「それはうれしい報告ですね」


 続けていた甲斐があった。


「じゃあ、今まで得た温泉の調査報告を、シャンパさんにお渡ししますよ」


 ボクはノートPCを、シャンパさんに見せる。


「すごいわね、これ。ドラゴンサウナって、あなたが作ったの?」

「はい。今でもちゃんと稼働しているそうですよ」


 現在は力試しの冒険者より、サウナ目的の行商人が後を絶たないそうな。タダで入れてあげる代わりに、リムさんたちはお手製のお土産を街で売ってもらうのだという。


「ありがとう、カズユキ! あの人もきっと喜ぶわっ」

 興奮気味に、シャンパさんは資料を転送し続けた。

「しかし、この塔にどうして作物が育っているのか、まったくわからないんですよ」


 水は地下水か、雨水だろう。ガラス張りのフロアがあったから、日光だって取り込める。それでも、これだけの生態系を維持するには、循環が必要なはず。それがどういった仕組みなのか不明なのだ。


「ちょっとレベルを上げていきませんか? このまま行っても、犬死にしそうです。少しでも強くなっておいた方が」


 キャンプをしながら、気になっていたことを話す。このまま行っても、ダンジョンを突破できる可能性は低い。


「はいはい。私も賛成です!」


 ボクの提案に、シズクちゃんも賛同した。


 まだ、ここのモンスターは狩りやすい。食料にもなるし。


「故郷のエライ人は、こんな言葉を遺しています。『六時間で木を切れと言われたら、自分は最初の一時間で斧を研ぎます』って」


 リンカーンの言葉だ。


「準備を怠るな、って意味ね?」 

「そうだな。では、少し時間をくれるか? お前さんたちの業務に支障は?」


「ありません。むしろ、もっと回復の泉を探して認定しておきたい。今後のためにです」

 ボクは承諾した。

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