第1章エピローグ・北風さんとお勉強。
第1章はここで終了です。
第2章はまだ、暫く後になります。
もし第2章が気になるようでしたらブックマークしてくださるとわかりやすいです。(余韻が台無しになると感じる方もいらっしゃるらしいので、前書きで書かせて頂きました)
※ブクマの際は更新通知の欄にチェックを推奨。
ブクマ、ポイント、感想、励みにさせていただいてます♪(*´ω`*)
終業式の前日。
クラスの──残れない人以外ほぼ全員で、1年の打ち上げをした。
うちの学校は学年毎のクラス替えを行わない。
あまりにクラスに馴染めない生徒がいたり、派閥や虐め等の問題がない限りは基本的に3年間一緒の面子で過ごすことになる。
当然問題が表にでない場合や、進学の関係(担任教諭の専門教科等)で別のクラスに行きたい等の要望もあるため、個人の相談も随時受け付けている。
……その辺は私学ならではといったところか。
クラス替えがないことで、余計にクラスで仲良くしようという気持ちが強い傾向にある。
人によって温度差はあれど、ウチのクラスの皆もやはりそういう気持ちが少なからずあるようだ。それを必要以上に嫌がるタイプの人や、圧になるほど強制してくるヤツも特にいない。
終業式後は部活等で使用する教室以外を早々に閉めてしまう。
そんなわけで前日。
当然許可は要ったが、教室にお菓子と清涼飲料水を持ちこんで『打ち上げ』の時間を設けることになった。
その後は各々仲の良い者同士やその場のノリで、食事や遊びに出掛けるようである。終業式前日だけあって帰る人が半数以上みたいだが。
「北風さん、これ限定なんだよ! 食べてみて~」
「ぬぅっ?! 『信州わさび味』だと……!? 」
答案返却後のアレは、北風さんがクラスに馴染むのに一役買った。
更に敬遠されていた主な理由『賢いクールキャラで近寄りがたい人』だという誤解がとけ、おバカで忍キャラの北風さんはすぐに人気者になった。
突っ込みどころが多いので、絡みやすいのだ。
今だって、限定のお菓子が辛かったらしくのたうち回る北風さんに、女子らが笑いながらジュースを与えている。
それを横目で眺めていると、飯田がニヤニヤしながら茶化してきた。
「あら~太陽ちん、寂しいでしゅか~? ボクが代わりにお酌をしてあげるよぉ~」
「……お前のだけ酒が入ってんの?」
「こないだの太陽ちんに比べたらこんなテンションなんてことないよ~」
「ぐっ……あれは……俺に非ず!」
「いやいや」
突如割って入った(北風さんとは違って本物の)クールキャラである植野が、にやっと笑いながら言う。
「こうなると思ってたから、誤解を解かなかったんだろ? 飯田はともかくとして、気付いてるヤツは少なからずいたよ?」
「──……気付いてるって……なんに?」
北風さんの性格にか?
それとも……
くつくつ笑いながら、植野は「さぁねぇ」と一言。
……その笑いが答えみたいなもんだ。
「えっ? えっ??」
やっぱり飯田はわかってないけどな。
(道理で必要以上に俺に任せられてたワケだ)
考えてみれば北風さんにマイナスイメージがあったにしても、あまりに皆絡もうとしなかった。
特に俺が勉強を見だしてからなんか、俺経由で話してみようと思えばいくらでもできた筈だ。
……わざわざ『北風と太陽』に例えて北風さんを揶揄ったのも?
(──そういや植野と篠宮さんだ)
篠宮さんは植野の彼女である。
思い返せば篠宮さんの『北風さん怖い』発言は少し不自然な気がする。
(俺の反応を見てたわけかよ?!)
いつからわかってたんだ……
そう思うと顔が熱くなる。
やだもう超恥ずかしい。
「…………俺そんなにわかりやすいかな?」
「ははっ、まぁねぇ……」
「えっ? なになになになに??」
「うん、飯田うるさい」
そうこうしているうちに、打ち上げ終了の時刻となった。
皆でゴミを片付けたら解散。
「太陽~、二次会行こーぜ!」
「う~ん、今日はパス……」
北風さんは二次会には行けないらしいので、ご飯に誘っている。行けない理由がおそらく『小遣い』的な問題だとふんでの誘いだ。
当然家で母も交えて飯を食うだけだが、『母さんが颯子ちゃんを呼べってうるさい』との理由を用いて誘っているのでなんら問題はない。
むしろありがとうございます、お母様。
北風さんも嬉しそうに承諾してくれた。
……俺も、嬉しい。
ゴミを捨てにいく役目を買って出ると、北風さんも自然と後に続く。ふたりで荷物とゴミを持って、教室を出た。
校舎裏のゴミ置き場にゴミを置いてから校舎に戻るより、靴を履き替えてそのまま帰る方が早い。
なので一旦表玄関から出ることにした。
校舎に添って裏まで向かう際、北風さんがあの日持ってきた花の匂いがして……端の方にある植え込みを見る。
こんなところに咲いてるなんて知らなかった。
「北風さん、すっかり人気者だね」
「そんなことはない……だが、そうだとしたら…………」
「……そうだとしたら?」
──北風さんがこないだずっとモジモジしてた理由は、あのあとすぐわかった。
「たっ……」
そして今もまだモジモジする。
俺はそれを見てニヤニヤするのを我慢する。
「たっ……太陽の、おかげだ!」
俺の名前を呼ぶのがなんだか恥ずかしいらしい。
今もまだ恥ずかしいようで、北風さんは照れ隠しに持っているゴミ袋をブンブンと振った。
ジュースの空きボトルがボコボコと鳴る。
ああもう可愛いなっ!!
俺もまだ慣れないので、毎回可愛さで身悶えそうになる。
北風さんがあだなで呼ぶのは、俺だけだ。
ちなみに──他は『氏』付で呼ぶ。
そもそも勉強を教える時から『殿』呼びの俺は、ほんのちょっとだけ、最初から特別扱いだったと知った。
それは勿論、恋愛感情からなんかじゃない。
今照れているのだって、きっと違うだろう。
それでも──
「…………ズルいっ!」
「えっ」
北風さんはほっぺを膨らませて口を尖らせ、足をドンドンした。
なんてわかりやすい不満の訴え方だ。
非常にあざと可愛い仕草だが、北風さんがやるとまるで頭の上に『ぷんすか』という文字が浮き出そうな位可愛くて、コミカルでもある。
「我の呼び方も『北風さん』から変えるべきだ!」
「!!──」
──そんなの、そもそも母さんの『颯子ちゃん』呼びが羨ましかった俺には嬉しい以外の何者でも……
何者でも…………
…………
……
「…………そ」
「そ?」
「~~~~~~っそ……」
顔が、熱い。
「それは……またの機会で」
「なぬぅぅぅぅぅぅぅ!!?」
思ってたよりも、恥ずかしかった。
北風さんは、また地団駄を踏んでぷんすかしていた。
可愛い。
閲覧ありがとうございました!
誤字報告も、ありがとうございます!!
ちゃんとラストまで書いてから上げなかったので、ギリギリでした……
あと、途中部分のクオリティと文字数が微妙なことに……
第2章は最後までキッチリ書いてからのUPにしようと……思っては、います。(´・ω・`)いつもそんなこと言ってら~
もしかしたら1章2章の間に挿話を入れるかもです。