表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【漫才】嫌いな言葉BEST3

作者: 山﨑歩帆

ツッコミ「どうも~、(ツッコミの名前)で~す」

ボケ「(ボケの名前)です」

ツッコミ「二人合わせて」

ボケ・ツッコミ「(コンビ名)でーす」

ツッコミ「ハイッ! そういうわけでほんとにねー、頑張っていきたいわけなんですけれどもー」

ボケ「やめろよっ!」

ツッコミ「え……?」

ボケ「……なん……だろ……がっ」

ツッコミ「え? ごめん、なんて?」

ボケ「どうかしてるよ、お前は」

ツッコミ「あの、漫才始まったばかりなんですけど。え? 何かしました? 私?」

ボケ「『頑張る』なんて、言うんじゃねぇ」

ツッコミ「はい?」

ボケ「ステージに上がったその瞬間から、俺たちの両方の肩の上には、『お客さんを笑わせる』という、重大な責務が乗っかっている。お客さんだって、笑うために、ここに来ているんだ!」

ツッコミ「まぁ、そりゃそうだけど」

ボケ「だから、頑張る頑張らないの問題じゃねぇんだよ。なんなら、確認してやろうか?」

ツッコミ「え?」

ボケ「(観客に向かって)期待してますよねー! 俺たちに! ねぇー、お客さーん!」

   観客の声に耳を傾けるボケ。

ボケ「……うん。皆、死ぬほど期待している。一生分の笑いをここで得たいと思っている」

ツッコミ「プレッシャーだな!」

ボケ「だから、なんか面白いこと言って?」

ツッコミ「うるせぇよ! それ、人に言われてムカつく言葉、BEST3のやつだよ!」

ボケ「何位?」

ツッコミ「え、うそ。そこ広げるの?」

ボケ「『なんか面白いこと言って?』は、何位なの?」

ツッコミ「……に、2位だよ」

ボケ「じゃあ、3位は?」

ツッコミ「……」

ボケ「なんなの? 3位は」

ツッコミ「……『おかあさーん、今日の昼飯、何~?』『チャーハンよ』『え~、また~?』」

ボケ「……」

ツッコミ「……」

ボケ「何それ」

ツッコミ「ほら、あれだよ、土日の昼飯ってなんか、チャーハン率、高いじゃん」

ボケ「ふ~ん、そうなの?」

ツッコミ「俺んちはそうだったんだよ。だから、俺の嫌いな言葉3位は、週末の……『チャーハン』」

ボケ「ふーん、そうなんですね」

ツッコミ「……」

ボケ「1位、いこっか」

ツッコミ「……」

ボケ「1位は、何?」

ツッコミ「……『やめさせてもらうわ』」

ボケ「え、どういうこと?」

ツッコミ「ほら、面白い漫才ほどさ、『やめさせてもらうわ』! っていう言葉の効力が、ものすごいじゃん」

ボケ「うん、そうだね」

ツッコミ「うわー、きれいに終わったなーって感動するんだけど、なんかそれと同時に、すげえな! っていうのと、悔しい! っていう気持ちがさ! こう、混ざり合うっていうか……!」

ボケ「わかるよ」

ツッコミ「だろ!」

ボケ「そして、今の俺たちのこの状況じゃ、『やめさせてもらうわ』は、とてもじゃないけど言えないってことも、わかってるよ」

ツッコミ「うん、そうだね。確かにそうだよ、だからこそ! 究極の『やめさせてもらうわ』を目指したいんだよ、俺は!」

ボケ「お前だけ、なのか?」

ツッコミ「え?」

ボケ「究極の『やめさせてもらうわ』を目指してるのは、お前だけじゃないぜ」

ツッコミ「(ボケの名前)……」

ボケ「二人で目指さなきゃ、意味ないだろ?」

ツッコミ「……でもさ、(ボケの名前)」

ボケ「なんだ? (ツッコミの名前)」

ツッコミ「究極の『やめさせてもらうわ』を言えた瞬間が来たとするじゃん? その後俺たちは、一体何を目指せばいいんだろう……」

ボケ「バカか、お前は」

ツッコミ「え」

ボケ「究極の『やめさせてもらうわ』を言えた瞬間、俺たちの瞳には、まったく新しい何かが、見えているはずだ」

ツッコミ「新しい……何か」

ボケ「ああ。またそれを目指して、やっていけばいいんじゃねーの」

ツッコミ「……はは、そうだな。その通りだ」

ボケ「フッ、だろ?」

ツッコミ「はは、うん、お前の言う通り」

ボケ「フフフッ、そうだろ?」

ツッコミ「ちなみに、お前の一番嫌いな言葉って、なんなんだ?」

ボケ「俺か? 俺の一番嫌いな言葉は、週末の『チャーハン』。なーんだそれ、やめさせてもら―――」

ツッコミ「待ってーーーーー!」

ボケ「ん?」

ツッコミ「なんで?」

ボケ「え?」

ツッコミ「なん、え? 嘘、なんで?」

ボケ「ん、どうした?」

ツッコミ「見えていますか?」

ボケ「……」

ツッコミ「見えていますでしょうか? 新しい何か」

ボケ「霞がかかって何も見えない」

ツッコミ「ですよね! よかったです、安心しましたー」

ボケ「すまん。俺の中での『やめさせてもらうわ』は、ただ言いたいセリフ、BEST1なんだ」

ツッコミ「あ、そうだったんだー。でも、なんていうか、話の流れがあったじゃない? できれば汲んでほしかった、っていうのが、正直な気持ちかも!」

ボケ「そうだよな、ごめん。じゃあ、ちょっと仕切り直そう」

ツッコミ「うん、頼むわ」

ボケ「あのさあのさ」

ツッコミ「うん?」

ボケ「なんか、面白いこと言って?」

ツッコミ「それはもういいよ! やめさせてもらうわ! どうも、ありがとうございましたー」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ