イケメンフィーバー!!
暫くの間、リークさんの溢れるパリピ陽キャオーラに圧倒されて、ウィルの影に隠れていたけど、リークさんがしょんぼりするのを見て、瞬時にこれは駄目だと思った。
どんなにビーチのお兄さんであろうとも、リークさんは水着に着替えたぐらいで変わったりしないのだ。うん。
あと、大きな背中を丸めてしょんぼりする姿が、ちょっぴり可愛いと思ってしまったし。
「あの……ごめんなさい。ちょっとビックリしちゃって」
「シーナ!」
そっとウィルの背後から出てリークさんに謝ると、リークさんの表情がパァッと明るくなる。
別に悪いことしていないのに、逃げたら駄目だよね、反省。
「この格好、シーナの好みじゃないのかと思っちまったよ」
「そんな事ないです!めちゃくちゃカッコイイです!!」
胸の前でぐっと拳を作って力説する。
そうしたら、何故かウィルがリークさんの横に並ぶようにして立ってきた。
は~~、タイプが全く違うけれど、この2人がビーチに居るだけで、周りの人間全ての視線を独り占めに出来るかも。
いや出来るな。
「俺は?」
「ほよよ?えっと……凄くカッコイイ!!」
何故、改めて聞いてきたんだろう。
さっき言ったような。
ヴィーナスの誕生!じゃん!
あ、でもあれ女神だった。
「え~2人だけずるい!ねぇねぇ、僕は?椎名君」
「犬堂さんもスーパーカッコイイです!!」
リークさんの空いたもう片方の横に犬堂さんが並んで、ウィルと同じように聞いてきたから、私は思ったままを口にした。
何だかテンプレートな文章みたいになっちゃったような。
でも、並んだ3人を見ていると、喜んでくれているみたいだから、良かったのかな……?
それにしても、一列に並ぶと圧巻だ……イケメンパラダイス?違うな、イケメンフィーバー!!ってぐらい強い。
「あっ!じゃあ私はどうですか?スクール水着以外で水着なんて着た事なくて。似合ってますか?」
ほんの軽いノリで聞いてみたんだ。
自分の装いが似合っているかどうか皆が聞いてきたから、流れで自分のことも聞いてみただけ。
似合ってる~って軽く褒めてくれると思っていたのに……。
「あ、あれ?」
急に場がシンッと静まりかえった。
皮肉な言葉も、妹に対するような言葉も、雫ちゃんと呼ぶ言葉も返ってこない。
ただ、暫くして私のことをジッと見ていたウィルが、胸の前で腕を組みながら口を開く。
「俺なら、首に何か付けさせるな。シンプルなタイプでゴールドのチェーン。石は勿論エメラルド。あと、今はプライベートビーチだからいいが、上着を着せたい。不必要に肌を周りに見せたくないからな……」
「ん、ん??」
あれ、ウィルの言っていること、何だかおかしくない?
水着が似合ってるかどうかを聞いた筈なのに、回答が斜め上というか、装飾の話になってる??
「オレは水着の種類をそれ程知ってるわけじゃないが、こう、へそが出てないタイプの方が、色々と安心して一緒に遊べるな。シーナは可愛く着こなしてくれると思うし。サンダルをオレと揃えて黄緑にしようぜ」
確かに、ちょっとおへそが出てるのは恥ずかしいってさっきずっと言ってたけど、リークさんそのことは知らないはず……いや、まって、だから私の水着が似合ってるかどうかなんですけど。
「僕はね、邪道だと言われようと白のワンピースに麦わら帽子を推すよ。砂浜の令嬢は広い水着というカテゴリーにしっかり当てはまると思うんだよね」
白いワンピに麦わら帽子って女の子なら一度は憧れる清楚なコーディネイトですよね!いい所のお嬢様っていうか、物語みたいな出会いが約束されていそうな……じゃなくて!!
「私の水着姿が似合ってるかどうか聞いてるんですけど!?」
ですけど……ですけど……ですけど……(エコー)
思わず出てきた私の大きな声は、入り江にエコーみたいに響いた。
うう、何だか自分で言ってて、ちょっと恥ずかしい!
だって私、似合ってる?って聞くようなタイプじゃないんですもんーーー!!
顔を真っ赤にして3人を見ると、彼らはきょとんとした様子で私を見て、それぞれが何とも楽しそうな笑みを浮かべていた。
「あぁ、似合ってる、可愛いぞ、シーナ」
代表っていうわけじゃないけれど、ウィルが私に言った。
「……っ!」
真っ正面から海に反射してキラキラする光を浴びるウィルの笑顔と歯の浮くような台詞。
顔が沸騰したヤカンみたいに熱くなって、私は両耳を勢いよく押さえた。
「しまった、ウィルに言われちまったな」
「可愛いってしっかり認識した上で、僕達は椎名君がさらに可愛くなるにはって考えに至っていたんだよね。どうだった?椎名君は誰のプランが好み?」
「し、知りません~~!!聞こえません~~!!!」
わーわーと意味もない声を上げて、その場を必死に乗り切ろうとする。
ウィル達ってばそんなこと考えてたの!?軽い気持ちで聞いただけなのに~~!な、なんとか、この恥ずかしさから逃げないと。
どうしよう、えっとえっと、あ!
「そ、そういえば皆に相談したいことが」
私は、必死の勢いでバーベキューセットをバックヤードで発見し、皆でバーベキューをしたいと希望した。
食材が手に入るか、場所的に大丈夫かは聞いておかないと。
「バーベキューセットがバックヤードにあったんだ?」
「そうなんです。レベルが上がって新しく季節商品が解放されたみたいで。バーベキューセットだけじゃなくて、花火とかスイカとか夏の商品がいっぱいあったんです」
つい今しがたバックヤードで見てきた光景を犬堂さんに話すと、彼は関心したように声を漏らした。
「いやぁ、椎名君のバックヤードは凄いね。それぞれ違うとはいえ、僕のアイテムボックスとは利用用途が全然違う」
「えぇ……まぁ、異世界人って言うよりも小売り業者って感じになりつつあるんですけど」
「そう落ち込まないで。どちらにせよ、もしもバーベキューセットが出せるのなら、食べ物の調達は大丈夫だよ。シレーネにはお金持ち専用の仕入れ場があるからね。そちらの許可も頂いているから」
ということは、無事砂浜でバーベキューが出来る!?
やったー!!!生まれて初めて、海でワイワイしちゃうぞー!!
……さっき、リークさんがあまりにもパリピだったから怯えちゃったけど、もしかして今の私もパリピなのでは……!
「なぁ、バーベキューって何だ?」
「話からすると、食いモンか?」
わくわくそわそわする私とは裏腹に、ウィルとリークさんは頭を傾げている。
私はその場で飛び跳ねそうな勢いで、身振り手振り精いっぱい説明をしてみる。
「えっと、これぐらいの食べ物を焼く専用の道具があって、そこに木炭を……あっ、燃えやすい木なんですけど。それを入れて、網を引いて、そこにえっと、お肉とか野菜とか乗せて、じゅうじゅう焼いて」
「……全然分からん」
「えー!!」
ウィルが呆れた顔で言い放つと、私はがっくり肩を落とす。
うぐぐ、悔しいけど興奮気味の私の口から出てくる説明は、あまりにも拙かった。
「簡単に言うと、外で食べる焼き肉の事だよ」
横から犬堂さんがフォローを入れてくれたけど、2人はまだ何とも微妙な顔をしている。
「なぁシーナ。それって野営で飯食うのと、どう違うんだ」
「え!?あ、あー……」
リークさんの言葉に思わずハッとする。
確かに、バーベキューも野営も外でご飯を食べるから、同じなのか……?
でも!雰囲気というか、そういうのあるじゃん!!
海に来ているんだし!
「僕達の世界では外でご飯を食べる事があまり無いんだよ。だからたまに開放的な場所に皆で集まってワイワイ飲み食いするんだ。同じ物を食べても、場の雰囲気で味は変わるものだし、交流を楽しむって意味合いの方が強いかな」
「そう、それです!!」
犬堂さんに便乗する形で大きく頷く。
へぇ、というウィルの全く興味の無さそうな返答が返ってくるけれど、そんな風に居られるのも今のうちだからね。
ウィルってば絶対に、目新しい道具が出てきたら、興味津々になるって分かってるんだからー!




