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【コミカライズ:1巻発売】私、異世界に来てまでレジ打ちやってます!  作者: 黄金栗
第三章 シレーナの海と心の波
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略してBBQとか言ってみたい!



犬堂さんが説明書も読むことなく組み立てたバーベキューグリルはスーパーで売っている簡易の物ではあるけれど、形になってみればなかなか立派だった。

少人数用だから、2つ並べたことで焼き場の広さも解決済み。


「リークさん、この木炭を中に入れて貰っていいですか?」


「よし、まかせろ」


木炭がたっぷり入った箱を軽々と持ち上げて、リークさんがバーベキューグリルの中に木炭を流し込んでいく。

偏らないように横から整えつつ……よし!こんな感じでいいか。

後は、火を付けて……あっ、蚊取り線香に使ったガスライター、バックヤードに入れたままだった!


「ちょっと、火をつけるやつ取ってきます!」


「火種くらいで良いならオレがつけるぞ。ここで良いのか」


「あっ、はい!ありがとうございます」


リークさんが呪文を唱え、人差し指から小さな火種を落としてくれた。


「リークさんって剣士って言ってたのに、魔法もお手の物なんですね」


「いやいや、オレは初級しか使えないからな。あくまでメインは剣だぞ」


「リークはこう見えて弓も使えるんだよ、本当に器用だよね。あ、網置いていいかい」


網を持ってきた犬堂さんが、パチパチと木炭に火が広がっていくタイミングで置いてくれる。

剣に魔法に、弓も使えるんだ。す、凄い。

リークさんって日常生活でもお料理もしちゃうし、紅茶入れるのも上手だし、本当に何でもできるイメージが固まっていく……。


「苦手分野はあるけどなぁ。まぁ、一人だから出来るに越したことはない。お、シーナ、良い感じじゃねぇのか」


「おおっ、良い感じに燃えてきましたね!えーごほん!ではこれより、シレーナ海のバーベキュー祭りを開催したいと思います」


わざとらしい声を出して宣言すると、分かりやすくウィルが怪訝な表情をした。


「これは、そのばーべきゅーとかいう奴をするのに必要な呪文か何かか?」


「違います。気分です」


「気分……」


深く噛みしめるように呟く私に、より一層訳が分からんと言った感情を表に出してくるウィル。

勿論犬堂さんは笑いを押し殺しているし、リークさんはよくわからないって感じだけど、とりあえず同意してくれている。

鍋奉行ならぬ、焼き肉奉行。駄目だったかな……うう、私、今凄く浮かれているのかも。


何はともあれ、バーベキューの始まりです!

う~ん楽しい!!わくわくしちゃう!!


「なんだ、結局、コンロって奴がある野営ってことじゃねぇか」


「ウィル~~違います~~!雰囲気が違うの!野営じゃなくてバーベキューなの!」


しれっと言うウィルに、私は思わず抗議の声をあげてしまった。

確かに行動だけを言葉にすると、いつもしている野営と変わらないけど、ここは海だし、私は水着だし、バーベキューコンロっていう道具があるし。

これはバーベキューなのです!むしろ略してBBQとか言ってみたい!


「さて、じゃんじゃん焼いていくよ。野菜はある程度生でも大丈夫かもしれないけど、お肉はしっかり焼くからね~」


トングを手にした犬堂さんが焼く係をしてくれて、お肉、野菜、海鮮っぽいものがどんどんと網に乗っかっていく。

わくわくしながらそれを眺めていると、リークさんもじっと横でコンロを見つめていた。


「にしても、これは見たことの無い素材だな。こんなに薄いのに破損しない所を見ると、熱に強い素材か。効果的に熱が籠もって、網の上に乗った食べ物が調節しながら焼けるってことだ。たき火じゃこうは上手くいかねぇ……いいな、これ」


おお……お肉じゃなくて、コンロを見ていたのね。

何だか目が真剣で、冒険者って言うよりも職人さんみたい。

遂にはバーベキューコンロに顔を近付けて、まじまじと観察している。


「おい、リーク。前髪が焦げるぞ。焼きリーキになりないのか」


「誰が焼きリーキだ!!」


ウィルの言葉にガバッと顔を持ち上げたリークさんの額が、熱でちょっと赤くなっていたんだけど……それにしても焼きリーキ。

リーキっていうのは、この世界で言う長ネギみたいな野菜のことだ。

これに関しては以前からちょっと思ってたんだけど、リークさんって頭が黄緑で鎧が白だから、そのぉ、カラーリングが長ネギみたいだなぁって思ってたんだよね。

勿論!失礼だから口にはしてないいんだけど、ウィルが言うから完全に思い出しちゃったじゃん!


「ほらほら喧嘩しない。それ以上暴れたらご飯抜きにしちゃうぞ」


両手で口を押さえて笑うのを堪えていた所へ、ジュッと焼け付く音が響きわたる。

喧嘩するウィルとリークを後目に、焼かれた肉は透明な油を木炭の上にこぼし、ジュウジュウとなんとも香ばしい匂いを放つ。

いがみ合うようにしていた2人もピタリと動きを止めた。


「僕だけじゃ手が足りないから、リークはそっちの網に野菜を乗せてもらえる?」


「お、おう」


「ウィルはそこの取り皿とフォークみんなに配っといて」


「あぁ」


空気が浮き足立っているのが分かる。

皆、お腹すいてるもんね!


「私は何をすればいいですか、犬堂さんっ!」


そわそわした気持ちを抑えきれずに、肉をひっくり返す犬堂さんに問いかける。

すると犬堂さんは、軽く小首を傾げながら、


「僕にビール注いでもらっていい?」


晴れやかな笑顔を私に向けてきたのだった。


推しにビールを注いで貰う喜びは、変えようのない幸福だよ、と、いつものように早口で熱く語り始めた犬堂さんの話から逃れるように、私はビールを取りに行くことにした。

と言っても、すぐ傍にまとめて飲み物や調味料は置いてあるから、目と鼻の先なんだけど。


しかし!ただビールだけを取りに来たわけじゃない。

バーベキューで食べる肉って、最初にタレに漬けたりするんだろうけど、そんな時間はなかったし、今回は別の商品で代用させてもらうとしましょう。

きっと、ウィルもリークさんも気に入るぞ~!


「そろそろ焼けそうだぞ~」


リークさんが私を呼んでいる。

やばい、早く持って行かないとすぐ食べちゃう!

それはそれで素材の味がして美味しいかもしれないけど、今回はせっかく精算したアレがあるから。


スイカの横に寄り添うようにして桶の中で冷やされたビールを、一本掴み取り、私はダッシュで戻る。

そして、不適に笑った。


「ふっふっふ。ウィルもリークさんもお肉好きですか?」


「え?そうだな、好きだぞ。ウィルも好きだろ?」


「俺は普通だな。食えたら何でもいい」


私の質問に顔を合わせながら2人が応える。

うんうん。やっぱり若い男の人はお肉が好きだよね。

っていうか、ウィルに至っては既に取り皿とフォークを手に準備万端だったりする。

食えたら何でもいいって態度じゃなくない!?


「じゃあ、是非これを付けて食べてください。もっともーっと美味しくなりますから」


ジャジャーンという音が出そうな勢いで私が堂々と2人の前に出した物。

それは


「焼き肉のタレです!!」



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