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【コミカライズ:1巻発売】私、異世界に来てまでレジ打ちやってます!  作者: 黄金栗
第一章 トータの街と旅立ち
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凄く嫌な予感がする


アイテムボックスの詳しい定義はちょっと分からないけど、異世界に召喚された特別な人間のアイテムボックスがスーパーのバックヤードっていうのはツッコミを入れていいのか、どうなのか。


「これって元の世界の食べ物とかだよね……持って外に出れるのかな」


アイテムを収納するスキルって言うぐらいだから、旅をする上で手に入れた物をここに置くことは出来るのだろう。

デイリーの冷蔵庫があるなら、食料が冷蔵出来る……凄く便利!


ただ元々、ここに置かれていた物はどうなんだろう。

食べ物には当然だけど賞味期限が存在するから、時間が止まるならまだしも、もしも腐って外にも持ち出せないってなると地獄でしかない……。


「一回試してみるか」


手始めに冷蔵庫の中を見渡してみた。

ケースに入った牛乳。棚に置かれたゼリーやプリン。

あまりこの世界に不必要な物を持ち込むのも何か起きても怖いし、異世界にもありそうな物で試して……あ。


「これとか良さそう」


私の目に透明のパックに入った卵が飛び込んできた。

朝ごはんに卵焼きが出てたし、これなら外に出しても大丈夫でしょ。

パックはどうにかして捨てるか、ウィルに燃やせるか相談してみよう。


「あれ、そういえばアイテムボックスから出る時ってここからでも出られるのかな」


スーパーのバックヤードっていうものは出入り口が複数存在する。

一カ所しかなかったら、部署によっては遠回りになっちゃうからね。

そして、バイト先のスーパーなら冷蔵庫から出たすぐ横にある、このスイングドアで店舗に戻れた。

と言う事は、ここからでもアイテムボックスから出られるかもしれない。


入ってきたときは、私がレジに向かう時に一番使っている場所だったけど、戻る時は同じ場所に出るよね、た、たぶん!

駄目だったら元の位置まで戻ればいいんだし!


おそるおそる、私はスイングドアを押し、ぴょこっと顔だけ覗かせた。


「おい」


「うひゃ!!」


顔を出すと同時にウィルに声を掛けられ、咄嗟に声が出てしまう。

拍子に卵を落とさなかった自分を褒めつつ、魔法服店のラルムへと戻ってきた。


なるほどなるほど。

入る時はどこかのスイングドアから入れて、出るときはどのドアから出ても同じ場所へ戻れるのね。


「昼寝出来る程、中は広いのか?」


「寝てませんってば……!それより、アイテムボックスの中が元々いた私の世界の店にそっくりで。それであっちの世界の食べ物とか商品があって、ここにっ……あれ」


あれほどしっかりと握りしめてバックヤードから出たっていうのに、私の手から卵のパックは綺麗さっぱり消えてしまっていた。

やっぱり異世界にこっちの世界の物は持ち込めないのかな。


「椎名君、もしかしてアイテムボックスから元の世界の商品を持ち出そうとしたのかい?」


「はい。でも消えちゃいました……」


「ほぅ……ちょっと失礼」


「え!?」


考え込むような素振りでスイングドアを色々な角度から見ていた犬堂さんが、唐突にドアを押しながら中へ入っていく。

アイテムボックスって本人以外も入れるの!?

止める暇も無く犬堂さんの姿は消え、5分も経たないうちに、彼は戻ってきた。

にこにこと楽しげな表情がなんとも気に掛かるけど、無事で良かった。


「いやぁ、スーパーのバックヤードなんて初めて入ったから、ちょっとドキドキしちゃったよ」


「お前なんでコイツのアイテムボックスに入れるんだよ。スキル扱いされるなら本人しか入れないだろ」


「僕も異世界人だからかな。腕輪は異世界人一括でアイテムボックスの入り口を承認しているのかもしれないね。あっ、もしかしてウィルも入りたいの?」


「絶対に嫌だ」


そうですよね~~。

私のスキルには関わりたくないオーラが出ている。


それにしても、犬堂さんが入れるのは驚いた。

異世界人が皆、それぞれのスキルを持っていて、スキル自体は個人の能力。

けど、サブスキルのアイテムボックスは「異世界人に一括につく」能力だから、アイテムボックスの形は違うけど、同じ異世界人だから入れるかもしれない。


とはいえ、誰でも入られたら困るから、鍵とか掛からないのかなこれ。


「中に置いてあった商品を手に取ってよく見てみたんだけど、微量に光の粒子みたいなのが飛んでたんだ」


「それって、この異世界人の腕輪から出るみたいなやつですか」


「そうそう。僕が召喚の時に着ていた服にこの粒子は付属していなかったし、椎名君のセーラー服にも付いていなかった。だから、あくまで椎名君のアイテムボックス内に存在する物は、異世界で再構築された元の世界の商品ってことになる。ってことはなんらかの方法で持ち出せると思うよ」


「おおお……」


チュートリアルさんが言ってたオマケってこれのことかー!!

ってことは、異世界に居ながらお菓子とかジュースとか飲めるってことなのでは……!!

凄い、凄いぞ私のアイテムボックス!

やっぱり食べ慣れた味がこれから絶対恋しくなるもんね。

いやまぁ、その出し方がまだ分からないけど、出せる可能性があるみたいだし!


「僕としては是非ノブ学のウエハースを椎名君のバックヤードから恵んで頂きたいものだよ」


「うえはーすってなんだ」


「ぱりぱりした生地にチョコが挟んであるお菓子です。お菓子よりも中に入ってるカードがメインなんですけど」


「へぇ。チョコレートがオマケってことはその付属のカードはよっぽど貴重な品なんだな」


「お菓子、こっちの世界ではあんまりないんですか?」


「砂糖やチョコレートって言った甘味は高価だからな、王族や貴族ぐらいしか頻繁に食べない。デザートは果物がほとんどだ」


「そうそう。たまに魔法服のお礼でお菓子貰うと凄く嬉しかったりするんだよね」


「ほーー……」


世界観が違うと、物の物価が違ってくるのは当然っていえば当然か。

私の世界でも昔は塩胡椒が金より高かったって話だし。

でも、お菓子ってやっぱり美味しいじゃん~~。

クッキーやチョコレート、ホットケーキにシュークリーム。


そういえば、スーパーと言えば製菓コーナーだよ!

卵と牛乳があれば簡単に作れる製菓セットもあるぐらいだし、持ち出すことが出来さえすれば、ウィルや犬堂さんにお菓子を作れるのでは。私頭いい!


「それにしても、アイテムボックスがバックヤードって面白いね」


「そういう犬堂さんのアイテムボックスは何なんですか?」


「僕のアイテムボックスはね、中世のサロンみたいな感じだよ。アンティークの家具やグランドピアノが置いてあって……」


「……やっぱり不公平だ!!!」


サロンとバックヤードって全然違うじゃん!!

チュートリアルさん、出てこいーーー!!!


「だったら椎名君も僕のアイテムボックスには入れるって事かな?いつでも歓迎するよ。でも、どうして突然スキルが使えるようになったんだい?」


「あっ、犬堂さんは聞こえなかったんですか?私は勝手にチュートリアルさんって呼んでるんですけど、スキルの使い方とか、色々教えてくれる謎の声で……」


「えっ、謎の声?聞こえないよ」


「じゃあスキルとかは、どうやって発動したんですか?」


「僕は、この腕輪何だろう、からだったなぁ。そしたら腕輪が力を持ってる事をここのオーナーに教えてもらって。隠すよう言われて、そこからスキルのことを色々勉強しつつ今みたいに使えるようになったんだよ。本当、貴族社会に顔が利くオーナーが居なかったらどうなっていたことやら」


「スキルってのは、普通は自分の成長で身に付くものだ。異世界人が規格外なんだろ。ていうか、お前……もしかして異世界に来た時におかしくなっちまったのか」


「いやいやいや。牛に引かれそうにはなりましたけど」


「ちょっと待って雫ちゃんに身の危険とかどういうこと」


「シーナです!もう!大丈夫です私は正常です!ウィルも心底心配そうな顔しないで!」


やっぱり私にしか聞こえないみたいだ……もしや幻聴……

どうなんです?チュートリアルさん?

…………………………………………

……くそう、やっぱりそんなに都合よく答えてはくれないか。


ううっ、2人が生温い視線を送ってくる……話を変えなければ。


「そ、そうだ!犬堂さん、ハンガーをもらう事って出来ますか。制服をアイテムボックスに置いておきたくて」


制服を捨てるか持ち歩くべきか悩んでいたけど、アイテムボックスがあるなら話は別だ。


犬堂さんが山のようにきらびやかなハンガーを持ってきた中で、私は普通の木のハンガーを1つ譲って貰った。

制服に宝石がついたハンガーは全くもってよろしくない。

ちなみにトルソーをあげようか?とも言われたけど丁寧にお断りしておいた。

バックヤードに置くんだから、ハンガーで十分です!


そのまま制服を置きに、もう一度スイングドアの中に入ってみる。


「ここがバイト先のスーパーのバックヤードと同じってことは、あったあった……」


奥まった場所に並んで存在する、ロッカールームと休憩室。

休憩室のドアは開かなかったけど、ロッカールームは無事に入ることが出来た。


通常、スーパーで働く人の人数を考えると、広いロッカールームには大きなロッカーが沢山立ち並んでいる筈なんだけど、ここでは私しか使わないからか、ロッカーはない。

広い空間にハンガーラックとパイプ椅子が一つずつ存在していた。


「何あれ、紙袋?」


そう、パイプ椅子の上には見慣れぬ紙袋がぽつんと置いてあった。


「……なんだろう。凄く嫌な予感がする」




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