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7 姫岡せれなは空を見上げる

 昼休みになって、暇だったので三人で外の自販機まで赴いてコーヒー牛乳を購入し、ベンチに座ってのほほんとしていた。

 十月の空は晴れ渡っていて、でも寒い風が吹くもんだから太陽に失望してしまう。


 だがそれよりももっと、外で飲むことを視野に入れずに冷たいコーヒー牛乳を購入してしまった自分に憤りを感じていた。


「あったか~」


「それは冷たいコーヒー牛乳を買った俺に対する嫌味か?」


「答えは、イェス」


「その間いらねぇよ」


 俺と正弘の、入学時から洗練されたボケツッコみに氷見が笑う。

 氷見が笑っただけで、ちょっとだけで周りの温度が上がった気がした。


「おい氷見が笑っただけで通りかかった男子生徒ちょっとにやけてたぞ」


「お前すごい人気だな。正弘と大違いだ」


「正弘と比べられたことが、ちょっと残念」


「二人してボロクソ言わないでくれない? もう学校辞めようかな」


 ちなみに、正弘の冗談は二人してスルーした。

 正弘は戸惑いの気持ちをコーヒーと一緒に飲み込んで、また空を眺める。


 ここまで優雅な昼があったのか。


「あっ」


 そんなことをしみじみ思っていると、たまたま前を通りかかった女子生徒と目が合ってしまった。

 その女子生徒は俺が知っている人物で、視線をそらしただけじゃ終わらなさそうな雰囲気がある。


「こ、こんにちは……八朔君」


「よ、よう……姫岡」


 姫岡せれな。

 日本人離れした白い髪が特徴的で、肩までさらりと伸びている。

 身長は150センチもないほど小さく、人形みたいに顔立ちが整っている。

 

 そんな可愛らしい容姿で男子生徒から人気を集める、美少女だ。


 そしてついこないだ、俺が告白された相手でもある。


「こんなところで何してるんですか?」


「いやぁちょっと空を……ね?」


「空……ですか」


 姫岡はそのまま視線を上に上げて空を見上げた。

 何やら感慨深かったらしく、「ほぉ~」という声を漏らしている。


 ……なんだこの状況。

 それを正弘も思ったのか、正弘が口を開いた。


「姫岡さんも、空見る?」


「えっちょ正弘⁈ どした急に⁈」


 すると正弘が、耳元で小さく囁く。


「(さすがに二人ともぎこちなさすぎだろ。こういうのは早いうちに関係修復した方がいいって)」


「(そう言うけどなぁ……俺どうしたらいいかわかんねぇよ)」


「(そこは男なんだからどうにかしろ。以上)」


「(なんと無責任な……)」


 ふと、俺たちの様子をきょとんとした顔で見ている姫岡が目に入った。

 さすがにずっと立たせておくのも気が引けたので、覚悟を決めて声をかける。


「姫岡も……空、見るか?」


「は、はい!」


 即答だった。

 満面の笑みを浮かべてるもんだから、これは男が虜になる理由もわからんでもないなと思う。


「し、失礼します」


 俺と氷見の横に入ってくる姫岡。

 肩がちょっと触れただけで、姫岡がびくっとする。

 だけど頬を真っ赤にして、すぐに「す、すみません」と謝ってきた。


「「「おぉ~」」」


 なぜか廊下の男子生徒が歓声を上げた。

 正直、分からんでもない。


「「「「……」」」」


 その後、全員沈黙で空を見上げるという謎の時間が始まった。

 たまにその気まずさを紛らわすために飲み物に口をつけたりするだけで、全く動きがない。


 姫岡は純粋に空を見上げていて、氷見と正弘も又気まずさなんて感じてなさそな顔で空をぼけーっと見ていた。


 気まずいと感じているのは、俺だけのようだ。


 そう思った刹那、姫岡が空を見上げたまま言った。



「あ、あの……! 私、ぜ、全然気にしてませんから! ほ、ほんとに!」



 ……それは絶対嘘だろ。


 


昼休みのほほんタイムはあと少し続きます。

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