巫女様の認識のズレ
「異世界人のスキルでレベルが半額になった……なぁ」
「はい。その、その件に関しては私が全面的に悪いと言いますか……誠に申し訳ございませんとしか言いようがないのですが」
怒りに震えるウィルの「これ以上に屈辱的な誤解をされたままでいられるか」という心の底からの気持ちにより、私はリークさんに全てを話した。
自分が異世界人である事。
異世界に召喚された際、ウィルに対して誤ってスキルを発動してしまった事。
そして、割引によって半減したレベルを戻す為に、護衛を兼ねて首都エオンまで向かっている事を説明した。
間、間にウィルが補足を入れてくれたけど、終始不機嫌そうにしていた。
まぁ、そうだよね。
周りの人間にはレベルが半額になったこと、知られたくなさそうだったもんねぇ……。
「オレもクレアとは顔見知りだが……正直な所、クレア程の魔法使いでも解けない呪縛なんてものが存在するのかって思った。でもまぁ、シーナが異世界人だって言うなら納得できるな」
「今の話、全部信じてくれるんですか?」
全てを話し終えた所で、疑う素振りを見せないリークさんに少し驚いた。
だって自分で話しておきながら、レジだとか、割引だとか、何言っているのか分からないって感じても変じゃないしね。
だけどリークさんは、むしろ反対に意地悪っぽい笑みを向けてきた。
「あぁ。シーナが嘘を言っているように思えないしな。ウィルの戦闘状態や、なかなか戦いに参加したがらなかったのも納得がいった」
ほ~~やっぱり凄いなぁ、リークさん。
そういえばウィル、戦いたく無さそうだったもんね。
「それに、シーナが異世界人だってのは気付いていたんだぜ」
「え!?」
「勘だけどな。なんか普通の奴と周囲に漂っている空気が違うっていうか……オレの本能みたいな奴が、特別な存在だって言ってる気がしてさ」
いつものニッと力強く持ち上がった表情に、私も釣られて笑みを浮かべてしまった。
異世界人だって悟られていた驚きよりも、リークさんの持つ大きな懐の入り口にも似た、人を引きつける魅力を感じるっていうか……。
「勘って、動物かよ。まぁサイズだけ見ればゴリラ並だな」
「だぁれがゴリラだ!!!」
腕を組みながらウィルがリークさんに突っかかると、リークさんは分かりやすく怒った。
でも、今回はちょっと様子が違う。
「ふ、ふふふ……お前の減らず口には毎度毎度イライラさせられるけどなぁ、今は違うぞ!何て言ったって、オレの方がお前よりも強いんだからな!」
「……はぁ?」
「お前のレベルは40。オレのレベルは70。どうだこの差!オレはウィルに勝ったぞ!」
「あくまで一時的なものだろ」
「一時的であろうとオレの方が強いのは事実だ。そう理解すると、不思議と心に余裕が出来てくる。うんうん、弱い冒険者は強い冒険者が守ってやらねぇとなウィル。オレも付いていってやろうか?レベル40じゃシーナを守りきれないだろ?」
今までの積もり積もった感情が爆発したみたいにリークさんは巻くし立てている。
あ、ウィル顔には出してないけど、すっっっごい苛立ってるね。
せめてものプライドなのか、何も言い返してないけど、これ以上2人を喋らせていると本当に取っ組み合いの喧嘩になりかねない。
「ウィル、リークさん。そろそろセーフゾーンに戻りましょうよ。他の冒険者さん達も気になりますし」
「ふふん。心配いなんて不要さ。なんてったって、この僕がセーフゾーンを守っていたんだからね」
「わっ!!!びっくりした!」
急に背後から傲慢そうな声がして、私は大声を出してしまった。
それに釣られて、膠着状態だったウィルとリークさんも声の主に思わず注目してしまう。
ふふんっと顎を持ち上げた状態で、堂々と佇むのは、完全に分かりきっていたけどユディルさんだった。
彼の背後にはしっかりとプリメロさんとセグンドさんが狛犬よろしく立っている。
「やぁ、お嬢さん。セーフゾーンの奴らが早く君を連れて来いと騒いでいる。僭越ながら、このアロ家の嫡男たる僕がその役目を買って出たわけだ。光栄だろう」
「は、はぁ。あれ?ウィルやリークさんじゃなくて私ですか?」
第一線で戦っていた2人を歓声と一緒に出迎えるのなら分かるけど、どうして私?
私はそれといって、たいした事はしてない気がするんだけど。
私の言葉にユディルさんは言っている意味が分からないとばかりに小首を傾げている。
「そりゃ、ウィルやリークもそうだが、セーフゾーンを守り抜く為に巫女様自ら動いてくれたとなったら、歓迎しないわけにもいかないだろう?」
「え……」
「シーナ、お前やっぱり気付いていなかったな。さっき言おうと思っていたんだが、俺がやった気配遮断のマジックアイテム、クイーンビーの前に来た辺りで消えていたぞ。その辺りから目撃した奴もいるだろうし、レベルの低いやつには突然現れたように見えたかもしれんな」
何と!そんな事すっかり忘れていたよ~~!
ウィルが呆れたように教えてくれたけど、気にする余裕は一切なかったです……。
「僕が手助けをしたとはいえ巫女様なんだ。本来なら居てくれるだけで感謝しないとね」
何だか話がおかしい。巫女様って、神様に仕える人でしょう?
そりゃ、確かに神聖な存在かもしれないけど、私の認識と微妙なズレが生じている気がしてならないんですけど。
「ねぇ、ウィル、リークさん。この世界って巫女様は凄い存在だったりするの?」
こっそり2人に聞いてみると、言ってる意味が分からないと言った様子で顔を見合わせ、同じタイミングで私を見てきた。
「凄いも何も、神の声を聞いたり失われた神聖魔法を使う奴らの事を言うが」
「ウィルの言うとおりだ。基本は大きな教会に居るし、殉教の旅に出てくる奴らは居るが遭遇は稀だからな、そりゃ好待遇で招くだろ」
「神の声を聞く???それに神聖魔法って何!?私そんな貴重な存在だって周りに勘違いされちゃってるの!?」
「いや……どう考えても、巫女より異世界人であるシーナの方が貴重な存在だと思うぜ」
「そうそう。巫女って言っとけば、異世界人のカモフラージュにもなるし、お前のスキルも誤魔化せると思ったんだよ。神聖魔法はまだ謎な部分が多いからな。まぁ、雑に扱われるより良いだろ」
「そういう問題じゃない~~!!」
軽い気持ちでスーパーマーケット教の巫女なんて肩書きを被っちゃったけど、この口振りから、どう考えても身の丈が合ってないよ!
スーパーで働くレジ店員だから、お正月の時だけ雇われる神社とかの巫女さんの方が近いんだってば~!!
神聖魔法?そんなの知らないし、神の声を聞くなんて、神どころかチュートリアルさんの幻聴が聞こえるバッド状態なんですけど。
雑に扱われるのは確かに嫌だけど、勘違いされたまま崇められるのも嫌です~!




