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第46話 リルエマの頼みごと

「行っちゃった。これはまたらしばらく出てこないやつかな?」

「きっとそうね。今回はここに泊まりっぱなしは悪いから出来上がるまでは街の宿で待ちましょう」

「そうだね」


 リルエマの原案からするとまずは型紙に合わせ生地を裁断する作業に取りかかるはずだ。


 バタン! リルエマが入っていった部屋のドアが勢いよく開いたかと思うとそのリルエマが血相を変えて飛び出して来た。


「アオイーーーー!」

「ど、どうしたんですか? リルエマさん」

「アオイーー!」

「わっ! ちょ、ちょっとリルエマさん。お、落ち着いて」


 僕は血の気がひいた。それもそのはず僕の喉元にはリルエマが手にした裁ち鋏の先が突きつけられていたからだ。


「落ち着いてなんていられないわ!」

「アオイ! リルエマさんに何したの? こんなに怒らせて」


 ワナワナと震えながらルヴィスは僕にそう言ったが僕にはまったく身に覚えのない話しだけにどうしたらよいかわからなかった。


「ぼ、僕は何も。リルエマさんを怒らせる様なことはしてないよ。たぶん」

「私は怒ってなんかないよ? 困ってるのよ。コレよコレ。この裁ち鋏」

「裁ち鋏?」

「そう。この裁ち鋏じゃ繊細なシークルを思うように裁断できないのよ。これも結構な業物なんだけどさ。それとコレも。この針も使えない」

「なんだ。そういうことでしたか」

「なんだじゃないわよ。裁ち鋏が無きゃ話しにならないわ。あと針もね。だからアオイにまたお願いしたい事があるの」


 リルエマのお願い。僕は大体の察しがついていた。それはシークル用の裁ち鋏と針の調達。


「アオイならもうわかってると思うけどシークルを裁断できる最高品質の裁ち鋏と針を用意してほしいの」

「ですよね。それでリルエマさん。当てはあるんですか?」

「あるわ。それはね。ドワーフ族よ」


 ドワーフ族は鉱物の加工を得意とする種族で様々な鉱物から作られる品質の高い武器や防具は数多の国の軍に起用されているという。主な産業は武器や防具であるものの包丁や裁ち鋏、針などの日用品もまた品質が高く世界中にその愛好家がいるという。


「ドワーフ族の国へ行くには海を渡らなければですよね?」

「そう。クラニちゃんのいう通りドワーフ族の国ワルドワムドは海を渡った先にあるわ」

「ではパムラムの港から大陸行きの定期便に乗れば良いのではないでしょうか?」

「その通りよ。パムラムから船に乗ればワルドワムドに行くことができるわ」

「では話しを整理すると僕たちはこれからパムラムの港を経由してドワーフ族の国ワルドワムドに向かえばいいってことですね?」

「そうなるわ。アオイも、みんなもお願いできる?」


 リルエマの頼みに反対する者はなかった。


「みんなありがとう。海を渡って大陸まで行くのは大変な事だけどよろしいお願いします」


 大まかな行動予定が立った僕たちはひとまず港町パムラムへ向かうことにした。


「そうだ。ついでに頼まれてほしいことがもうひとつ。これをパムラムのマーメイルというお店に届けてほしんだけどいいかな?」


 それは以前リルエマが試着していた依頼品の水着だった。


「もちろん。いいですよ。そのマーメイルってお店に行ってそれを渡せばいいんですよね?」

「色々と頼んじゃってごめんね」

「そんなリルエマさんが謝ることじゃないですよ。元はと言えば僕たちが言い出した話しなんですから」

「アオイはやっぱり優しいね。ありがとう」


 リルエマはニッコリと笑った。


 港町パムラムへは一度ルッカを経由する必要がある。ここベレンからは直接パムラムへ向かう馬車は出ていないからだ。そしてさすがは一国の王子。ルッカに戻ればアルスの所有する馬車でパムラムへ向かうことができるというのだ。という事で僕たちはひとまずルッカへ戻ることにした。


「そんじゃルッカに戻るとするか。と言いてぇところだが今からだともう日が暮れちまうしそもそも馬車がねぇ」

「ならぁ今日はぁここにぃ泊まってぇいきなよぉ」


 あ、いつものリルエマさんに戻った。


 僕たちはリルエマの行為に甘え一晩泊めてもらう事にした。その夜もリルエマの美味しい手料理が振る舞われ僕たちは楽しく幸せな時間を過ごした。


 食事を終えふと窓の外をみると


「あれ? 何だあの白い煙。まさか!」

「どぉしたのぉ? アオイぃ」

「リルエマさんアレ! あの白い煙! 火事かも!」

「あ〜。アレはぁ火事なんかじゃぁないよぉ。アレはぁ温泉のぉ湯煙だよぉ」

「温泉⁉︎ ここには温泉があったんですか⁉︎」

「あれぇ? 言ってなかったっけぇ。ベレンにはぁ有名な温泉がぁあるのよぉ。そうだぁ今からぁみんなでぇ行ってみるぅ?」

「温泉! 行きたーい」

「私も行きたいです!」


 温泉のワードにいち早く反応したのルヴィスとクラニだった。


「アオイもぉアルスもぉジェナさんもぉロックさんもぉ行くでしょぅ?」

「はい。行きます」

「もちろんだぜ」

「私は温泉というものを知りません。ですが行ってみたいです!」

「私は皆様を護衛いたします!」

「ならぁ。みんなでぇ行きましょう。しゅっぱ〜つ」


 僕たちはリルエマに案内され街の温泉街へと繰り出した。

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