安い!早い!そして美味い!
「そうだ、リーク。勝負は俺の勝ちだからお前のコテージ貸せよ」
「はぁ?お前絶対疲れてるからコテージで寝たいだけだろ」
「ほら、コイツもコテージの方が良いって」
えっ!?私!?ちょっとウィル、巻き込まないでよ~!
とは言いつつも、コテージの魅力には惹かれちゃうんだよね。
だって多分、ベッドがあるから!
別にテントで眠るのが不服ってわけじゃないんだけど、ほら!
ふかふかの布団で寝ると格別じゃない?
「あの、コテージって高かったりするんですか?今から借りたりとか……」
「人気があるから、今からってのはちょっと無理かもなぁ」
「巫女様がお疲れだって言えば貸してくれる奴がいるかもしれないぞ」
「いや、流石にそれは良心の呵責が」
ウィルが少しだけ意地悪な顔をしながら提案するけど、本来あるべき巫女でもないのに、その立場を利用するのは抵抗がある。
ぐぬぬ、疲れてるのは皆一緒だもんね、我慢我慢……。
「……仕方ねぇなぁ。オレのコテージに来て良いぜ」
「え!?いいんですか」
「そりゃ、そんな顔されたらな」
表情が一気に明るくなった私を見て、リークさんがおおらかに笑った。
そんなにコテージを求める顔をしていたんだろうか。
リークさんってホント、年の離れたお兄ちゃんみたいに頼りがいがあるなぁ。
「じゃあ、世話になる」
「お前は呼んでねぇ、テントで寝ろ」
「嬉しい~!!リークさん、ありがとうございます!!」
横で言いあう二人を尻目に、私はウッキウキの気分で飛び跳ねた。
わーい、コテージコテージ!!
コテージなんて初めてで、ちょっとわくわくする。
未だ蚊取り線香の煙と匂いが残る宿泊エリアに戻ってくると、リークさんは自分の借りているコテージに案内してくれた。
複数立ち並ぶコテージの中でも、一段高い場所に建てられた緑の屋根のコテージだ。
大きな窓もあって、昼間は日当たりも良さそう。
「ほら、どうぞ」
「おじゃましま~す!!」
リークさんが扉を開けてくれたので、私は意気揚々とコテージの中に入る。
「わぁ、凄い!」
外観で見た時も一階建てにしては横幅が大きいと思っていたけれど、中は想像以上に広くて綺麗だった。
広いリビングには木で出来た大きなダイニングテーブルと布張りのカウチ。
右手には簡易ではあるけれどキッチンかな?水場がある。
奥にもうひと部屋あって、あっちは多分寝室だと思う。
それにしても、凄く立派!想像していた何倍も素敵!
こういうの友達同士で泊まって、わいわい夜更かしするの絶対に楽しいと思うんだよね!
まぁ、私の場合バイトに忙しくて友達と旅行とか行けてなかったんですけど……。
「元々2人用のコテージを1人で借りてたからな、3人だとちょっと手狭かもしれねぇけど」
「そんなことないですよ、全然広いですし!何だかテンション上がって来ちゃいました!」
「子供かよ……」
「子供だもんね~~!」
ウィルの嫌味もさらっと受け流す。
うんうん、今の私はとっても機嫌が……。
ぐうううう
「……………………………………聞きました?」
そっと、ウィルとリークさんを見る。
みるみる顔に熱が溜まっていく感触が分かった。
それはそれは派手なお腹の音に、羞恥心が膨れ上がっていく。
「聞いてない、オレは聞いてないぞ!!」
リークさんは私が全力で照れているのに気付いて言葉を濁してくれるけど、
「正直な腹時計の音なら聞いたな」
ウィルはニヤニヤと意地悪く私に言った。
「もー!!何で言っちゃうんですか!!恥ずかしいのに!」
「腹の音を聞いたかどうか確認してきたのはシーナだろ。何で逆ギレするんだよ」
確かに聞いたけど、聞いちゃったけど!!
でもちょっとぐらい誤魔化すって言うか、聞いてないふりぐらいしてくれてもいいんじゃないのっ。
うう、お腹が空いているから、余計に怒ってしまう。
静まれ、静まれぇい、私の感情……ウィルの皮肉なんて今に始まったことじゃないでしょ!
「……ちなみにリークさん。屋台ってもう閉まっちゃってますよね」
「この時間だしなぁ。ちょっとぐらい待てるのならオレが何か作るぜ?」
「いえ。1分1秒、この空腹に耐えられないので私が腕を振るいます」
リークさんの手料理ってのも気になるけど、今はもっと迅速にお腹を満たしたい。
ってなると、やっぱりアレでしょ!
「バックヤード入りますー!」
ワントーン高い声で私はコテージ内にバックヤードへのスイングドアを出現させる。
突然現れた異質な存在にリークさんがぎょっとした目で私とスイングドアを見てきた。
「……本当に異世界人なんだな」
「疑ってたのか?」
「いや、そういう訳じゃないんだが……なんていうか……」
「トンチキ?」
「そこ、聞こえてますよ!」
自分でもスキルがレジでアイテムボックスがバックヤードなんて、とんでもなくトンチキだとは思うけれど、しっかりと聞こえちゃってますからね。
それにウィル。そのトンチキスキルが出すお菓子にメロメロでしょ。
バックヤードに足を踏み入れた所で私は思いだしたみたいに足を止めて振り返る。
「あの、ちなみにお湯とかって沸かせますか?」
「大丈夫だぜ。どれぐらい沸かしておけばいい」
リークさんとウィルをじっくりと観察する。
ウィルはあの細い身体で想像以上に食べるし、リークさんは見るからに大食漢って感じ。
私も今日はいつもより沢山食べれそうだから~……。
「えっと……沢山お願いします!」
そう言い放ち、私は完全にバックヤードの中に入った。
相変わらずバックヤードだけは人工的な灯りで昼間みたいに明るい。
早速、私はトラックカートの上に積み重なった段ボールを開く。
そう、古今東西、老若男女、簡単に食べることの出来る食べ物。
安い!早い!そして美味い!
この3つを兼ね揃えた究極の簡易ご飯。
深夜にこっそり食べると美味しさが倍増する、アレである。
「ふっふっふ。トンチキスキルの虜にしてやりますから」
さっそく精算し、大きめのレジ袋に商品を詰め込むと私はさながら大きな獲物を刈り取った時にも似た充実感と共にウィル達の所へ戻っていった。




