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第27話 ツンデレ

 バドンを倒してから数分後のこと。


 十数人の自衛団員と共にバンが根城に入ってきた。


「あらら。応援が到着したんで来たんスけどとっくに終わってたんスね。さすがはアルス様たちだ」

「まぁなと言いたいところだがバドンを倒しのは俺じゃねぇ。このアオイだ。けどトドメをさしたのはルヴィスちゃんだけどね〜♪」

「ね〜♪ だけど今回の立役者は間違いなくアオイよ」

「へぇ〜アオイ様実はとても強いんスね。リスペクトっス」


 バンはラッパーの様に両手で僕を指差した。


「自衛団の皆さ〜ん。残りの盗賊をちゃちゃっと縛りあげてほしっス。撤収するっスよ〜」


 自衛団員たちは手際よく盗賊たちに縄をかけるとあっという間に根城を出て行った。


「皆さんお疲れっス! ベレンに帰って祝賀会やるっスよ。酒場のマスターが『盗賊団を討伐できたら俺が祝賀会やってやる! もちろん俺のおごりだ。そん時はみんな連れて来いよ!』って言ってくれてんスよ」


 得意げに飲み屋のマスターのモノマネをしたバンだったがそれが似ているのかどうか僕にはわからなかった。


 それから僕たちは、ベレンへ戻ると、ロイの姉を休ませるため一旦リルエマの家に立ち寄ることにした。


「あらぁ。みんなぁ〜おかえりぃ。あれぇ? 初めて見るぅお顔がぁたぁくさん」


 僕はロイとロイの姉を、アルスはロックたち三人をリルエマに紹介しこれまでの経緯を説明した。


「そっかぁロイくんもぉお姉さんもぉロックさんもぉメルトさんもぉバンさんもぉみ〜んな大変だったんだねぇ」

「そうなんです。なのでリルエマさん。ロイのお姉さんを少しここで休ませてもらえませんか?」

「ぜんぜんいいよぉ。ゆっくりぃ休んでってぇ。他のみんなもぉ休んでいきなよぉ」


 リルエマはロイの姉を自分の寝室に案内しベッドに寝かせると軽い足取りでキッチンに向かい何かを作り始めた。


「この香りは……エントランスロックパンケーキ!」

「ですね! ですね!」


 甘く香ばしい香りにいち早く反応したのはルヴィスとクラニだった。


「いい匂い。これって何の匂いですか?」


 部屋に漂いはじめたエントランスロックパンケーキの香りにメルトも誘われる。


「エントランスロックパンケーキよ」

「エントランスロックパンケーキ?」

「そう。エントランスロックパンケーキ。ベレンの入り口の岩をモチーフにしたリルエマさんオリジナルのとっても美味しいパンケーキよ。クリームをたっぷりつけて食べるんだけどそれはもうふわふわで甘くて口いっぱいに良い香りが広がって、あ〜思い出しただけで幸せ」


 興奮気味にパンケーキを語るルヴィス。その横でうんうんと深くうなづくクラニ。


「そんなに美味しいんですか。そのパンケーキ。良いなぁ私も食べてみたいなぁ」

「食べていいよぉ。いっぱい作ったからぁ。よいしょぉ〜」


 グッドタイミングでキッチンから戻ってきたリルエマがエントランスロックパンケーキの乗った皿をテーブルの上に置いた。


「うわぁ! すごい! 美味しそう!」

「自分でぇ言うのもぉなんだけどぉ、とってもぉ美味しいよぉ。さぁどうぞぉ召し上がれぇ」


 いっただきまーす! 僕たちはテーブルにつき各々口にパンケーキを運んだ。そんな中ロックとロイはパンケーキに手をつけることなくなぜか部屋の片隅に立っていた。


「美味しいです! こんなお菓子初めて食べました!」


 メルトは感動のあまり立ち上がった。


「ウフフ。よかったぁ。ところでぇおふたりさんは食べないのぉ? パンケーキは嫌ぃ?」


「俺はいらない。これ以上借りを作るわけにはいかない」

「借りぃ? これはぁそんなんじゃないよぉ。だからぁ気にしないでぇ食べてぇ」

「そうよロイ。貸しだとか借りだとか私たちの間にそんなのないの。だからここに座って食べなさい」

「そうですよ。ロイさん。みんなで頂きましょう」

「ルヴィスの姉様とクラニの姉様がそういうなら遠慮なく頂きます!」


 姉様? ルヴィスとクラニがほぼ同時にロイの姉様発言に反応した。


「ここにいる皆はもう俺の兄姉きょうだいだからさ。そう呼ぶって決めた」

「おぉ! そうかそうかなら俺のこともアルスの兄さんって呼ぶわけだな? 俺は様なんてざらじゃねぇからその方がいいぜ」

「アルスはアルスだよ」

「何でだよ! 俺は二十五歳だぜ。どう見たって俺の方が年上だろ?」

「俺は三十六歳だよ」

「三十六歳⁉︎ マジか。もうおっさんじゃねぇか」

「おっさんとは失礼だな。エルフ族の中じゃまだまだ若い方だよ。俺たちエルフ族は人間族の三倍の寿命があるのは知ってるだろ? それは逆をいえば三倍歳を取るのが遅いって事だよ。だから俺は人で言えば十二歳くらいだ」

「ならアルスの兄さんでいいじゃねぇか。十二歳なんだろ?」

「はぁ。今言ったよね? 人に例えるなら十二歳。本当の歳は三十六歳だって」

「ほうほう。ならロイの方が俺より歳上でおっさんてことだな」

「なんでそうなるのかな。ま、いいや」


 ロイは面倒くさそうにアルスをあしらうと席につきパンケーキを食べはじめた。


「リルエマの姉様! すっごく美味しいです! これ姉さんにも後で食べさせてもいいですか?」

「もちろんよぉ」

「ありがとうございます!」


リルエマと話す時のロイは声の高さがワントーン上がりニコニコの笑顔だった。

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