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第84話 イカサマ

――それから25分が過ぎた頃――


 約束の時間が近づきボーイがフロアから控室に戻ってきた。


「ウォッカ様、そろそろお時間にございます」

「もうそんな時間か。で状況は?」

「はい。現在はこう着状態でございます」

「ふん。どおりでフロアが静かなはずだ。まぁいい。とりあえず行くぞ」


 ウォッカは一瞬面白くなさそうな顔をしたがフロアのバルコニーへ立つ頃にはいつもの作り笑顔に戻っていた。


「皆々様! そろそろ約束の30分! どうやらまだお互いの睨み合いが続いている模様。ですが! 状況はどうあれ30分間生き残るという条件は満たされました! よって生き残るに賭けた皆々様におかれましては只今より報酬が2倍となりました! おめでとうございます!」


 ウォッカの言葉に歓喜した客の歓声でフロアが揺れる。


「さてさて、裏カジはまだ終わりませんよ。続けて参りましょう! 次の挑戦状はズバリ! クラーゲンジェリーフィッシュを倒せるか! それとも倒せないか!」


 それまでフロアが揺れるほど大騒ぎしていた客が黙り込む。


「おや? 皆々様、どうかなさいましたか?」


 すると貴族の青年が言う。


「ウォッカさん。流石にそれは賭けにならないでしょう」


 青年に同調した客がそうだそうだとヤジを飛ばす。


「お静かに! 皆々様がそう思われるのも無理はないでしょう。しかし! 何を隠そう彼らにはとっておきの秘策があるのです! 秘策の中身についてはお楽しみということであえてここでは明かしませんが私はそれを聞いた時、驚愕いたしました。そんな事が本当にできるのかと! しかし彼らは必ず成し遂げると私に誓ったのです! あの真剣な眼差しに嘘偽りはなかった。だから私は彼らを信じセントエレナ号までも提供したのです!」


 フロアが再び静まりかえる。


「コホン。とはいえ皆々様のお気持ちは察しております。ゆえに! 今回の成功報酬は大盤振る舞い! もし彼らが見事クラーゲンジェリーフィッシュを倒せたなら! 只今の賭け金の10倍、いや50倍の報酬をお約束しましょう‼︎」


 ご、50倍⁉︎ そのあまりに破格な報酬に客は狂喜乱舞。フロアは割れんばかりの歓声に包まれた。


「しかし! 先程同様失敗に終われば賭け金の5倍をお支払い頂きます。お受けにならなければ脱落とみなしここまでの賭け金は没収。いいですかな? それでは参りましょう! ジャッジターイム! スタート!」


 ウォッカの言葉で動き出す客。しかし今度はさすがに迷うようでしばらくの間客はそれぞれのブースを行ったり来たりしていた。


「……3、2、1、そこまで!」


 結果はなんとあれだけ迷いに迷っていたにも関わらず全員が成功するに集まっていた。


「さすがは裏カジにお集まりの強者つわもの! それでこそ真のギャンブラー! それでは彼らの行く末を全員で見守ろうではありませんか!」


 控室に戻ったウォッカが腹を抱え笑う。


「ガハハハ‼︎ やった! やったぞ! 大儲けだ!」

「ウォッカ様、つかぬ事をお聞きしてもよろしいですか?」


 ボーイはあらたまった様子でウォッカに聞く。


「なんだ?」

「アオイ様方の秘策とはいったい?」

「ブッワハハハハ! これは愉快。お前まで信じるとはな。秘策? そんなものあるわけないだろ。あれは適当に思いつきで言っただけだ」

「……ではアオイ様方に勝利はないと、そういうことでしょうか?」

「当たり前だ。あのクラーゲンジェリーフィッシュに勝てるわけがないだろ。それに万が一にも、万が一にもだぞ? そうなりそうになったら船は沈める。だから彼らがクラーゲンジェリーフィッシュを倒せる可能性など初めから無い! 私は勝てない賭けはしない! ガハハハ! 聞きたい事はそれだけか?」

「……はい」

「ならさっさとフロアに戻れ」

「わかりました。失礼致します」


 ボーイはウォッカに聞こえないよう舌打ちをするとフロアへ戻っていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] グフフ・・・ウォッカの元に「ざまあ」の気配が近付いてきている・・・。
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