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第34話 プチ

 それから数時間後カーテンの隙間からさす日の光りで僕は目を覚ました。アルスとロイはまだ眠っている。リビングに移ると奥に見えるキッチンには既にリルエマの姿があった。


「おはようございます」

「おはよぅ。アオイはぁ早起きだねぇ」

「いやいや僕なんかよりリルエマさんの方がずっと早起きじゃないですか。朝ごはんの支度ですよね? 僕手伝います」

「助かるぅ。こういぅさりげなぃ優しさにぃあの娘はぁやられちゃったのねぇ」

「ん? リルエマさん。何か言いました?」

「何でもぉないよぉ。それじゃぁ遠慮なくぅお願いするねぇ」


 僕はリルエマの横で野菜を洗ったり、使い終わった包丁を洗ったり、まな板を洗ったり。つまりは洗い物を担当したのだった。あ、でも玉子も割ったよ。


 リルエマはソーセージのような細長い肉を焼き終えると続けて軽快にフライパンを振りスクランブルエッグらしきものを作った。


「ごめぇんアオイ、そこのぉ洗ってくれたぁお野菜をぉボールにぃ盛り付けてぇくれるぅ?」

「はーい」


 これは酒場でも見た野菜だ。たしかレスタ。ほんと見た目も名前もレタスにそっくりだな。そう思った僕は思わずニヤけてしまった。


 とそこへ何やら懐かしい香りのする汁物をリルエマが運んできた。この匂い……まさか味噌?


「リルエマさんこれは?」

「ん〜? これぇ? これはねぇミーソのスープだよぉ」


 やっぱりそうか! ミーソのスープ。それはまさに味噌汁に瓜二つな汁物だった。ただ具にミニトマトに似たトゥーメトが浮かんでいるのはどうかと思ったがこの世界の食べ方に異論を唱えるつもりは毛頭なかった。


「おはよう」

「おはようございます」

「おはようございます」

「あらぁルヴィスちゃんにぃクラニちゃんにぃジェナちゃん。おっはよぉ〜」


「わぁすごい。美味しそう」


 ルヴィスがテーブルに並べられた朝食を眺め言った。


「これ全部リルエマさんがお一人で調理なさったんですか?」

「全部じゃぁないよぉ。アオイもぉ手伝ってぇくれたのぉ」

「アオイ様はお料理もお上手なのですね!」

「いやいやジェナさん。僕は作ってませんよ。作ってくれたのはリルエマさんで僕は洗い物担当。強いて言えばサラダを盛り付けたくらいです。あ! 玉子も割りました」

「素敵です! このサラダの盛り付け方。それとアオイ様が上手に玉子を割って下さったからこそのスキランブルカエッグ!」

「それはさすがに大袈裟ですよ」

「そんな事はございません。だって本当のことですもの」


 そう言って僕を見つめるジェナの目には絵に描いたようなハートが見えた気がした。


「申し訳ございませんリルエマさん。本来ならば私もお手伝いしなければならないのに」

「クラニちゃんったらぁ。そんなのぉ気にすることぉないよぉ」

「いえ。それでは私の気が収まりません」

「ならぁ後でぇパンケーキ作るのぉ手伝ってぇくれるぅ?」

「はい! もちろんでございます」

「アオイ〜そろそろぉアルスたちをぉ起こしてぇきてくれるぅ?」

「はい。起こしてきます」


 僕は2人が寝ている部屋のドアを開け叫んだ。


「おーい2人ともー。朝だぞー! 朝ごはんの時間だぞー」

「んんー。もうそんな時間か」

「……おはよう。アオイの兄様。アルスもおはよ」

「おはようさん」


 眠い目を擦りながら部屋から出てきた2人はみんなにおはようの挨拶をすると席についた。


「これでぇみんなぁ起きたねぇ。それじゃぁ、いただきま〜すぅ」


 僕たちは早々に朝食を済ませエルフの里に向かう準備をはじめた。アルスは剣を磨き僕は皿を磨く。ロイも僕の隣で洗上がった皿を拭き、女性陣はエントランスロックパンケーキ作りに取り掛かった。

 

 しばらくして部屋に甘い香りが漂いはじめると鼻の頭に粉をつけたルヴィスがキッチンから声を上げた。


「プチ・エントランスロックパンケーキ! 完成〜!」


 こうして準備が整った僕たちはリルエマに行ってきますと声をかけエルフの里へ向けて出発した。

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