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第82話 びーすともーど

「おし! ほなみんな後ろ向いててや。いくで!」


 僕たちが後ろを向くとすぐにムイはゴソゴソと何かをし始めた。するとドサッと甲板に着ぐるみが落ちてきた。


 え? 着ぐるみ? ってどういうこと? ムイちゃんまさか……脱いだ?


「ムイちゃん?」

「ダメー! こっち向いたら絶対ダメー!」

「ムイちゃん。もしかして着ぐるみ脱いだの?」

「脱いだ! だから絶対にこっち見たらあかんで!」

「わかったよムイちゃん。絶対そっち向かない」

「ならよし。ほなはじめるで……びーすともーど、発動!」


『ほなはじめるで』の後の言葉が小声でよく聞き取れなかったがあれは魔法? いやそうではなさそうだ。とにかくムイは僕たちの後ろで何かをしている。


「みんな伏せて!」


 ムイの叫び声に僕たちは半ば反射的に床に伏せ両手で頭を押さえた。


 バーーーーン! もの凄い衝撃と衝撃音で船体が大きく揺れた。


「何⁉︎ 何今の衝撃と音」

「クラゲの触腕をウチが弾き返した音と衝撃や」

「ええ⁉︎ あ、」


 僕は驚きのあまりムイの方へ振り向いてしまった。


「ごぉらー‼︎ 振り向いたらあかんってあれほど言って約束もしたのになんで振り向くねん! アオイ兄ちゃんの大バカ者‼︎」


「ムイちゃん! なんだよね?」

「せや。フンッ! だから使いとうなかったんや!」


 激怒するムイ。その姿はつい今しがたまで知っていたムイとはまるで別人いや別獣だった。


 子ども子どもしていたその容姿の面影は一切なく見上げるほどの背丈に筋肉質な手足と体。全身を覆うもふもふな毛に熊そのものといった顔つき。


 ムイが発動させたそれは獣化ビーストモードといって獣人族の中でも限られた者だけがもつ体質変化型能力向上術であるという。


「はぁほんま見られとうなかったわ。こんな可愛くない姿」

「そんなことないよ。ビーストモードのムイちゃんはもっふもふで可愛いよ」

「……ほんまか?」

「本当だよ」

「……そ、そか。まぁバレてもうたんは仕方ない。もうどうしたって隠されへんからな。ってみんな! 伏せて!」


 またしてもクラゲの触腕が襲いかかる。僕たちが甲板に伏せるとムイが叫ぶ。


獣牙爆砕拳じゅうがばくさいけん!」


 薄っすらと開けた僕の目にはムイの拳に弾かれたクラゲの触腕が写った。


(ムイちゃん。カッコいい)


 僕は素直にそう思ったがカッコいいなんて言ったらきっとムイは怒るだろう。もふもふ可愛いを愛するムイにとって今の姿は真逆なのだから。


 それから何度も何度もクラゲの攻撃は続きその度に衝撃と衝撃音が船体を揺らした。


「ハァ。ハァ。ほんまタフなやっちゃな。何とかジェナ姉ちゃんに矢を射ってもらう隙を作りたいんやけどな。攻撃を受け返すことでいっぱいいっぱいや。それとあの氷。どうにもこうにもあれが邪魔やな。あの氷がある以上矢を放ってもビクともせえへんやろな」

「ならコレを使ってみるってのはどう?」


 僕は火薬の入った樽をポンポンと手のひらで叩いてみせた。


「火薬か! すっかり忘れとったで。たしかにそれなら氷を壊せるかもしれへんな」

「これをクラゲの足元で爆発させればきっと氷が壊れてクラゲの固定が外れると思うんだ」

「アオイのその発想凄く良いと思うけど、そもそもどうやって樽をクラゲの足元まで運ぶの?」

「あ……」


 ルヴィスの言う通りだった。僕はこの火薬がパンパンに詰まった重たい樽の運搬方法をまったく考えていなかった。


「それやったら心配ないで。ウチがぶん投げるさかい」


 ムイちゃんが? 冗談でしょ……ってわけでもないのか。この樽をここまでひとりで運んできたのもムイちゃんだもんな。


「けどひとつ問題がある」

「問題?」

「せや。問題や。火がない。火薬につける火がないねん」

「火ならあるわよ」


 ルヴィスは魔法書を開きフェノムを唱えムイに小さな火球を見せた。


「わお!」

「これなら火薬に火がつけられそうでしょ?」

「せやな! これなら火つけられる! 樽はウチがヤツの足元に投げ込むさかいルヴィス姉ちゃんは魔法で火をつけてや」

「わかった。けど火をつけるなら私よりジェナの方が良いわね」

「わ、私ですか? 私は魔法使えませんがどうやって?」


 急に話しを振られたジェナがキョトンとする。


「ここからクラゲまでの距離を考えるといくら樽が大きいからといっても正確に魔法フェノムを当てるのはなかなかのものよ。だから精密な狙い撃ちができるジェナにお願いするの。矢の先に布か何かを巻きつけてそこに火をつけて飛ばせば火薬に着火させられるでしょ?」

「はぁ〜なるほどな。ルヴィス姉ちゃんは賢いお人やな」

「そういうことだからジェナ、お願いね」

「はい! 頑張ります!」

「よっしゃ! そうと決まれば善は急げや。さっそく1発目いくで!」


 ムイが1つ目の樽を両手で掴み持ち上げたと同時にルヴィスは矢の先に落ちていた帆の切れ端を巻きつけ魔法で火をつけた。


「準備はええか?」

「いつでもいいわよ」

「ほないくで!」


 ムイは構えた両腕を勢いよく下ろしクラゲめがけ樽を放り投げた。樽は尋常じゃない速さで飛んでいきクラゲの足元の氷に突き刺さった。


「ジェナ姉ちゃん! 今や!」

「はい!」


 シュゴゴゴゴーーーー! 火のついた矢はくうを裂くように独特な音を立てながら飛び見事樽のど真ん中に命中した。


 ズドドドドーーーーン‼︎ 火薬に着火した樽はもの凄い爆音を発し爆発。爆風とともにきな臭い火薬の匂いが辺り一面を覆った。


「氷は?」

「砕けとる! ちゃんと砕けとるで! ついでに爆発と矢の突風でクラゲが吹っ飛びおった! おっしゃ! 続けて2発目喰らわしたる!」


 そう言うとムイは2つ目の樽をクラゲに向かって放り投げた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] パーティで力を合わせて戦うの良いですね~! 燃える展開!ムイちゃんが熊さんになったのも素敵(笑)
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