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【コミカライズ:1巻発売】私、異世界に来てまでレジ打ちやってます!  作者: 黄金栗
第二章 セーフゾーンと恋心
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3人は同期だったのね



「おやおや。内輪揉めかい。そういうのは後にしてくれないか。リーク、ウィル。ここは僕の顔を立ててエスコートの立場を譲ってくれよ。同期の中でも飛び抜けて優秀な僕に嫉妬する気持ちは分かるけどさぁ。この場合、僕が適任だと思うよ」


「流石ユディルさん。心の広さに感服しますね」


「うんうん、ユディルさんの寛大さはまさに貴族の中の貴族っスよ」


「ふふ、そうだろうそうだろう」


うんうんと深く頷きながら取り巻きの言葉に酔いしれるユディルさんの姿が、既に見慣れたものとなりつつある状況下で、ウィルが何気なく言い放つ。


「いや。お前誰だ」


「は……」


ピシッとガラスにヒビがいくような音が響いた。


「誰って……同じ年に冒険者連盟に入った同期組じゃないか。年に一度行われる入団式でも顔を合わせた、ユディル・アロだよ!」


「アロ家は知ってる。マクスベルン大陸一のエメラルド鉱山主だろ。だけど、ユディル……リークは知ってるか?お前も同期だろ?」


「え!?お、オレ!?あー…えっとー……」


あの対人関係に関しては懐の大きなリークさんが動揺してる!?

言葉を選ぶみたいにして、視線を右へ左へと彷徨わせ、最後には降参したとばかりに、顔の前で両手を合わせた。

俗に言うごめんねポーズだ。


「悪ぃ!ユディルだっけ、覚えてねぇ!ほら、同期の奴なんて沢山いるし、大概は怪我して辞めるか死んでるかしてるし」


「なっ…!?お前はさっき僕に会っただろ!」


「シーナに絡むチンピラ紛いの冒険者かと思ってな」


絶句するってこういうことを言うんだろう。

哀れなユディルさんは目と口を無造作に開いたままの状況で固まってしまった。


いや、なんていうか……救護室の前での出来事とか、言動を見ている感じでユディルさんがどういう人なのかはなんとなく把握していたんだよね。

誰もが自分のことを知ってると思って話しかけているのに、それを全然認識されてなかったってなると……うん、ちょっと可哀想に思えてきた。


「ぼっ、僕はなぁ!誇り高きアロの人間だぞ!!」


「そうだそうだ、ユディルさんはこんなに我が儘で自分が一番だと思っているような人だけど、誰よりも家に関しては誇りを持っていらっしゃるんだぞ!」


「そうだそうだ、ユディルさんは女にもだらしがないし癖毛を気にして毎朝鏡の前で1時間格闘しているっスけど、毎日剣の修行を20分もしている立派な人なんっスよ!」


それ誉めてるの?貶してるの????

剣の修行よりも鏡見てる時間の方がはるかに長いじゃん!


「そもそもアロ家はエメラルド鉱山を掘り当てて大金持ちになったからって、浮かれて貴族になった成金一族だろ」


ウィルーーーー!!!!なんでそんなトドメを刺すようなこと言っちゃうの!?

ほら!!ユディルさん泣きそうな顔になってるじゃん!!


「ウィル!言い過ぎでしょ!」


「俺はな、位に胡座をかいて偉そうにしてる貴族様が大嫌いなんだよ」


フンッと分かりやすくそっぽを向くウィルに呆れて言葉も出ない。

も~、貴族に何か恨みでもあるの??


横を見るとリークさんも少し困ったような表情で私を見てきた。

お互いに、顔を見合わせたまま、力なく笑う。

ここは私が何とかしなければ。


「ゆ、ユディルさん」


「何だよ……」


「あのあの、私が渡した神具。しっかり使ってセーフゾーンを守ってくれたんですね。本当に素晴らしいです」


「え……」


「私の力が注がれた蚊取り線……ゴホン。カトーリセンコーウは、真に強い者にしか扱えない代物なのです。あれは本来専用の神具にはめ込んで使用するのですが、あの状況ではカトーリセンコーウしか使えなかった。あれは神の力を吸っているので少しずつ朽ちていくのですが……大変だったでしょう?最後まで手に持っているのは」


「あ、あぁ。煙も凄かったけど、熱いし、どんどんと灰みたいなものが落ちてきたから」


「そうです、最後までユディルさんが持ち続けたのです」


「ユディルさん、危ないものだったらって自分達には持たせてくれなかったっスから」


そりゃあ蚊取り線香を素手で持ち続けるのはしんどいよね。

何かケースも出せばよかったんだけど、あの状況じゃそんな事も言ってられなかったし。

にしても、プリメロさんとセグンドさんには持たせなかったって、ホントこの3人の関係性気になるなぁ。


「流石です。ユディルさんは最後まで皆の為に持ち続けてぐるぐる救護室を回っていた……常人には出来ないことです」


ネッ!と勢いよくリークさんを見る。

リークさんは首がもげるんじゃないかってぐらい頭を上下に振った。


「そうだな!純粋に救護室を守ってくれて助かったぞ。流石だなユディル!」


「………」


ぐすんっと鼻をすすったユディルさんが縋るような眼差しで私を見てきたので、私は今の自分に出来る精一杯な荘厳な雰囲気と笑顔で静かに頷いて見せた。


「……まぁ、僕ならそれぐらい出来て当然さ」


やった~~!復活した!!

横でプリメロさんとセグンドさんが、わいわいと騒いでいる。


よし、それだけ盛り上がる体力があるのならこの後の事は全部ユディルさん達に任せちゃおう。

もう正直、お腹もぺこぺこだし疲れたしで休みたいんだよ~。

このまま巫女様巫女様ってわいわいされる気分にはぜっっったいになれない!


「ユディルさん。私神具の使いすぎで疲れちゃって……休みたいので、皆さんにそうお伝えして貰っていいですか」


「分かったよ。巫女様がそうおっしゃるのなら、僕が巫女様と彼らの橋渡しになるのもやぶさかではないよ」


ユディルさん本人、誰かに頼られることは嫌いじゃないんだな。

ちょっと嬉しそうな顔してるし。


「護衛として俺も巫女と一緒に休ませて貰う。残骸を片付けるのは冒険者連盟の仕事だろうしな」


「そうだな。じゃあオレも休ませて貰うぜ~。魔法を連発したから腹減ったし、何か食わねぇと」


「いや、君達は前線に居た者として報告する義務があるだろう」


「優秀なBランク冒険者のユディルさんに任せるさ」


ウィルがユディルさんに背を向けながら、わざとらしい口調でそう告げる。


すぐ後ろからユディルさんの呼び戻そうとする声が聞こえるけど、もう駄目~~!

私もお腹すいた~~!!

そのままリークさんと一緒に、私はウィルを追いかけた。



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