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【コミカライズ:1巻発売】私、異世界に来てまでレジ打ちやってます!  作者: 黄金栗
第三章 シレーナの海と心の波
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本当に非戦闘員か?



ダイオウクラーケン退治ですっかりお腹が空いていた私はたっぷり食べて、バーベキューを思う存分楽しんだ。

ワイワイ話しながら食べると、普段の3倍ぐらい食べれた気がするぞ、うんうん。

個数のスキルで持って行かれたエネルギーもしっかり戻った感じ。


「椎名君、いい食べっぷりだね」


「いやぁ、まだ全然いけます」


トング片手に、ビールをちびちび飲む犬堂さんは、さっきから終始ご機嫌だ。

グラスにビールを注ぐのがあんまり上手くできなくて、縁から泡が溢れ出しちゃったんだけど、も~~すっごいニコニコだった。

雫ちゃん雫ちゃんって呪文みたいに喋ってて、ちょっと怖かったけど、やっぱり久しぶりにビールを飲めたのが嬉しかったのかな。

この世界に缶ビールはないもんね。


「ふふ。じゃあ気分もいいし、そろそろやっちゃおうかなぁ」


空になったグラスをテーブルに置いた犬堂さんが、椅子からふらっと立ち上がる。

やる?何を??まだウィルもリークさんも、モリモリお肉を食べているからデザートのスイカには少し早いし。

だけど、そんなことおかまなしに、犬堂さんは浜辺をスタスタと歩き始めた。

向かうのは……あ、浜辺に引き上げたダイオウクラーケン!


「雫ちゃーーん、見ててね!」


「椎名です!もう!はーい、見てますよ!」


少し離れた場所から犬堂さんが勢いよく手を振ってくるんだけど、ビールを飲んでいるからなのか、テンションがちょっと高いような……もしかして酔ってる?


「ケンドーの奴、何する気だ?」


「さぁ……」


夢中で焼き肉のタレに肉を付けて食べていたウィルとリークさんも、もぐもぐしながら犬堂さんに視線を向ける。

一体何が起きるんだろう。ドキドキしながら、犬堂さんを見守っていると、


「えいっ☆」


軽い掛け声に合わせて、犬堂さんの手が上に持ち上がった。

そのまま、右へ左へ、揺れ動く。

ん?ダイオウクラーケンに向かって手を振っている?

いや、キラリと犬堂さんの指元が光ったから、スキルの糸を出しているのかな。


「まだまだ行くよ」


ワイヤーみたいに細い糸がヒュンッと風を切った。


「おい、マジかよ……」


私とリークさんは何をしているか分からず眉をひそめているけれど、背後でウィルだけが驚きに声を上げている。

ウィルには犬堂さんが何をしているのか見えているのかな。


「おいウィル、ケンドーは一体何しているんだ?」


「私にはダイオウクラーケンの前で手を振ってるようにしか見えないです……」


「アイツ、ダイオウクラーケンの足を糸で切ってるぞ」


「「えぇ!?」」


糸で切る!?あのリークさんが蹴っても叩いても全然傷つかなかった触手をあんな細い糸で!?


「あの触手は下手な剣士でも切れないぐらい伸縮性があるんだぜ?はー……そういえば、ケンドーも異世界人だったな。オレの護衛なんかいらなかったじゃねぇか」


「そういえば以前からのお知り合いって言ってましたもんね」


「だがスキルも初見だ。オレの前ではあんな風に、はしゃぐ姿も一切見たことがない。お貴族様に大人気の優雅なケンドーが、こんなやつだったなんてな……」


ヘコむぞ。とリークさんが網に残っていた野菜を口に放り込む。

もしゃもしゃと口を大きく動かして拗ねる様子は苦々しい思い出を振り払っているみたいだ。


「お待たせ。ダイオウクラーケンの足取ってきたよ」


暫くして、犬堂さんは切り刻んだダイオウクラーケンの足を両手一杯に抱えて戻ってきた。

元々、一本の足が太くて大きいから、胴体から足を全て切り離し、更にそこから食べやすいサイズにカットした一部を持って来てくれたみたい。

こんな職人技を糸で……ゴクリ。


「毒は頭部を縛って足には流れないようにしといたから平気だと思うけど、念のためにもう一度焼いておこうね」


確かにリークさんの魔法で一度焼けてはいるけれど、しっかり焼くに越したことはない。うんうん。

私達3人によって、綺麗に空いた網の上に、カットされたダイオウクラーケンの足が並べられていく。


「ケンドー、お前……本当に非戦闘員か?」


ウィルが怪訝な表情で問いかけると、犬堂さんは涼しい顔で椅子に座り、優雅に脚を組んで、にっこり笑った。


「当然さ。だって僕は服飾職人だよ?戦力に数えないでね。……万が一、戦う時があるとすれば、それは椎名君を守る時だけだから」


ふんふんと鼻歌なんか口ずさみ始めちゃって、なんとなく煙に巻かれちゃった気分。

でも、私を守る為って言われるのは、ちょっと照れちゃうけど嬉しいかも。

犬堂さんみたいに大人で優しい人に言われると、誰だってきゅんっと来ちゃうよね。


「椎名君、椎名君。さっき精算したソース持ってきて貰える?」


「あ、はい!」


2回目の呼びかけで私は慌てて返事をした。

ソースと言われ、反射的に網の上で焼かれるダイオウクラーケンに目をやってしまう。

うーん、いい感じにちょっと先が反り返ったりして美味しそう。

この状態でも十分美味しいだろうけど、やっぱりソースを塗らないとね。



明日に続きをアップ予定です。

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