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【コミカライズ:1巻発売】私、異世界に来てまでレジ打ちやってます!  作者: 黄金栗
第二章 セーフゾーンと恋心
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レジ袋引っ提げて走ります


ドーン!!!


「わわわっ!!」


大きな音が響き、走り出した私の背中を強い風が追い風みたいに焚きつけてくる。

武器を振るう音が響き初めて、今すぐにでも振り返りたい衝動に駆られてしまう。


「ダメダメ、今は走るのに専念!!」


歩く速度は速い方だけど、今は一生懸命走っても、セーフゾーンの入り口が遠く感じる。

しかも、背後からはクイーンビーの羽音に混じって、複数匹の重なった羽音も聞こえて来つつあった。


「撤退して行った筈のスイートビーの群だ!」


一斉にセーフゾーンに向かっている。

しかもさっきの風は辺りに漂っていた蚊取り線香の煙も吹き飛ばしていて、これはまずい。

今は一気に雪崩込んでくるってことはなさそうだけど、それも時間の問題かもしれない。


「ぎゃっ!こっちにも来た!」


ブブブとスイートビーの羽音がすぐ上から聞こえてきた。

走りながら上を向くと3匹ものスイートビーがいる!

追いつくのめっちゃ早い!!

そりゃ、羽の生えてる生き物に二足歩行の人間がかなうわけ無いって分かってるけど…けど!!!早すぎない!?


やばいやばい、私に狙いを定めている様子。

セーフゾーンの入り口付近はもうすぐだけど、さっき見た限りじゃ怪我をした冒険者達もいたから、助けは呼べないし、頼れない。

腹を括れ、鏑木椎名!頑張れ!私はやれば出来る子!


走りながらレジ袋の中に手を入れ、ハチ退治用のスプレーを取り出す。

タイミングを見計らって立ち止まり、勢いよくジェットノズルの引き金を引いた。


「お願い効いてーー!!」


プシューーーー


ノズルから噴射された殺虫剤はスイートビーに見事当たった。

もくもくと周囲を煙が包み込む。


ボト、ボト、ボトリ


「ひえっ!」


スイートビーが3匹次々と地面に落ちてきて、当たらないように逃げ回る。

怖い怖い!


プシューーーー


ピクピクと動いていたから思わずもう一回追いスプレーをする。

そして、暫く痙攣していたスイートビーは、数秒後に完全に静止した。


き、効いた……ハチ退治用のスプレー効いた!!!

私の世界の商品はこっちのモンスターにちゃんと通用するんだ!


よし、そうと決まれば、これで皆の役に立てるはず。


今一度、強くスプレー缶を握りしめた私は、再び走り出した。

そして、入り口付近で冒険者達に襲いかかっているスイートビーに向かって、片っ端からハチ退治用スプレーを吹きかけていった。


「な、なんだ……」


「魔法?」


「……もしかして、巫女様の力!?」


次々に地面へ倒れていくスイートビーに愕然とする冒険者達。

だけど、その内の誰かがぽつりと呟いた瞬間、彼らの視線が一斉に私の方を向いた。


しまった、目立っちゃダメなんだった~~!!

でもでも、今はそんなの気にしている暇なんてない!


「あの!このセーフゾーンで一番高い場所はどこですか!」


「えっ、あ……それなら、あの物見台だと思います」


放心状態のままな近くの人に聞くと、彼はセーフゾーンを取り囲む高い柵の傍に建てられた物見台を指さした。

奇しくも、ウィルとリークさんが戦っている場所もよく見えるし、セーフゾーン全体も見渡せる。

よーし!


「ありがとうございます!」


勢いよく頭を下げると、ハチ退治用のスプレーを噴射しながら私は物見台めがけて走り出す。

レジ袋引っ提げて、走りながらスプレーを吹きかけるってちょっと……かなり間抜けかもしれないけど。


「スイートビーを一瞬で……きっと高名な巫女様に違いない」


「巫女様が、俺達に生き残るチャンスをくれたんだ!ウィルさんとリークさんにばかり任せてられない。俺達も戦うぞ!」


「冒険者の根性見せてやれ!」


それでも役には立ったみたいで、沈みきっていた空気が一瞬にして元の状態へ戻っていく。

冒険者たちは今一度大きな声を上げて、スイートビーに向かっていった。



「お、シーナは無事セーフゾーンに戻れたようだ」


クイーンビーの猛攻を剣で塞ぎながら、リークさんがウィルに伝える。

直接見ることは出来ないけれど、伝わってくる熱量と「巫女様」の単語が聞こえて、場の空気が変わったことを知らせてくれた。


「余計な事していないといいけどな」


「お前ホント素直じゃねえな。良い子じゃねえか。あの状況で一人で行く、だぜ」


「うるさい」


フンッとウィルが吐き捨てるみたいにしてナイフを振るう。

そのままクイーンビーの大きな身体に上からのし掛かられそうになって、バック転で後ろに飛び退いた。


「まぁこれで目の前のクイーンビーにだけ専念出来る。ウィル、オレは正面から行く。逃げ回らないように羽と足を頼む」


「……分かった。こいつは逃がすと厄介だからな」


……



物見台は木で出来ていて、なかなか年期が入っていた。おまけに梯子は立てかけてあるだけで、一歩上る度にギシギシと軋む。

うううっ、怖い~!でも我慢我慢。

こういう時何て言うんだっけ、お・か・し?折れない、考えない、下を見ない!


「ファイトー!」


掛け声と共に私は一気に梯子を登り切った。

二畳程の狭い物見台からは、クイーンビーと戦う2人の姿がよく見える。

よし、ポジションは完璧!やるぞ!


ウィルから受け取ったマジックアイテムを私は勢いよく床に叩きつけると、黄土色の玉はあっさりと割れて、そこから出てきた赤い線のような光が私の身体に吸い込まれていく。

おお、なんだか忍者のアイテムみたいだ。

これで私の姿は周りから見えなくなっていると、思う。


「よし。バックヤード入りますー!!」


万が一に備えて、ちょっと狭いけど緊急回避場所としてアイテムボックスを背後に待機させる。


「足りなくなったらバックヤードに取りに行けばいいから、とりあえず全部焚いちゃおう」


手に持っていたレジ袋の中に入っている残りの蚊取り線香全てに火を付けて、一斉に煙を焚いた。

クイーンビーの羽が放つ衝撃波にも似た暴風は、私がセーフゾーン内で焚いた蚊取り線香の煙を打ち払いつつあったからだ。

まずはそっちのカバーをしなくては!


「げほっげほっ、凄い煙になってきた。何か扇ぐもの……」


流石に10個以上あった蚊取り線香に火を付けると、前が見えなくなる程に煙りが凄い。

身体に害は無いとしても、流石に煙たくて涙が浮かんで来ちゃう。

なんとか手探りで周囲を触り、床に重ねて置いてあった補修用の板で風を起こす。


「何だかサンマでも焼いてる気分」


物見台から風の流れに乗って、ふんわりとセーフゾーンを包み込んでいく様子が、どことなく昭和のご飯前にも似た懐かしさだ。

生憎、パタパタと扇いでいるのは七輪で焼いているサンマじゃなくて、蚊取り線香の煙なんだけど。


「……巫女様の祈りの風だ」


その煙を眺めている冒険者には厳かなものに映ったらしい。

これはこれで……良かった、のかな?


とにかく、これだけ煙を焚けば少しはセーフゾーンは持つと思いたい。

最悪救護室は、ユディルさんがぐるぐるしてくれてるしね。

なら、次は……。


「ウィル!リークさん!!待っててね!いらっしゃいませ、お次のお客様、こちらのレジへどうぞ!」


高らかに宣言して私はレジを物見台へポンッと弾ける音と共に出現させた。

そしてハンドスキャナーを手に取って、2人が交戦しているクイーンビーに向ける。

遠いけど届くかな~~こういう時には発揮してよ~~チートの力!


ピッ


やった!通った!!


・クイーンビー

属性 飛行・虫(弱点 火)

超大型の蜂型モンスター。

暗く湿った洞窟内等にスイートビーの群と共に生息している。

女王蜂として認識され、針から分泌される毒は致死性が高い。


推奨冒険者ランク A 

飛行属性を持つ為、火属性魔法の使える魔法使い、もしくは遠距離攻撃の可能な弓士等がパーティに居るのが好ましい。


合計金額

 50ゴールド


えっ何!?情報が多い!レベル上がったのかな。

今まではスキャンする前にウィルが全部倒しちゃってたから『売却』ボタンばかりだったけど、レベル上がってスキャンする鑑定ってこんなにも詳しく出るんだ……。

モンスターの情報も初めて見たけど、対処の仕方まで書いてある……レジ凄い。


っていうか、推奨冒険者ランクの所!!

Aランクってのは2人ともクリアしてるけど、この文面を読む感じだともっと多い人数で対処するモンスターなんじゃないの、もしかして。


しかも、ウィルもリークさんも多分、遠距離向きじゃない!

せめて、弱点だけでも伝えないと!


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