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わたしが、もし、メアリーだとしたら

作者:

『メアリーの部屋』※(注釈1)という

フランク・ジャクソンが提示した思考実験が

ある。


メアリーが何か新しいことを学ぶとし

たら、クオリア(経験の主観的、質的

性質)が存在するということになる。


というのだけれど


どうなのかなぁ


わたしが、もし、メアリーならば、

わたしは、色を見たいと思うだろうか?

外の世界を自らの体験のままに見たいと

思うだろうか


ぼんやり考えてみる

わたしが、もし、メアリーなのだとしたら?


視覚に関する神経生理学のことは全て知っている、メアリー


わたしは、思うのだ


見ることって、体験することって、

結局は何なのかしらって


見ることも体験することも、わたしのなか

では、想像と密接に結びついているから

時折、不思議になるのだ


……だって、たとえば、そうだなぁ


わたしが、世界一美しいロッキングチェアー

を創りたいと思うとするじゃない?


わたしは、世界的な椅子界の高名なデザイナーでも

あって、今までの造り上げてきた椅子

たちは我が子のように大事だし、世界的にも

わたしが造った椅子ラブのファンが沢山

いる

わたしは、自由な発想で椅子を造って良いとしたら

わたしは、自らの知らないものを得よう

と思うと思う


想像するよ

いろんなものを


たとえば、今まで不可能だった形状も、人の身体に

フィットすると思えば、突き詰めて考えてみようと思うし、

実際に設計すると思う


新素材だって、使いたくなるかもしれない

自然にかえったりもするかもしれない


イメージを膨らませるよ

わたしのなかの美を探すんだ


わたしは、それと同じようなことをメアリーも

考えるんじゃないかなと思う


わたしが、もし、メアリーならば、

たとえば、外に出れない白黒の世界で

あったとしても、あらゆる方法で

色とはどんなものなのかということを

知ろうと、想像するだろうと思う


そうして、怖くなると思うんだ


【外に出たら、もし、わたしが思い描いていた世界

よりも見劣りがするものだとしたら

わたしは、平気でいられるかしらって】


不安になると思うんだ


もしかしたら白黒の世界で、色を想像したかもしれないでしょう?


わたしがもし、メアリーならば、

外の世界の鮮やかさに、驚くかしら


色を知らない


って、どういうことだろう


わたしは、いつも、この思考実験

を考えるとき、不思議な気持ちになる


つまりは、知識ってなんだろうってこと

想像ってなんだろうってこと

経験ってなんだろうってこと


体験ってなんだろうってこと


そして、感情ってなんだろうってこと

そうして、感動ってなんだろうってことだ


メアリーが、持っている知識が、

肉体的な、体験的な、実際の体験を超える

そういったレベルのものだとしたら


メアリーは、外の世界に出てもきっと感動しない


でも、そんなことありえるだろうか、

だって、人の感覚器官は、身体全身で

喜びを感じることだって、そうだ

色が心理的、肉体的に与える影響も必ずある


メアリーは、確実に色という刺激を肉体的にも

心理的にも与えられていないことになる


それなら、メアリーは、やっぱり、なにかを

思うのではないだろうか、


外の世界に出て、それを目にしたとき

色を目にしたとき

きっとなにかを感じるのではないだろうか



もしかしたら、日常的に色を見ているひと

よりもずっと深く、色を見ることが出来る

かもしれない


知識によって色が変わってみえることがあるのか

わたしにはよくわからないけれど


物体の色は「光源の光」と「物体が吸収・反射する光」で決まる

ことを当然、メアリーは知っていたとして


色をみても、それは決まりきったものとしてしか捉えないだろうか


空の色や海の色、土の色や緑を目にしても、そうなのだろうか


体験するとはなんだろう


心理的なものが、見ているもの、見方に影響を与えることは、わたし自身よく

知っているし


想像することが、見ている世界を何倍も美しく彩ることもわたしは、よく知っている


時には、知らないからこそ、美しく思えることもあったりすることも

よく、知っている


神のように、万物の理を全てメアリーが知っていたとしたら

たとえ初めて色を見たとしても、感動などないのだろうか

心理的な影響など皆無なのだろうか


世界に不思議なものしかないわたしから見れば、それは超人の域だ

信じられないことだ


全てが、計算どおりに見えている世界、そんなようなものなのだとしたら


……何度思考してみても、この『メアリーの部屋』の思考実験は

なにやらよくわからない気持ちになる


知識欲というものは、尽きないものなのではないだろうか

見たことがない知識を実際に見たとき


それが知識通りなんてことがあったとしても

人は何も感じないのだろうか


この思考実験は、本当に不思議な気持ちになる

こう、なんだかむにゃむにゃした猫のような気持ちになる






※(注釈1)『メアリーの部屋』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B


以下、Wikipediaから、引用しています。


【メアリーは聡明な科学者であるが、なんらかの事情により、白黒の部屋から白黒のテレビ画面を通してのみ世界を調査させられている。彼女の専門は視覚に関する神経生理学である。次のように想定してみよう。彼女は我々が熟したトマトや空を見るときに生じる物理的過程に関して得られる全ての物理情報を手にしており、また「赤い」や「青い」という言葉の使い方も知っている。例えば、空からの特定の波長の光の集合が網膜を刺激するということをすでに知っているのである。(中略)さて、彼女が白黒の部屋から解放されたとき、何が起こるだろうか。彼女はなにかを学ぶだろうか?】


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