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第50話 ルッカ再来

 その夜はロックが水浴びで1人時間がズレた以外は温泉の効果もあってか皆あっと言う間に眠りにつき朝まで起きることはなかった。


 トントントン。キッチンから聞こえる小気味良い音と鼻をくすぐる良い匂い、そして窓から差す眩しい日の光りで目が覚めた僕は1人朝食の支度をしているであろうリルエマを手伝うためキッチンへ向かった。するとそこにはリルエマはもちろんのこと朝食の支度を手伝うクラニとジェナの姿があった。


「おはようございます」

「おはよぅアオイ」

「アオイさん。おはようございます」

「おはようございます。アオイ様」


 ん? 1人足りない。そうそこにはルヴィスの姿がなかった。


「皆さん早いですね。あれ? ルヴィスは?」

「ルヴィスさんはまだ寝てますよ」


 クラニがニッコリと笑いながら言った。


「まったく皆んなは早起きしてリルエマさんの手伝いをしてるってのに1人寝てるなんて。僕起こしてきます」

「大丈夫だよぉアオイぃ。ルヴィスちゃんきっとぉ疲れてるんだよぉ。だからぁもう少しぃ寝かせてぇあげよぅ」

「わかりました。リルエマさんがそう言ってくれるならもうしばらく寝かせておきます」

「なんか良い匂いがすんな」


 リビングで雑魚寝していたアルスが朝食の香りに誘われキッチンにやって来た。


「おはよぅアルス」

「アルス様、おはようございます」

「おはようございます。アルス様」

「おはようさん。みんな早ぇな。そういやロック見なかったか?」


 言われてみれば僕が起きた時には既にロックの姿は部屋になかった。てっきりリルエマの手伝いでもしているのかと思ったがキッチンにもその姿はない。


「ロックさんならぁ朝の見回りにぃ行ってるよぉ」

「朝の見回り? あいつこんな早くから動いてんのか?」

「ロックさんはぁ日が登るちょっと前からぁ外のぉ見回りにぃ出るのぉ」

「マジか⁉︎ すげーなあいつ」

「無理しないでぇって言ってるんだけどねぇ」

「ハハハ。あいつは頑固だかんな。その辺は好きにさせたらいいさ」

「フフ。そうねぇ」


 リルエマは会話を続けながらもいつも通り手際良く手を動かしクラニとジェナのサポートも相まってテーブルの上には次々と朝食の品々が並ぶ。パンにソーセージに目玉焼きにサラダにオルンジのジュース。最後にヨーグルトのようなものが置かれ朝食の支度が整うとリルエマが両手を合わせ言う。


「そろそろぉ帰ってくるころねぇ」


 と次の瞬間、ガチャっと玄関のドアが開きロックが戻ってきた。


「只今戻りました。本日も特に異常はございませんでした。ハッ⁉︎ これは皆々様おはようございます!」

「お帰りぃロックさん。いつもぉありがとぅ。朝ご飯出来てるからぁ一緒にぃ食べよぅ」

「はい!」

「アオイぃ。ルヴィスちゃん呼んできてぇくれるぅ?」

「そうですね。起こして来ます」


 僕が部屋に入ろうとドアノブに手をかけたその時、ドアが開きルヴィスが出てきた。


「みんなおはよう。ってごめんなさい。もうみんな揃ってたんだね」

「良いのよぉ。さぁ座ってぇ」

「はい」

「ウフフ。やっぱりぃ多人数でぇご飯食べられるのはぁ楽しいねぇ。それではぁ。いただきまぁす」

『いただきまーす』


 全員で手と声を合わせリルエマたちの作ってくれた朝食をいただく。


「そういやジェナ、エルフ族は弓矢を狩にしか使わなぇってテシア様は言ってたけどよ。本当にそうなのか?」

「はい。テシア様がおっしゃるようにその昔は戦いに用いていた時代もあるようですが今は狩猟以外に使うことはありません。それは無駄に仲間同士の争いを避けるためでもあるとテシア様より聞いた事があります」

「なるほどな。けどよジェナ。お前には悪いんだがこれから俺たちと旅を共にする以上何かしらの戦闘はつきもんだ。となるとお前にも武器を手にしてもらわなきゃならねぇ。無理に戦えとは言わねぇが自分の身は最低限自分で守らなきゃならねぇからよ」

「……はい。それは里の外に出ると決めた時より覚悟しておりました」

「パムラムに向かうにはどの道ルッカを経由するからよ。ファルマンとこに寄ってジェナの装備を揃えようぜ。もちろん金は俺が出すから心配すんな」

「アルス様、何から何までお気遣いありがとうございます。私、皆さんの足でまといにならないよう頑張ります!」


 朝食を終えた僕たちはリルエマとロックに別れを告げるとルッカ行きの馬車に乗った。


「ねぇ。何か前に通った時より馬車が増えてない?」

「そうだね。前にベレンに向かった時には他の馬車とすれ違う事なんてなかったのにね」


 それはルッカに着いてからわかった事だが僕たちが盗賊団を討伐したという話しは既にエルトナイン王国全土に広まっているといいこれまで移動を控えていた多くの商人や貴族が街間の移動を再開したということだった。


「ここがルッカ。とんでもない街ですね。ベレンですらこんなに人がいるのかと驚いたのにここにはその何倍いるのですか? 私、目がまわりそうです」


 初めてルッカの様子を見たジェナが少々ふらつきながら言った。それは僕も同じだった。明らかに以前のルッカよりも行き交う人々や物が増えている。それは見ているだけで目がまわる光景だった。


「これじゃメインストリートはダメね」

「それならまたあの道でいく?」

「そうね。裏道から行きましょう」


 僕たちは以前僕とルヴィス、そして途中からアルスも加わって通ったあの裏道を抜けファルマンの店へ向かった。

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