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【コミカライズ:1巻発売】私、異世界に来てまでレジ打ちやってます!  作者: 黄金栗
第二章 セーフゾーンと恋心
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ダイヤモンドの価値


トータはマクスベルン大陸の中でも大きな都市のひとつで、街の周辺はある程度しっかりとした整備がされているらしい。

モンスターが苦手な植物を植えて街に近付かないようにしていたり、定期的に国の関係の人が見回りもしているとか。


勿論、トータには街の人が作った自警団もあるとのこと。

元の世界でいう消防団みたいな感じかな。

納めるのが自治体か国ってだけで小回り違ってくるよね。


それにしても、次の街への街道があるってのは良い。

私が召喚された場所は道の整備もされてなかったから、トータにつくまでに靴がボロボロになったけど、今歩いている街道は整備されていて、馬車が通れるぐらいに幅も広くて歩きやすかった。


「凄い、こんなに歩いているのに疲れない……!トータの街を出てからずっと歩きっぱなしなのに、まだまだ歩けそう」


「あぁ、ケンドーの作った靴を履いているからだな。疲労が蓄積しないように回復魔法が付与されているんだろう」


ほへー!!凄いな犬堂さん!!

前に歩いていた時とは段違いに楽……!


「とはいえ、あくまで軽減させるだけで、全く疲れないってわけでもないからな。そのあたりは勘違いするなよ。ぶっ倒れる前に一言言ってくれ」


「言ったら休憩してくれるんですか?」


「善処する」


「ある程度区切りのいい所まで歩かされる奴じゃないですか、それ!」


「頻繁に休んでばかりいても、エオンには到着しないからな」


うっ、それを言われると何も言い返せないんですけど。

多少言い方に棘はあるけど、ウィルの言っていることは正論だ。


トータを出る時、ウィルに言われたことがある。

門を出るなり、3本の指をずいと私に突きつけて、彼は真剣な眼差しでこう言った。


「1、絶対に俺の目が届く所にいろ。

 2、モンスターが出たら俺の後ろにいろ。

 3、パニックを起こすな。余計なことをする前に何かあったら俺に言え」


……なんだろう。

言い方を変えさえすれば胸がときめくようなセリフなのに、まるで業務報告みたいだった。

いや、まぁ。確かに私をエオンまで送るっていうビジネスなお付き合いだけどさ。


「ここら辺のモンスターは弱いから大丈夫だとは思うが、最悪何かあった場合、緊急回避場所としてアイテムボックス内に逃げられるようにしておけよ」


「あ、そっか。アイテムボックスって異世界人しか入れないんでしたね」


「そうだ。まぁ、俺としては自発的にそのトンチキなスキルを使って、ちょっとでも早くレベルを上げてほしいがな」


相変わらずの広角を上げた皮肉顔を最後に、ほわんほわん、と私の頭の中で記憶の回想が終わっていく。


ウィルの言うトンチキスキル……レジ打ちなんだけど、先日キャロラインさん達に襲われた時、新しく「保留」ボタンを覚えたこともあって、多少なりとも戦闘の役に立てるようになったと思うんだよね!


「早速来たな。気をつけろ」


整備のされた街道って言ってもモンスターは隙間をかいくぐってやってくるみたいで、ぴょこんと伸びた2つの愛らしい耳が現れた。

赤いおめめが可愛いウサギさん。

普通のウサギと違う所は、そのふわふわの前足がえらく鋭利な爪を持っている事だ。


こ、ここここわ!!!

あんなに可愛い見た目なのに、何でそんなにも凶暴そうな爪なんですか!

私とウィルの姿を見つけるなり、ウーって唸ってるし。


ハッ、ここは私のスキルをウィルに見せつけて、ちょっとは見直させるチャンスなのでは。

保留を使ってモンスターの動きを止めれば、逃げることも出来るし、倒すのも楽になる!

よーし、やってやるぞーー!


「いらっしゃいませ!お次の冒険……者?モンスター様?もういいや、お客様!こちらのレジへどうぞ!」


普段よりも明るい声に促され、私の腕輪が輝き出す。

ポンッと軽快な音と同時に現れたレジのハンドスキャナーを手に、私はモンスターに向かって……。


「よっ」


シュと空気を斬るような音がして、モンスターが背後に倒れた。


ん?今何が起きたの?

わけも分からず、きょとんとする私の目の前で、ウィルがいつの間にか鞘から抜いていたナイフを腰に戻し、ばたんきゅーしているモンスターの前で膝をついていた。


これはまさか……私がスキルを発動するよりも先に倒しちゃったって……やつ?

いやいやいや。まだ後ろからいっぱい出てきたし!もう一回!

次こそはウィルに「そのスキルも役に立つな」って認めてもらうんだから。


「ほっ」


次こそは!


「はっ!」


次こそ……は……。


「よっ、と」


次……。


キュウウゥーって叫び声を上げながらモンスターが転がっていく。

テキパキと無駄のない動きで、モンスターを片っ端からやっつけていくウィル。

その後ろ姿を、ハンドスキャナー片手に見守る私。


「私の出番ないんですけど!」


思わず考えていたことがそのまま口に出る。

手伝おうにも、スキルを使うよりも先にモンスターが倒れてしまう。

そもそも、ウィルがスキルを使ってレベルを上げろって遠回しに言ってたから、ちょっとでも役に立とうとしたのに~!


「何が問題なんだよ。一応護衛対象だろ、お前」


「それはそうですけど。スキルを使う時がないっていうか、なんていうか……」


流石に褒めて欲しいとは言えずに言葉を濁す。

もごもごと歯切れ悪くぼやいていると、モンスターの元から帰ってきたウィルに何かを手渡された。

反射的に受け取ったけど、なんだか色々乗ってる?


「使い所ならある、鑑定してくれ」


「……はぁい」


鑑定もれっきとしたスキルですけども、ぐぬぬ。

とはいえ、されど鑑定、さりとて鑑定。

繰り返していたらレベルも上がるよね。


でも、RPGのお約束ではレベルって大きくなる程、上がりにくくなるのが定番だから、これからもずっと鑑定だけでレベル上げってのはちょっと難しいように思っている。

実際、キャロラインさんとのドタバタで、私のレベルは1から2にアップしていた。

やっぱり鑑定よりも違う機能を使う方が上がりやすいんじゃないかな。


まぁ、とりあえずは今を乗り切ることだけを考えよう。

えっと、鑑定、鑑定っと。


ウィルから手渡された物を見る。

モンスターを倒すと一定の確率で彼らが持っていた物を落とすらしいんだけど……なになに、これは薬草かな?こっちの長い爪はさっきのウサギさんで、これは……ん?

順番に通そうと、選別するみたいに確認していた私は、そのうちのひとつを見て手を思わず止めてしまった。


凄く小さいけど、万華鏡みたいに色々な角度から光を受けて輝く透明な石。

あまりにも綺麗な輝きだったので、すぐにハンドスキャナーをかざしてみた。


「ダイヤモンドだ!」


まさかの宝石が表示され、テンションが上がって叫んでしまった

そっと手のひらに転がしながら、私は小さなダイヤモンドを様々な角度から確認してみた。


実物のダイヤモンドなんて、宝石ショップの店頭でちらっとしか見たことないけど、凄く綺麗~!!

それにやっぱりダイヤモンドって憧れちゃうよね。

結婚指輪はダイヤモンドってイメージが頭の中であるし。


「ダイヤ?ダイヤがどうかしたのか」


「宝石ですよ!綺麗だし、高い値段で売れるかも!」


「……はしゃいでる所悪いが、それは高くは売れない」


「へ?そうなんですか?もしかして宝石って宝石商じゃないと売れないとか、そういう法律があるとか」


「違う。ダイヤ自体にそれほど価値がないんだ。お前の世界ではどうなのか知らないが、ここでは色がついていたり、魔力を持った宝石の方が価値がある。透明度が高いだけのダイヤモンドは他の宝石には劣る」


「え!?ダイヤモンドなのに!!」


そんなに宝石に詳しいわけじゃないけど、宝石の王様みたいなイメージがあったから驚いた。


「ほら、金額の所よく見てみろ」


・ダイヤモンド

 大陸全土に渡って発見される鉱物。

 装飾として使用されることが多い。


合計金額

2シルバー


1シルバーが千円だからこれは2千円ってことか。

ううむ、確かに宝石とは思えない売値。


それに、宝石って掘り出した後削って綺麗にするんじゃなかったっけ。

これは最初からキラキラしている。

それにモンスターが落としたドロップ品と言われるものだから、そもそも宝石が生まれる定義が元の世界とは違うのかも。

だから、あんなに弱いモンスターからぽろっと出てきたのかな。


「なにこれ、このボタン」


ふと気付くと、合計金額の下に新しく「売却」のボタンが表示されていた。

レベルが上がったから、新しく機能として出てきたんだろうけど……売却ってなんだろう。

そのまま売ったりするのかな。でも売るって、どこに対して?

スーパーで商品を買う場合は「売却」っていうよりも「精算」だと思うし。


う~~ん。でも、レベルアップの為にも、新しい機能は試しておきたい。


「ウィル。このダイヤモンドいる?」


「いや。欲しいのか?」


「うん。ちょっと試したいことがあって。使ってみても大丈夫?」


「俺に直接被害がこないなら、いいぞ」


一言多い!

でもまぁ、ウィルの承諾も得たのでさっそくやってみるとしますか。


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