第76話 サポーター
ホテルに戻った僕たちは1度女性陣の部屋に集まり各々武器や防具などの装備品や手持ちの道具の確認や手入れを行い明日の出港に向けて最終の打ち合わせをはじめた。
集合は明朝5時にここパムラムハーバーホテルのロビー。出港は全員が集まり次第。風向きにもよるが昼前にはクラーゲンジェリーフィッシュが現れる海域に到着できるはずだ。
そしてクラーゲンジェリーフィッシュがその姿を現した時が戦闘開始の合図だ。とはいえ直接の戦闘は極力避けなければならない。なぜならクラーゲンジェリーフィッシュの攻撃をまともにくらえば間違いなく船は沈んでしまうからだ。
ヤツの触手がとどかない距離を保ちつつイゼラトスの弓で作り出した突風であの落雷の台地へ押し運ぶ。最後はその落雷をヤツに喰らわせればジ・エンドだ。
とまぁこれが上手く事が運んだ場合の流れなのだがさすがに今回ばかりは相手が相手なだけにいつものようにはいかない気がしていた。
「そうだルヴィス。クラゲのヤツ、魔法は効くのかな?」
「んーたぶんクラゲには効かないと思う。ムイちゃんはそのへんの事知ってたりする?」
「知っとるで。せやけどその前にひとつ聞きたい事がある。2人ともさっきからクラゲ、クラゲってそれはなんやの?」
「あーこれはね……」
ルヴィスはクラーゲンジェリーフィッシュだと長すぎて呼びづらいためクラゲと略していることをムイに伝えた。
「クラゲか。ええな。ウチも今からそう呼ばせてもろてもええか?」
「ええ。もちろん」
「ありがと。ルヴィス姉ちゃん。さっきの話しの続きやけどな。結論から言うてクラゲには魔法は効かへん。ほんとかどうか知らんがクラゲは青の魔女が施した強力な魔法のバリアに包まれとるっちゅうのが通説や。その昔、大陸の魔法使いが束になってクラゲに挑んだもののまったく歯が立たなかったっちゅう昔話しがあるくらいやからな」
1000年魔大戦の時代から今日まで生きながらえていることを考えればそれはきっと本当の話しなのだろう。だとすれば尚更直接の戦闘は避けなければならない。魔法が通用しないとなると実質ヤツと対峙できるのはジェナのイゼラトスの弓だけということになるからだ。
「そっか。魔法が通用しないなら今回は私の出る幕はほぼ無いと考えていいわね。けどちゃんとサポートに回るからね」
ルヴィスは少し残念そうな顔をしたものの最後はニッコリと微笑んだ。
「私は出来る限りの補助魔法を駆使いたします」
クラニは両手をグッと胸の辺りで握った。
「私はとにかく全力でイゼラトスの弓を引きます!」
ジェナは気合十分といった顔で言った。
「ウチもルヴィス姉ちゃんと一緒でサポートやな。アオイ兄ちゃんは?」
「僕もサポートだな。僕たちにはイゼラトスの弓以外クラゲに対抗できそうなものはないからね。だからジェナさんを全力でサポートします!」
「全力で⁉︎ 嬉しい! アオイ様どうぞ宜しくお願い致します!」
ジェナは僕の言葉に頬を赤らめ喜んだ。
「ほなつまりはみんなでジェナ姉ちゃんをサポートするっちゅうことやね」
「皆様どうぞ宜しくお願い致します。私、頑張ります!」
ジェナは僕たちに向かってペコリと頭を下げた。
「アオイ、他に何かある?」
「他に? んー特にないかな」
「ならあとはゆっくりと休むだけね」
「そうだね」
こうして最後の打ち合わせを終えた僕たちはそれぞれの部屋や家に戻り寝床についた。
(はぁ。ついに明日、か。ていうか僕ら本当にアレを何とかできのかな? もしかしたら……ここで僕の異世界生活も終わってしまうかも……)
クラーゲンジェリーフィッシュのことを考えれば考えるほど不安が募っていった僕は深夜まで寝付けないでいたが最後の最後は強烈な睡魔に襲われ自分でも気づかないうちに眠りに落ちていた。




