パリピで陽キャ過ぎます!
『店員さん、店員さん、ちょっと聞きたい事があるんですケド』
「はーい!!お待たせいたしました、いかがいたしまし、た……ってチュートリアルさん!?」
そう。相変わらずどこからともなく聞こえた声は、チュートリアルさんの声だった。
危ない、ごく平然とお客さんを装って話しかけてくるものだから、私も思わず店員として対応しちゃったじゃん!!
そもそもお客様はバックヤードに入ってこないし、私は今スーパーで働いている訳でもないのに。
「も~~何か聞きたい時には呼んでも出てこないのに!」
『君、いくつ?』
「えっ……17ですけど」
『あ~~~!!!駄目駄目!青少年の育成に力を入れてイルんだからネ、未成年の飲酒は絶対にさせないゾ~』
「飲酒って……あ!ビールの事ですか!」
『ソウダヨ。17歳なんてあっという間に20になるし、20越えると1年なんて瞬きをするぐらい早く感じるんダカラ、お酒は20を過ぎるまで待ちましょうネ。君の成人祝いには高いワイン開けてあげるかラ。1990年の奴とかドウ?』
うんうん、と見えもしないのに、チュートリアルさんが深く頷いている気配を感じる。
いやいや、そもそもチュートリアルさんは勘違いしている。
「別に私が飲むんじゃないです。私と一緒に居るウィル達が飲むんですよ。だから別にいいじゃないですか」
『その言い分ネ、君の世界でも通じる?』
「どういう意味ですか?」
『見るからに学生のチルドレンが、パパとママが飲むんです。だから売ってくださいって言っても、君売らないでしょ?』
「うっ!!」
そう、アルコールの販売って年々厳しくなったんだよね。
最近ではちょっとでも若いなぁって感じたら、声掛けからの免許証等での確認が、店長から徹底させられていたし。
何故って、未成年者飲酒禁止法で、酒を販売した店側も罪になり罰則があるから。
「仰る通りでございます……。未成年者に対する酒たばこの販売は禁止されております。年齢確認の出来る証明書のご呈示をよろしくお願いします……」
『ネ!分かったら、大人しく20歳になるまでここのエリアは封印しようね』
「うう……無念、無念だ。若いフレッシュな私を許して皆……」
底抜けに明るいチュートリアルさんの声を背後に私はとりあえず、アルコールゾーンから出ると、日焼け止めだけを精算した。
あーあ、ビールを外に持ち出せたら、ウィル達喜んでくれると思ってたのになぁ。
なんとかして、外に持ち出す方法無いかなぁ。
ぶつぶつと声を漏らしながら、スイングドアを押しバックヤードから出て、砂を踏む。
その時、
「シーナ、何悩んでるんだ。また腹でも壊したのか」
「ウィル~聞いて!あのね、バックヤードにビールが……ぎゃっ!!!!」
何気なくウィルの方を向いた私は、その瞬間、目が強い光で焼けちゃうんじゃないかって思った。
ピカーーー!!!って、光り輝いているっていうのが比喩じゃないぐらい、キラキラしているウィルがそこに立っていたから。
そう、犬堂さんは事前にウィルの水着も用意してくれていたんだ。
黒地に銀のラインが入ったハーフパンツの水着に、グレーに黒のラインが入ったラッシュガードを上から羽織った姿。
私は、あまりの輝きに、ぽかんと見惚れてしまった。
なんていうか、ウィルの顔って完璧なんだけど、こうやって服を脱ぐと細身の癖にしっかり筋肉とかが付いていて、美術館とかに展示されている銅像みたいだ。
気怠げにポケットに手を突っ込んで立つ姿すら絵になるんですけど。
「ウィル凄いカッコいい……ヴィーナスの誕生みたいだ」
我慢してたけど、ついに容姿を褒めてしまった。
でも、もう大丈夫な気がするから、これからは言っちゃう。
私がウィルを凝視していると、背後から堪えきれずに吹き出した笑い声が聞こえた。
「椎名君。それ女神の絵だよ」
やぁ、と軽く手を降りながら近付いてくる犬堂さんは、いつものスーツ姿ではなかった。
紺色をした薄手のシャツに白いパンツスタイルっていう、高級なスパとかハワイとかに居そうな感じ!
水着ではなかったけれど、普段きっちり着込んでいる犬堂さんがラフな格好で居るのが珍しくて、私は思わず声を上げてしまう。
「犬堂さんも似合ってる!イメージ変わりますね」
「そうかい?椎名君が喜んでくれるのなら、僕も嬉しいよ」
「俺は別に水着なんていらなかったけどな……」
濡れたくないし、と文句を言いつつも脱ぐと言わない辺り、ウィルもその水着気に入っているのかも。うんうん分かる、凄く似合ってるもん。
……ん?そういえば、1人足りないような。
「あれ、リークさんは?」
「あぁ、彼、前に合った時より筋肉付いていて、少しフィッティングに手間取っちゃって。さっき調整してたんだ。もう来ると思うよ」
……もしかして、私がバックヤードに居る間に手直ししていたの!?
相変わらず仕事が早い!
「おーい、シーナ、ウィル、ケンドー。飲み物持ってきたぞー!」
向こうのカントリーハウスから1人の男の人が両手に飲み物が入ったグラスを持って走ってくる。
青空の下でもよく目立つ黄緑色の頭はリークさん……だ……!?
「ひえ!?」
徐々に近付いてくる姿に思わず悲鳴が漏れる。
当然だけどリークさんも水着になっていた。なっていたんだけど……。
「シーナ。凄い可愛い水着だな。よく似合ってるぞ」
「……」
「シーナ?」
目の前に立ったリークさんが、満面の笑みで私に冷たい飲み物の入ったグラスを差し出してくる。
だけど、その、あの……リークさんの格好が……!!!
南国の植物がシルエットでプリントされた水着を着たリークさんは、ウィルみたいにラッシュガードを着ていなくて、普段は服と鎧で隠れている筋肉が上半身裸でガッツリ見えているといいますか……ウィルとは全然違う筋肉の付き方に、思わずドキッとしたんだけど、それ以上に私は、私は……!
「リークさんパリピで陽キャ過ぎます!!」
「ぱり……なんだって?」
脱兎の如く、私はウィルの背後に隠れた。
もの凄い、陽キャオーラ。
ビーチで初対面の人と気が合ったからってそのまま一緒にバーベキュー平気でやっちゃうタイプじゃないですか~~!!
私があくせくバイトをしている間、カゴ一杯のアルコールとお肉買いにくるんだーー!!
「シーナ、何で隠れるんだ?なぁ」
「……」
「おーい、シーナー」
物陰に隠れた小動物を呼ぶみたいに、優しく声を掛けてくれるリークさんをウィルの背後から私は暫くじっと窺っていた。




