表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北風さんと太陽くん  作者: 砂臥 環
第1章 北風さんとお勉強。
4/10

北風さんと帰る。

 脳内で否定はした。

 だがすればするほど意識をしてしまうのは何故だ。



 帰りは当然ながら一緒に帰っているのだが、ただそれは方向が一緒なだけである。

 北風さんは普段喋れないせいか、結構喋る。今も「季節外れの蝉の脱け殻を発見して、それがやたらとでかかった」だとか物凄いどうでもいい話を嬉しそうに喋っている。

 本当にどうでもいい。



 なのになんでだ?

 そんな北風さんが可愛く思えるのは。



(俺の頭もどうかしてしまったんだろうか……)


 チラリと北風さんの方を見る。

 だが彼女はいない。


「あれ? 北風さん??」


 北風さんはななめ後ろで太った猫と威嚇し合っていた。



 ……どうしよう、そんな姿も可愛いとか。



 いよいよ自身の頭が心配になる。


「なにやってんの」

「此奴はこの辺の大将なのだ……なかなか触らせてくれぬので『モフらせろ』と説得を試みたが聞き入れてくれぬので少々喧嘩になった」

「……『モフらせろ』は説得じゃない気が」



 俺が北風さんの頭をモフりたい。

『モフらせろ』と言ったらモフらせてくれるのかな。


 ああくそ……なんなんだもう。



 そもそも北風さんは無駄に牛歩である。

 なんかの戦術かよ?

 走らせれば速いくせに、とにかくチンタラ歩く。



 一緒にいれる時間が長くて嬉しいとか……思ってないんだからな!?



 クーデレ好きの俺だが、自分の脳内がまるでツンデレのようになる日が来るなんて思いもよらなかった。

 そんな自らの思考をやはり否定したくて、言葉を吐く。


「北風さんはなんでそんな歩くのおっそいの?」


 また険のある言い方になってしまった……これでは本当にツンデレだ。


 だがそんな俺を小馬鹿にしたように笑い、北風さんはこう言った。


「むしろ、よくそんな目的もなく早く歩けるもんだ」


 ……なんじゃそりゃ。


「いやあるよね? 目的」


 下校時である。

 帰るという明確な目的がある。


「力を溜め込んでいるのだ……謂わば満を持している」

「えー……」


 よく『満を持す』とか知ってたなぁ。

 でもきっと漢字で書けないんだろうな。


 俺が生暖かい笑顔を向けると、北風さんは何故かファイティングポーズを取った。


「有事の際は我に任せよ。 友人だからな!」


 そんなに有事が起こるとも思い難いが……


「……なに? 守ってくれるの?」

「然り」


 北風さんはコクリと頷く。

 またつむじが見えた。



 なんだよもう……超可愛い。



 俺の心配は当たっている。

 確実に脳がやられた。

 その証拠に語彙があまりに消えている。



 ……『可愛い』しか、出てこない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 砂臥さんの描くザンネンな方々は、よくよく「フンス!」(鼻息)なイメージが似合うなあ~……とか、どうでもいいことを思ってしまいました……という、どうしようもない感想ですいません。
[良い点] 太陽くんおかしくはないぞ。 北風さんはまちがいなく可愛い。
[気になる点] 太陽くん勝手に落ちましたなw これは北風さんが感情を認識した時の反応が楽しみですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ