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【コミカライズ:1巻発売】私、異世界に来てまでレジ打ちやってます!  作者: 黄金栗
第四章 街道のくまさんと触れる想い
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耳がぴこぴこしてる



むかしむかし、創造神がこの世界を造った時の事。

自分の力を分け与えた7人の神を支柱として大陸に降ろした創造神は、大陸に根付く生命を妖精に、大陸に生きる種を神獣に運ばせました。

こうして、大陸は創造されたのです。


「……って言うのが神の時代の話だ。獣族は、その大陸に種を運んだ神獣の子孫とも言われているんだ。野生の獣と違って知識があるし、こうやって人の言葉も喋る事が出来る。この世界に生きる、種族のひとつだな」


「神獣……」


リークさんに詳しい説明を受けた私は、地面の上で小さくなっている熊さんを思わずジッと見てしまった。

黒い毛に覆われた巨体。胸に生えた月形の白い毛が、元居た世界のツキノワグマっていう種類みたいだ。


「この通り見た目が獣の姿をしているから、野生の動物と間違えられて狩りに合うのを避けて生きてるのがほとんどなんだ。だから基本的に自分達の国から出ないんだが……、マクスベルンにいるなんて驚いたぞ」


「わ、獣族?僕も知識としては聞いていたけど、初めて見たなぁ」


「俺は早くこいつを食うか逃がすか、すればいいと思っている」


「ウィル!話だけでも聞いてあげようよ!」


いつの間にか犬堂さんも合流し、4人で熊さんをまじまじと見つめる。

ウィルはどこか納得がいかない様子だったけど、剣先を渋々下ろしてくれた。


私は熊さんに対する、もう怖さはさっぱり消え失せて、むしろ可愛さすら感じちゃってるんだよ。

神獣って言われると少し驚いちゃうけど、話を聞いた感じだと意志疎通が出来る熊ってことでしょう?

それは凄い事で、そんな獣がここまでしゅんとされると……あぁ、耳がぴこぴこしてる、可愛い!!


「あのー。熊さんはどうしてそんなにお腹がすいてたんですか?」


「……ぐも」


「勝手におにぎりを食べたのは勿論駄目ですけど。何か理由があるのなら、情状酌量の余地があります」


さっき3日も食べてないって叫んでいたから、経緯によっては許してあげたいんだよなぁ

必死に謝っているし、可愛いし。

そう思ってしゃがんで、地面に伏せている熊さんの話しかけてみる。


「熊に理由なんてないだろ……」


私の行動を見て、ウィルが呆れたように呟く。


「ウィル~。お前なぁ、何カリカリしてるんだ。さっきから随分機嫌が悪いぞ」


「別に」


そんな言い方しなくてもいいじゃん!って思ったけど、先にリークさんが釘を差してくれた。

確かにウィルってば機嫌がちょっと悪いよね。

お昼食べてるぐらいまではいつもと同じだったのに、何でだろう。

まぁ、いいや。今は、熊さん熊さん。


熊さんは最初こそしょんぼりと肩を落としていたけれど、私の方をチラッと見てから、ゆっくりと顔を起こしてくれた。

おおっ、やっぱり体を起こすと大きいなぁ。


「くまは緑の頭のお兄さんが言うように、獣族です。本の行商をしています。くま……古書の取引の為にウォールに向かっていたんです。だけど、その途中で盗賊に襲われてしまって……大切な本は勿論、食料もお金も全部奪われてしまったんですぅう」


か、かわいそう!!!


街と街を繋げる街道は比較的度安全であるとは言われているけれど、絶対とは言えないと、ウィルに聞いていた。

事実、相乗り馬車は護衛が雇われているし、護衛業を生業にする冒険者だって沢山居るって。

熊さんは運悪く盗賊に襲われちゃって、それで有り金全部奪われてしまったのか……うう、悲惨すぎる!!


「街道に出て助けを求めてはみたんですけど……くまの姿を見ると、逃げてしまうか、狩ろうとする人ばかりで、身動きもとれず……ううっ、腹ぺこで死んでしまいそうになった時、美味しそうな匂いがしたから、つい……本当にごめんなさい」


「そうだったんだ……大変だったね」


さめざめ、と声を出しながら涙を流す熊さんを見ていると、私の心まで辛くなってくる。

こんなにもこもこの熊さんが弱っているのに、どうして誰も助けてあげないんだよ~!

ま、まぁ私も最初はびっくりして大きな声を出しちゃったんだけど。

それはそれ、これはこれ。


「熊さん、まだお腹すいてますか?もっと何か食べます?」


「え!いいんですかーー!?お姉さんは女神様!?もしかして、くまの救世主様???」


涙に濡れていたつぶらな瞳が一瞬にしてキラキラと輝く。

両手を重ねて、頭を何度も下げる姿につい表情がふにゃふにゃしちゃう。

こんなに純粋な瞳で救世主なんて言われると、悪い気はしないなぁ。


「ちょっと待っててくださいね」


だから、熊さんに一言断りを入れてから、私は少し離れた木陰へと入った。


「ここなら熊さんからも見えないよね。バックヤード入りまーす!」


バックヤードの中に入ると、急にぐうう、とお腹が鳴った。

そうだ、私が食べるはずだったおにぎり、熊さんに全部食べられちゃったんだった。

でも、あんなにも謝罪されたら、もう何も言えなくなっちゃうよね。


「とりあえず、さっと食べられるような物を一緒に精算しとこうっと。確か、ここらへんの段ボールの中に…あったあった、カロリーバー!」


手軽に美味しく食べられるバイトのお友!

ちなみに私はチョコチップの入ったココア味が好き。

ホームルームが長引いて、バイトまでに時間がなかった時に、これにかぶりつきながら、ダッシュしてたっけ。懐かしいなぁ。

ご飯がカロリーバーは味気ないけど、今回は仕方ないから妥協って事で。

おっと、目的はこれじゃなくて別なんだった。


「よいしょっと」


スーパーには色々な食品が置いてあるとは思うけれど、何もそのカテゴリーは人間だけの枠には収まりきらない。

そう、スーパーには人間のパートナーとも言える存在の食品も置いてあるのだ。


日用品の傍に置かれたトラックカートを奥から引っ張り出し、私はそこに積まれた段ボールを開封した。

きっと異世界では使わないだろうと思って、奥の方に眠っていたんだけど、まさか使う時が来ようとは。


「これならきっと、熊さんも大満足のはず」


ぐっ、と自然と拳を作りながら、私は深く頷いた。



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