第30話 正式な仲間入り
「そんじゃマスター俺たちは行くな。ご馳走さん」
「お気をつけて。またのお越しをお待ちしております」
各々マスターに挨拶を済ませ店の外に出るとロックが僕たちに向かって言う。
「我々はルッカに戻り今回の件を本部に報告いたしますゆえ皆様とはここでお別れとなります」
「ロックちょっと待った。少しいいか?」
「はい」
アルスはロックを連れ僕たちから少し離れると何やら話しをはじめた。
「ロック。お前に頼みてぇことがあるんだ。ちっと耳かせ。頼みってのはよ……」
「えぇ⁉︎ 私がですか⁉︎ しかしそれは」
「これはよロック、お前にしか頼めねぇんだ」
「アルス様直々の命とあらばこのロック命に代えても任務を遂行いたす覚悟にございます!」
「ハハ。そりゃ大袈裟だぜ。ま、何にしても頼むわ」
「承知いたしました! その命につきましては本部への報告を終え次第実行いたします! では失礼いたします」
アルスに一礼したロックは続けて僕たちにも一礼しこの場を後にした。
「あ、ちょっとロック副団長! もう! そうやってすぐ一人で行っちゃうんですから。皆さん今回は本当に助かりました。ありがとうございます。またお会いする機会があればその時はもっとゆっくりとお話ししたいです! どうかお元気で。さようなら」
メルトは早く口で僕たちに挨拶するとロックの後を追った。
「俺も楽しかったッス! バイバーイッス」
バンも僕たちに手を振るとメルトの後に続き足早に行ってしまった。
「急にみんないなくなるとなんだかちょっと寂しいわね」
小さくなる三人の後ろ姿に手を振り続けるルヴィスがしんみりと言った。僕とクラニもルヴィスに同感し三人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
「さてと、私たちはこれからが本番ね。リルエマさんのところに戻るわよ。シークルを手に入れるためにはあのエルフの兄弟に何としても力になってもらわないといけないからね」
「そうだね。行こう」
「ところでアルス、あんたは何でロックさんたちと戻らなかったのよ? 盗賊団討伐の目的は果たしたんだからいつまでも私たちと一緒にいる必要はないでしょ?」
「おお、それの事なんだが俺もルヴィスちゃんたちの旅について行こうと思ってな」
「何でよ。何であんたが私たちについてこなくちゃいけないのよ」
「ルヴィスちゃ〜ん。つれないなぁ〜。これはさぁルヴィスちゃんとクラニのことを心配してのことなんだぜ。アオイが見た目からは想像できねぇ強さを持ってることはわかったけどよ、今後どんな奴らが現れてどんな事が起きるかわかんねぇだろ? そん時にいくら強ぇアオイでもよ一人で二人を守りきることができっかって考えたらやっぱ俺がいた方が良いんじゃねぇかなって思ったわけよ」
「だからってあんた王国騎士団の副団長なんでしょ? そんな人が旅についてくるなんてそもそも無理な話しじゃない?」
「それは心配いらねぇぜ。俺はたしかに副団長だがそれは肩書きにすぎねぇし俺の部隊は俺しかいねぇ。だから俺が決めたらどこへでもどれだけの期間でも行けるってわけよ」
「何よそれ」
「ルヴィスちゃん、クラニ、アオイ、頼むよ。俺を連れてってくれ。この通り!」
「まーたしかに言われてみればこの先何があるかわからないのは事実だし仲間は多いにこしたことはないわね。アオイとクラニはどう思う?」
「そうですね。私はアルス様が一緒にいてくれるのは心強いですね」
「僕は……」
僕は正直来てほしくないと思った。だってアルスはそもそもルヴィスに好意を持っているわけで僕たちがいくら血の契約で結ばれているとはいえ万が一にでもそれが覆されるようなことになったら。そんな事を考えてしまうとどうしても素直にうんとは言えなかった。
「アオイ? どうしたの?」
「いや、その……」
「アオイちょっと来て」
ルヴィスは僕の手を引きアルスとクラニから距離を置くと耳元で言った。
「アオイ、アオイは今きっと余計な事を考えてるわね? それはアルスが私のことを気にしてるってことじゃない?」
僕はゆっくりとうなづいた。
「やっぱりそうだった。でもね前にもハッキリとアルスに言ったけど彼が私の事をどう思っていようと私は彼に何の気もない。私にはどんな事があってもアオイだけ。厳格な契約である血の契約を結んだあなただけなの。だから安心して。ね?」
「うん。わかった。正直ちょっと嫉妬してしまって変なこと考えてしまった。ごめんなさい」
「ううん。いいの。それはそれでちょっぴり嬉しかったから。だってアオイが私のことちゃんと意識してくれてるって証拠でしょ?」
「うん」
面と向かってそんな事を言われるとこっちの方が恥ずかしくなる。けど安心した。だから僕はアルスがこの旅についてくることを了承することにした。
「アルス、これからもよろしく!」
「おうよ! ありがとなアオイ。ルヴィスちゃんもクラニもありがとう! 皆んなよろしく!」
こうしてアルスは正式に僕たちの仲間となり旅に加わることとなった。




