第66話 ウォッカの悪巧み
ホテルに入るとすぐにいつものボーイが僕たちをウォッカの部屋へ案内してくれた。
「おお! アオイくんお帰り。みんな揃って私に会いに来たということは何か策を思いついた、と考えてよいのかな?」
「はい」
「おお! そうかそうか。それでその策というのは?」
僕はウォッカにクラーゲンジェリーフィッシュをどうにかする策を伝えた。
僕の考えた策、それは船乗りから得た情報よりクラーゲンジェリーフィッシュが突風に弱いと推測し自在に操れる突風でヤツを吹き飛ばしてしまおうというものだった。
「ふむふむ。実に面白い策だね。それでそれはいつ実行するのかな?」
「それは……」
「まだ決まっていないんだね。いいよいいよ。ゆっくり考えてくれたらいい。その日が決まったらまたここへおいで。もちろんそれまで部屋は自由に使ってくれていいからね」
「はい。ありがとうございます」
僕たちは軽く頭を下げるとウォッカの部屋を出て僕の部屋に集まった。
——僕が部屋を出た直後のウォッカの部屋——
「グフッ。これは想像以上に稼げそうな匂いがする。あの者たちにはなんとしても週末に海に出てもらわねばな。おい!」
「お呼びでしょうか。ウォッカ様」
「アレの準備は進んでいるだろうな?」
「はい。既に会場の準備は終えてございます。また参加者の手配も順調に進んでおりますゆえご安心下さい」
「うむ。開催は週末だ」
「かしこまりました」
——アオイの部屋——
「ねぇアオイ、なんで明日にでも行けます! って言わなかったの? イゼラトスの弓は魔力を取り戻したのよ?」
「ルヴィス。僕もそう答えたかったよ。けどそれは無理なんだ」
「無理? なんで?」
「海に出たくても船がない」
「あ……」
ルヴィスはそれ以上なにも言わなくなった。そしてその場にいる全員が黙り込んでしまった。
アルスなら船の1隻や2隻簡単に用意できたかもしれないがあの状態ではとてもお願いなどできない。
「あの、ウォッカさんに相談してみるというのどうでしょうか?」
「ジェナさん! それですよ! なんですぐに気がつかなかったんだろう。ウォッカさんならきっと力を貸してくれるはず。僕ちょっとウォッカさんのところへ行ってきます!」
僕はそう言い残すとウォッカの部屋へ走った。
「ウォッ、ウォッカ、ウォッカさん!」
「どうしたの? アオイくんそんなに息を切らせて」
「ご、ご相談したいことがありまして」
「相談?」
「は、はい。それは、ふ、ふ」
「船!」「船!」
僕とウォッカの声が重なった。
「え⁉︎ ウォッカさん何でわかったんですか?」
「簡単な事だよ。アオイくんたちはクラーゲンジェリーフィッシュに挑むのだから海に出るための船が必要なのは当然」
「ウォッカさん! さすがです」
「ハッハッ。褒めても何も出ないよ。船以外はね」
「え?」
「アオイくん。船は私が用意しよう。最短で今週末には用意できると思うから決行の日はそこでどうかな?」
「はい! それでお願いします! 僕みんなに伝えてきます」
僕はウォッカの部屋を出ると自分の部屋へ走った。
——僕が部屋を出た直後のウォッカの部屋——
「グフッグフッ。こうも予定通り私の手のひらの上で転がってくれるとは怖いくらいだ。おい!」
「お呼びでしょうか」
「船を一隻用意しろ」
「ウォッカ様。今すぐ用意できる船はセントエレナ号だけにございます。いかがなさいますか?」
「それはダメだ! あの美しい船を、セントエレナ号を出すなどもったいない! ……いや待て。あれだけの船を出せば逆に……おい!」
「はい」
「セントエレナ号を用意しろ」
「よろしいのですか?」
「グフッ。良い。それと仕掛けは絶対に忘れるな」
「はい」
――僕の部屋――
「はぁはぁ。み、みんな」
「大丈夫? アオイ。話しは落ち着いてからでいいから少し休んで」
「だ、大丈夫。船、ウォッカさんが用意してくれるって!」
「ほんとに⁉︎ やったねアオイ!」
「凄いです! アオイさん!」
「アオイ様、さすがです!」
「ほんま凄いわ。アオイ兄ちゃんは交渉ごとが上手いんやな」
「いやいや。ウォッカさんはもとから僕たちに船を用意してくれるつもりだったんだよ。だから部屋に行ったらすぐにその話しになってね。快諾してくれたんだ」
「そうだったんだ。何にしても船が用意できたんだからよかったじゃない」
「うん! そうだ船は週末には用意できるって。だからその時が決行の日になりそうだ」
「そっか。ならまだ2日あるわね。そうだ! せっかく時間あるから明日はみんなでパムラム観光しない?」
「いいですね! しましょう観光!」
「ぜひしたいです! 観光!」
「ほなウチが案内したる。アオイ兄ちゃんそれでええか?」
「うん。いいよ」
「それじゃ明日の観光に向けて今日は休みましょう! ってアオイ、今夜は1人になっちゃうけど大丈夫?」
「子どもじゃないんだし大丈夫だよ」
「フフそうよね。それじゃ明日の朝迎えにくるから。おやすみ!」
「お休み。みんなもおやすみ」
ルヴィスの後に続き他の3人もおやすみを言い女子部屋に戻っていった。




