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第8話 ライバルは王子様?

「何だかわかんねぇけど助かった」

「お怪我は無いですか?」

「ワッ! 何だお前ら!? 金なら本当に持ってねぇぞ!」

「うん。大丈夫そうね」

「だね」

「……もしかして俺を助けてくれたのはお前らか?」

「はい。とは言っても実際魔法を使ってくれたのは彼女の方だけどね」

「ニヒヒ♪」


 両腕を腰のあたりに当て得意げな顔で仁王立ちするルヴィス。


「そうだったのか。ありがとな。それにしてもキミ、可愛いね。名前は?」

「名前を聞くならまずはそっちから名乗るべきじゃない?」


 ルヴィスは仁王立ちのまま顔をしかめた。


「そうだな悪かった。でもそんな怖い顔しないでくれよ。可愛い顔が台無しだ」

「ふん。キザったらしい」

「ハハ。その気の強さ嫌いじゃないぜ。俺の名はアルス・ラーグ・エルトナイン。アルスとでも呼んでくれ」

「アルス・ラーグ・エルトナイン!?」


 彼の名前を聞いたルヴィスが声を大にして驚く。


「そんなに驚くってことは彼は凄い人なの?」

「何言ってるのよアオイ。凄いも何もアルス・ラーグ・エルトナインっていったらこの辺り一帯を治めるエルトナイン王国の王子様の名前よ!」

「お! 王子様!?」

「でも待って。その話しちょっとおかしいわね」

「おかしい?」

「だってそうでしょ? 王子様が簡単にこんな目に合うと思う?」

「そう言われればたしかに」

「私はあなたが王子様だなんて信じないわ。言葉遣いだってそれ相応とは思えないし」

「ハハ。そりゃそうだよな。まぁ俺は無理に信じてくれとは言わねぇよ。けど嘘はついてねぇ。ところでお嬢様、そろそろお名前をお聞きしてもよろしいですか?」

「……ルヴィスよ」

「ルヴィスか。いい名前だ。そんじゃこれから二人でお茶でもするかルヴィス」

「なんで私があなたとお茶しなきゃならないのよ。それと馴れ馴れしく呼ばないで。ルヴィスって呼んでいいのは夫であるアオイだけなんだからね」

「はぁ!? 夫だと!? お前ら夫婦なのか!? これは驚いたぜ」

「まだ仮ですけど」

「アオイ! 余計な事は言わなくていいの」


 アルスは左の口角をあげニヤリと笑った。


「仮。だったら俺にもまだチャンスはあるってことだな。アオイといったか? 今から俺とお前は恋のライバルだ!」


 恋のライバル!? 待ってくれ。相手が悪すぎるだろ。話が本当ならあいつは一国の王子。金と権力を持ち合わせていることは間違いない。それでいてなかなかのイケメンで女性の扱いに慣れていそうな振る舞い。どれをとっても僕に勝ち目はないじゃないか。そう思った矢先ルヴィスが冷めた口調で言った。


「絶対にないわ」


 ルヴィスの言葉に僕はほっと胸を撫でおろした。


「くぅ〜。その素っ気無い態度。ますます気に入ったぜ」

「はぁ。面倒くさいの助けちゃったわね。行こうアオイ」

「あ、うん」


 アルスに背を向け歩きはじめると彼は慌てて僕たちの前に回り込み両手を広げ行く手を遮った。


「ちょっと待った!」

「しつこいわね」

「俺とアオイのどっちが君に相応しい男かはひとまず置いといてお前たちには礼をしなくちゃならねぇ」

「礼? そんなのいいわよ」

「いやそういう訳にはいかねぇ。助けられて礼の一つもしなかったとなればエルトナインの名に恥じる!」

「へぇ意外。そんなプライドがあるだなんて」

「まぁな。これでも少しはエルトナインの名を背負ってるって自覚はあるもんでね。だからいいだろ?」

「どうする? アオイ」

「僕は良いと思うよ。彼の好意を無下にするのは悪い気がする」

「おぉ! さすがは俺がライバルと認めた男だ。話がわかるねぇ。そんじゃ、何がいい?」

「何って急に言われても……そうだ! 旅に必要な物を揃えてもらうってのはどうかな?」

「いいわね。それでいい?」

「もちろんだ。しっかし旅とは意外だな。お前たちどんな旅をしてるんだ?」


 その質問にはルヴィスが素早く口を開いた。きっと僕が答えてしまうとさっきのように余計な事を口走ってしまうかもしれないとそう思ったのだろう。


「旅はこれからはじめるの。服を作るための色々な材料を集める旅をね」

「服の材料集め? そんなの市場に行けば事足りるだろ?」


 アルスは不思議そうな顔で言った。


「市場にあるものじゃダメなの。私たちの作ろうとしている服の材料は最高品質でなければならないから」

「へぇ何だかわからねぇけど兎に角すげーもん作ろうとしてんだなお前たち。面白ぇ! そんじゃ早速旅の支度をしようじゃねぇか。西市に知り合いの店があるからよ。案内するぜ」


 僕たちはアルスの後につづき西市へと向かった。

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