第49話 ハフハフ
「はぁ良い湯だったなぁ」
最後に行ったのはいつだったかわからないくらい久しぶりに入った温泉はとても気持ちが良かった。湯舟から上がりぼぉーっとその余韻に浸っていると勘違いをしたアルスが心配をして声をかけてきた。
「大丈夫かアオイ。のぼせちまったか?」
「ああごめん。温泉があまりにも気持ち良かったから余韻にひたってた」
「なんだそうか。なら心配いらねぇな。そんじゃそろそろロックのとこに行ってやろうぜ」
「うん」
温泉から出た僕たちを入り口で待っていたロックが出迎える。
「アオイ殿! アルス様! お帰りなさいませ!」
「おう。戻ったぜ。ロック、お前も今から入ってきたらどうだ? すげー気持ちいいぜ温泉」
「お言葉はありがたいのですが私は後ほどリルエマ殿の家の井戸で水浴びさせていただきますゆえどうかお気になさらず」
「まったく頑固なヤツだな」
するとそこへルヴィスとクラニが戻ってきた。
「みんなお待たせ〜。すっごくよかったね温泉。広いし、気持ちいいし、楽しいし」
「ルヴィスさんたら終始はしゃぎっぱなしでまるで子どもみたいだったんですよ」
「だって大勢でお風呂に入るのなんて初めてだったからつい楽しくって」
そして少し遅れてリルエマとジェナも戻ってきた。
「おまたせぇ〜。いいお風呂ぉだったねぇ」
「皆様お待たせいたしました」
「それじゃぁ湯冷めしないうちにぃお家にぃ帰りましょぅ」
「リルエマ殿の言う通りにございますな。風邪などひかぬうちに家に戻るといたしましょう」
階段沿いに並ぶ土産物屋や屋台を眺めながら元来た道を戻っているとリルエマが1軒の屋台の前で足を止めた。
「ねぇねぇみんなぁこれぇ食べてぇみないぃ?」
リルエマはモクモクと湯気をあげる蒸し器らしきものを指差し言った。するとその屋台の店主が声をかけてきた。
「らっしゃい。熱々出来立て口に入れた瞬間思わずハフハフしちゃう肉まんじゅう。温泉名物ハフハフ肉まんだよ! 是非この機会に食べてって! ほら」
店主が蒸し器の蓋を取るとブワッと一気に湯気があがりそこには見覚えのある白くて丸いものが姿を現した。
この世界にはオルンジやらレスタやら僕のいた世界と良く似たものが数多く存在するがこのハフハフ肉まんは味はまだわからないがその見た目は肉まんそのものだった。
「ん〜良い香り。美味しそう」
「でしょぅルヴィスちゃん。おいしそうだよねぇ。だからぁ食べよぉ?」
「リルエマ殿! 皆々様! ココは私がご馳走いたします!」
「え〜ロックさんいいのぉ?」
「もちろんにございます! オヤジそのハフハフ肉まんとやらを人数分用意してくれ」
「まいど。では7つで210ルクになります」
ロックは店主にお金を払い人数分のハフハフ肉まんを受け取るとそれぞれに手渡した。
「ささ、皆々様。冷めないうちにどうぞこちらを」
「ありがとぅ〜ロックさん。いただきまぁす」
僕たちは各々ロックにお礼を言いハフハフ肉まんにかぶりついた。
「んふぅ〜熱々でぇおいひぃ〜」
リルエマは口をハフハフさせながら幸せそうに微笑み、そんなリルエマの笑顔を見たロックもまた幸せそうに微笑んだ。それから僕たちは肉まんを食べながら家路についた。
「ただいまぁ〜。眠〜い。私ぃ眠いからぁもぅ寝るねぇ。みんなぁおやすみなさぁ〜い」
家に着くなりリルエマはそう言うと自分の部屋に行ってしまった。
「リルエマさん行っちゃったけど僕たちはどうしよう?」
「そうね。勝手に部屋借りるわけにはいかないから街に戻って宿を探すしかないわね」
「皆様、よろしければあちらの部屋をお使い下さい」
え? なぜ家主でもないロックが部屋を使う許可を出せるのか。そう思ったがロックの次の説明でその疑問はスッキリと晴れた。
ロックはリルエマ警護という任務に24時間体制であたっているといい任務にあたった初日の夜、外で野宿をしようとしていたところを不憫に思ったリルエマから部屋を使うよう声をかけられたのだという。それ以来ロックは住み込みで働いているのだといった。
「そうかそうか。そりゃ良かったな」
「はい。リルエマ殿には感謝しかありません」
「でもよロック。俺たちが部屋使っちまったらお前はどうすんだ?」
「私はここで寝ます」
「ここで? それでいいのか?」
「はい。それと申し遅れましたがアルス様とアオイ殿もこちらで寝て頂きます」
「あ? 俺たちもなのか?」
「はい。大変申し訳ないのですがあちらの部屋は全員が寝泊まりできる広さではございませんので」
「あ〜たしかにそうだよな。わかった俺たちもここで構わねぇぜ。な、アオイ」
「うん。僕もここで大丈夫です」
「ご理解に感謝いたします。では女性の皆様はあちらでおやすみ下さい」
「ありがとうロックさん。それじゃ私たちも寝るね。みんなおやすみ」
「おやすみルヴィス」
「おう。おやすみ」
「おやすみなさいませ」
ルヴィスに続きクラニとジェナもおやすみの挨拶をし部屋へ入っていった。




