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第24話 クラニの拷問?

「はい。これであなたはウソをつけなくなりました」

「ウグッ」


 エルフは口元を手で押さえると顔をしかめた。


「何だ? あいつ急に顔色が悪くなったぞ。クラニあいつに何したんだ?」

「トゥルスをかけました」

「トゥルス⁉︎ あのウソつくと口が裂けちまうっていう拷問魔法か⁉︎」

「アルス様、トゥルスは拷問魔法などではございませんよ。たしかに痛みを伴うことはあります。ですがそれはウソを口にした時のみ。正直に語っていただければ痛い思いをすることなどありませんよ?」

「そりゃそうだろうけどよ。もし魔法が発動しちまったら? ……うぅ想像しただけで吐き気がするぜ」

「アルス様、大丈夫です。アルス様が想像されているようなことには絶対になりませんから」

「そこまで言うなら仕方ねぇ。後はクラニに任せる」

「ありがとうございます。では早速始めましょう。あらためまして私はクラニと申します。あなたのお名前は?」


 ゴクリ。僕は固唾を飲んだ。


 もしエルフがウソをついた場合先程のアルスの反応からしてきっと惨事になるだろう。実際どんな事になるのかわからないが僕の頭の中では口裂け女のように耳元あたりまで裂け血塗れでもがき苦しむ姿を想像した。できればそんな光景見たくない。そう考えた僕はエルフが正直に答えてくれることを必死に願った。


「……ロイ」


 ロイと名乗ったエルフが口を開いた瞬間、僕の肩が無意識にびくつく。すぐさま彼の口元に目をやったが特にこれといった変化はなかった。


 よかった。どうやら正直に答えてくれたようだ。


 しかし、ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。続く質問に再び緊張感が走る。


「ではロイさんにお聞きします。あなた方エルフ族は誇り高き種族。闇落ちでもしない限り盗賊に身を投じることなどないはず。お見受けしたところロイさんは闇落ちなどしていない。なのにどうして? 何か特別な理由があるのではないですか?」


 クラニの問いにロイは悔しそうな顔で下唇を噛むと事の成り行きを語り始めた。聞けば彼らはエルフの女王の命を受けベレンに向かっていたところ森で盗賊たちに襲われ捕まってしまったという。


 姉は人質兼奴隷商用の商品として牢屋に入れられロイは姉の命と引き換えに盗賊に加担することを強いられていた。


「やはりそのような理由がありましたか。それであなたはいつまでこんな事を続けるつもりなのですか?」

「姉さんを助けられるまで」

「私たちならできますよ。そうですよね? アルス様」

「まぁな。けどよ俺は散々こけにされちまったからな。素直にいいぜとは言えねぇな」

「ですね。ロイさんは私たちを下に見ているでしょうが人に頼みごとをするにはそれなりのやり方があるのはご存知ですか?」


 ロイはしばらく間黙ってうつむいていたがグッと両手を握りしめるとクラニの足元に勢いよく土下座した。


「どうか! どうか姉さんを助けて下さい!」

「と申しておりますがアルス様いかがなさいますか?」

「そうだな。誇り高きエルフ族がその誇りを捨ててまで頭下げたんだ。さっきのことは水に流してやるよ。俺はやってやってもいいぜ。皆んなはどうだ?」

「異論ございません!」


 相変わらずの硬い口調でそう答えたロックに続きメルトとバン、そして僕たち三人も同調した。


「そんじゃ満場一致ってことだからよ。ロイとか言ったな。お前の姉さんもれなく助けてやるぜ!」

「ありがとうございます! お願いします! それとそろそろこれ(トゥルス)を解いてもらえませんか?」

「そうですね。話はまとまりましたからもう解いても良いでしょう」


 クラニはロイの口に向かって右手の人差し指をスライドさせた。


「はい。解けましたよ」


 ロイは魔法が解けたことを確かめるかのように右手で数回自分の唇を撫でた。


「あ〜あ。上手くキミたちを利用してやろうと思ったのにさ。まさかトゥルスをかけられるなんて思ってもみなかったよ。けど結果、姉さんを助けられそうだから良しとするよ」

「んだよそれ。魔法が解けたらまた減らず口かよ。姉さん助けんのやめるぞ」

「ごめんごめん。これでも騎士のお兄さんには悪い事したって反省してるんだよ?」

「信じてやるよ。お前は魔法が解けた後なのに律儀に自分のやろうとした事を吐くくらいの正直者だからな」

「別に俺はそんな風に思ってほしくて言ったわけじゃねぇし」


 一瞬嬉しそうな顔をみせたロイだったが照れ臭かったのかすぐにそっぽを向いてしまった。


「おし! 仲間も増えたことだしこのまま奴らの根城に乗り込んで一気に片付けるぜ!」

「ちょっと待って!」


 坑道の奥に向かって走り出そうとしたアルスをロイが制止した。


「根城までは俺が案内するよ。この先は道が入り組んでて迷いやすいんだ」

「おう。それなら頼んだぜロイ」


 ロイは慣れた足取りで僕たちを牽引しながら入り組む細い坑道を迷うことなく進みやがて道幅の広い坑道に出たところで足を止めた。


「ほらあそこ。向こうの明かりが漏れてるところ。あそこが奴らの根城だよ」

「なぁロイ。根城には何人くらい盗賊がいるかわかるか?」

「んー三十人くらいかな」

「そっかそっか。まぁそんくらいはいてくれねぇと張り合いがねぇよな」


 アルスは両手の拳を鳴らすと根城に向かって真っ直ぐ歩き出した。


「え? ちょっとアルス、まさか正面から突っ込む気じゃないよね?」


 僕は心配になりアルスに言った。


「いや、そのまさかだ」

「いやいやそれはいくらなんでも無謀でしょ」

「そんなこたぁねぇよ。これも作戦のうちだ」


 これも作戦のうち? そう言われてもあの勢い任せのバダオ作戦なわけでしょ? あぁとても心配だ。


「そんないかにも不安ですみたいな顔すんなってアオイ。大丈夫だ。何とかなる!」


 何とかなる! か。なんの根拠もないはずなのに清々しいほど自信に満ち溢れたアルスを見ているとなぜだか不安が和らぐ。


「わかった。アルスのその言葉、信じるよ」

「おうよ。任せとけ。けどなひとつアオイやみんなに頼みてぇことがあんだ」

「頼みたいこと?」

「ああ。俺は先陣きったら真っ先に盗賊の頭バドンのところへ向かう。あいつとサシで勝負するためにな。みんなには俺とヤツの決着がつくまでの間邪魔が入んねぇように下っ端を抑えててほしいんだ」


 アルスの頼みに全員が快諾した。


「みんなありがとな。そんじゃ大捕物と行きますか!」


 僕たちはアルスを先頭に盗賊たちの待ち受ける根城へ向かった。

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