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第一章  5話  【黒い巨人】 

 (おいおいおい!話が違ぁーう!!!)


 山の麓に見えるヤツ……それは禍々しいオーラを放った黒い巨人みたいなヤツだった。ここからデカブツの敵迄1~2キロ位はあるのにヤツの姿が確認できる程、大きなヤツであったのだ。

 俺は何かの間違いだろうと思い……


 「シロちゃん……確認の為、一応聞くんですが……あの黒い巨人じゃないですよね……?」

 「……?アレの他に何処に相手がいるんだい?」


 シロは当たり前かのごとく、平然とした態度で俺にそう言ってきたのである。

 先程迄ヤル気に満ち溢れていた俺だったのだが、一気ヤル気がなくなる。それどころか少し気持ち悪くなってきた。


 「……シロちゃん?キミは……俺に死ねと仰っているのかな?」


 いきなりあんなのと戦える訳がない。コイツは何を考えてるんだろうか?俺の考えていたゴブリンなんかは何処へ?異世界召喚チートは……俺にはどう考えても、勝てる気が全くしなかったのだ。

 それどころか、まず殺されるとしか思えない。なのにシロは呑気にも……


 「まさかぁ!翔くんはこれから聖剣の勇者になる存在だよ?ボクが一緒に戦うんだよ!」


 シロが一緒に戦うからなに?またしても俺にはシロが言っている意味が理解出来ずにいた。


 「シロちゃん……キミは、バカなの?バカなんですか?」

 「翔くん……シロちゃんをバカ呼ばわりとは失礼じゃないかい?!」


 少し怒りながら文句を言うシロであったが、俺から言わせてもらえばバカ以外の何者でもないのだ。俺はただの人間であり極普通の一般人なのだ。

 そんな極普通の一般人が無防備かつ素手でどーしろと言うのだろう?あんなのと戦ったら一瞬で踏み潰されて……はい!死亡!!です。


 「キミはドラゴンの姿になれば戦えるんだろーが……」

 「ボクはドラゴンの姿で戦うなんて一言も言っていないよ?」


 何を言ってるんだこいつはみたいな顔で言われたのだが、ますます意味が分からなかった。シロがドラゴンの姿で戦わないでどーする気なんだろうか?2人まとめて死にに行くようなものである。


 「どうやって戦うんだ?」

 「ボクは白き聖剣だよ?ボクが聖剣になるから、ボクを使って翔くんが戦うのさッ!」


 (……?!遂に ーー聖剣ーー キタァー!!)


 でもシロが聖剣になるとは?いや!それ以前に……


 「剣でアレを相手にどーしろと?無理に決まってるだろ!死ぬよ?!俺!!」

 「はぁ~……翔くんはやっぱりバカなんだね……まぁ、とりあえず戦ってみれば分かるよ!!」

 

 などとまたため息混じりでぬかすシロ。

 シロが言っていることがいかに常識外れか、それともこの異世界では当たり前のことなのか?俺の頭では理解出来ないことだらけなのであった。普通に考えれば、あんなのと戦ったら……5秒も経たない内に、はい!死亡!!決定です。

 ゴブリンからの……は何処へいったのだろう。俺は早くも……(俺の人生もここ迄か……元の世界に戻ることも出来ず、こんな訳の分からん世界で死ぬのか……)なんて思いだしたのだ。

 そんな俺の心境を無視するかのごとく……


 「じゃあ翔くん!行くよッ!!」


 そうシロが言った瞬間、ドーン!!!と凄い音が山の麓の方で鳴り響いた。

 俺はまさか!と思い……

 

 「これが聖剣に変身したシロの力なのか!?」


 などとつい口走ってしまったのだが……ふと隣を見るとあからさまにバカにしたジト目で俺を見ているシロがいた。シロが変身したわけではなかったのだ。

 シロに変な目で見られながらも、数回に渡り鳴り響く爆発音……俺は恥ずかしながらも……


 「……だよな!じゃあ下で今も聞こえる、爆発音みたいなのはなんだ?巨人が暴れてるようにも見えるが……?」


 と話を反らした。爆発音と共に煙が上がり、木々が薙ぎ倒されているのが見えたのだ。


 「う~ん?なんだろ??よく見えないけど、誰かが戦ってるような……」

 「誰があんなデカブツと戦うんだよ?!」

 「近くに行ってみよう!ボクもここからだとよく分からないし!!」


 確かにここからだとよく分からないのだが、歩いてヤツの所まで行くのにどのくらいかかるのか?万が一誰か戦ってるとしたら着いた頃には、死んでるであろうとなどと考えているとまたしても……


 「行くよッ!」


 の声が。掛け声と共に……シロはドラゴンの姿となり、俺を両足で掴んだ。


 「おい!まさか!!行くよじゃ……」


 俺は最後迄言葉を発することも出来ず、鷲掴みされたまま山を下っていくのだった……俺の考えていた山の下りかたとは全く違ったかたちで……。


 

 敵にバレないよう、少し離れたところ降りた俺達だったのだが…… 


 (はぁはぁはぁ……死ッ、死ぬかと思った……)


 「何も言わずに鷲掴みで下るってどーゆーことだよ!?俺を殺す気か?!」

 「ん?ちゃんと行くよッ!ってボクは言ったよ?」

 「言って返事も聞かずに鷲掴みで山を下る奴があるか!!」

 「ごめんごめん!!翔くんのことなんて全く気にしてなかったよ!」


 サラっと酷い事を言いながらシロは全く悪そびれた様子もなく軽く俺に謝った。

 山を下ると爆発音がする度に地震の如く揺れる地面。辺りは木々に覆われながら砂煙が舞っていた。

 なにやら誰かが戦っている声や金属音が聞こえてきた。


 「やっぱり誰かが勇者の脱け殻と戦ってるね…」

 

 聞き流す所だったが勇者の抜け殻?などと言い出すシロ。直ぐ側で暴れているデカブツのことなのだろうか?

 俺は誰かが戦っている方に目をやり観察していると、金髪が目にはいったのだ。

 その金髪を目で追うと……


 「あれは!金髪の美少女!?」


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