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【コミカライズ:1巻発売】私、異世界に来てまでレジ打ちやってます!  作者: 黄金栗
第三章 シレーナの海と心の波
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スイカだ!!



シレーナは想像以上に大きな街だった。

海から離れた場所に居るのに、波音が耳に入ってくるぐらい静かで、頬をさわさわと撫でる潮風が優しい。

大きな中央の通りから枝分かれするみたいに、道が伸びてそれぞれに立派なお屋敷が建っているけれど、今はオフシーズンらしく、別荘を使う人もあまり居ないらしい。

だから外も全然人が歩いてないのか。

でも、この感じだとシーズン時期でも、ある程度静かそう。


到着するなり、水着を手渡されちゃったから、すぐに着替えて海に出てきてしまった。

う~ん、本当に綺麗な海!何かドキドキしちゃう!

砂浜も白くて綺麗で、貝殻が所々に落ちている。

あっ、あの青い貝殻可愛い。


「それを綺麗にしたらアクセサリーの素材にもできるやつだよ。シレーネに来た記念に、椎名君が拾った貝殻でマジックアイテムを作ってあげるね」


砂浜にしゃがみ込んで貝殻を拾っていたら、犬堂さんが追いついてきた。


「本当ですかっ!やったー、私貝殻拾うのも初めてで、どれだけ集めればいいですか?沢山いりますか?」


「ふふっ……うん。掌一杯集めようね。僕も手伝うから」


どうぞ、と優雅ににっこり笑って、犬堂さんが手を差し伸べてくる。

子供みたいにはしゃいでいたのが恥ずかしくて、私は照れ臭さのあまりへにゃりと笑った。

それに、このアングルすごく破壊力がある!


「け、犬堂さん、あんなに立派なお屋敷に、無関係な私達まで泊まっても大丈夫だったんですか?」


その手をおずおずと取り、立ち上がる。

恥ずかしさのあまり唐突に話を振ってしまった。


「大丈夫大丈夫。ちゃんと話はしておいたから。それに、本当のお金持ちって言うのは、優しいものだからね。お金の余裕は心の余裕だよ椎名君」


ん?でもお金持ちであるユディルさんはそれほど優しくなかったような……いや、そうか。本当のお金持ちって犬堂さん言ってるもんね。

お金持ちにも種類があるって意味か。


後ろを振り返ると、大きな入り江に隠された砂浜の先、一段高い場所にクリーム色に緑の屋根をした大きいカントリーハウスが建っている。

高い尖塔まで添えられていて、立派な別荘だというのが分かった。

そこを私達は貸してもらうことになったのだ。


中は当然、外観と同じく豪華な家具と調度品で埋め尽くされていた。

なんて言うんだろう。うーん、映画とかでお姫様とかが住んでそうな場所!!

そんなことを言うと、ウィルが「まぁ、シレーネには王族も別荘持ってるだろうしな」と演技臭い仕草で肩を竦めていた。

ウィルは本当に貴族とかお金持ちとか嫌いだよね~。


「ここら辺はお得意様の土地だから他の人は来ないし、何よりこの海は入り江に守られて外からも見えないから、存分に楽しんじゃってよ椎名君」


「はいっ!……と、その前に」


初めての海を目の前にして、今すぐ飛び込みたいのは山々なんだけど、私……ううん、女子なら気にしないといけないことがひとつある。


「バックヤード入りますー!」


「何か取ってくるのかい?」


「はい、女子には大事な物です」


不思議がる犬堂さんに大きく頷いて応えた私は、砂浜のど真ん中にバックヤードへのスイングドアを出現させた。

誰も見てないからってちょっと開放的な場所に出し過ぎたかな。

まぁ、いいか!


ドアを押しながら入ると、私は早速トラックカートへと向かう。

これでもない、こっちでもない、これ!……でもない。

うーん。おかしいなぁ絶対にアレはスーパーに売ってると思うんだけど。

ごそごそと段ボールの中を漁っていると、不意にピンポーンピンポーンとバックヤード内にチャイムが響いた。


「はっ、レジ呼び出し……じゃないんだった」


音を聞くと本能的に体が反応してしまう。

このお知らせ音、何か別の音に変えたりできないのかなぁ。

そんな事を考えていると、前回と同じように女性の電子アナウンスが流れ始めた。


『バックヤード内の季節商品ロックが解除されました。第1倉庫を解放します』


「季節、商品??」


季節商品って……あれかな。春、夏、秋、冬、の季節に併せて、展示されているやつ。

普段は仕入れしないような商品だけど、季節に併せて入荷するんだよね。

お正月の鏡餅とか、クリスマスにあるサンタのブーツお菓子詰め合わせ、とか。

スーパーの入り口からよく見える目立つ場所に平台で置かれてたりするんだけど。

うーん、直接見ないとわかんない!!第1倉庫に行ってみよう。


私のバックヤードはレベルの関係でまだまだ解放されていない場所が沢山あるから、今後もこうやって解放されていくと思うと、ちょっと嬉しい。

それで、少しは楽な旅が出来たらいいなぁ。


「水産……畜産……デイリー冷蔵……あった」


1つ1つ作業室の横を通りついでに確認しつつ、デイリー冷蔵庫の横にある倉庫にやってくる。

ここは普段なら、売場に設置するポップや陳列台を収納している場所なんだけど。


「な、なんだか広くなってない?」


私の知っているバックヤードの第1倉庫とは比べものにならないぐらい、スペースが広くなっている気がする。

通常の倍?何でもありだなぁ、アイテムボックス。

おまけに、第1倉庫のプレートの下に季節商品保管中の文字が追加されていた。

その保管中の文字がモザイク加工みたいに乱れて消える。


『ご希望のイベントをどうぞ』


「え!?」


女性の電子アナウンスに肩が跳ね上がる。

何、何!?急に、これ、返事をしてみたらいいの?


「な……夏?レジャー?」


恐る恐る伝えてみると、暫くの間の後、モザイクで乱れていた文字は季節商品保管中から夏という随分と大雑把な文字へと変更された。


『商品の変更を完了しました』


スイングドアに設置された窓の向こう側に電気が付く。


「あ!!」


窓越しに見えた商品に、私は思わず大きな声を上げてしまった。



「スイカだ!!」



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