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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
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黒い天使短編「遭難大冒険」3END

黒い天使短編「遭難大冒険」3




南の島の遭難?を満喫する三人。

約束されている慰謝料を考えると笑いが止まらない。



世の中そんなに甘くはなかった。


遭難話、オチ編!!


***



 夜になった。


 生存者たちは充てがわられた毛布に包まり、焚火を熾し、不安な夜を過ごしている。飛行機事故など人生で一度遭うかどうか分からない大惨劇だ。命が助かっただけでも奇跡だ。だがそれを喜ぶ気にはなれない。



 が……相変わらず楽しそうにしている三人。



 生存者たちにはこの三人組のテンションについていけない。



 サクラたちは相変わらずマイペースだ。

 刺身を食べ、出来上がったノブタの燻製を削って摘みながら、今は集めたキノコや貝を石の上で焼いて食べている。


「たまにはこういう食事もええな~。自然万歳や」

「そだね~。アウトドアのキャンプもいいけど、こういう野趣いっぱいの自然キャンプも悪くない。塩味と醤油しかないけど素材がいいからね」

「苦労して食料調達するタノシミもあって最高だJO」

「三日くらいやろか? この生活」

「そだねー。一応ユージには連絡したし、衛星が墜落現場を明日には見つけるんじゃない? 最悪ユージがあたしの携帯のGPSを報告するでしょう。あたしたちだけならともかく、他に140人も生存者がいるから放置は出来ないしね」



「つまりキャンプを三日堪能して……ふふふ! ウチらは大儲け!」

「ホント。アンタの行動力と発想には感服するわ」


 呆れつつ……サクラも笑いが止まらない。


 彼女たちには賠償と慰謝料が出る。モントリオール条約に保証された権利で最低でも2000万円。これは国際法上定められた条約だ。今回はテロだが、それは関係ない。国際条約で保証と慰謝料を払う事は定められている。そう、飛鳥が自腹を切ってまで墜落が確定している飛行機に乗ったのは慰謝料が貰えるからだ。別に違法ではないし、サクラとJOLJUがいたから誰も死なずにすむ。乗客の命を超法規的に助けてあげるのだから、もらっても罰は当たらない、とサクラとJOLJUも納得済みである。



 ということで、サクラたちは救助されるまで南の島のサバイバル……いや、バカンスを満喫した。


 翌日はサクラと飛鳥は海で大きな貝やロブスターを獲り、JOLJUは魚を釣って、この日は海鮮焼きとキノコと魚介の海鮮鍋を作って楽しんだ。味付けは醤油とコーラとトマトジュースで、これでなんちゃってブイヤベースが出来る。コーラは煮込めば醤油に似た調味料になるのだ。


 そして翌日は鳥を捕まえて、それを果物と一緒に焼いて、ソースにして美味しく食べた。毎日豪華なものだ。


 こうして三日目の昼、ようやく救助ヘリが島に現れ、その日の夕方には全員米国沿岸警備隊に保護され、日本人は特別便で横須賀に運ばれ、そこで医療チェックと家族が待っている。


 当然善良な市民であるサクラと飛鳥もそれに従った。これも普通では味わえない楽しく貴重な旅行だ。



 で、


 サクラの顔から笑みが消えた。



 迎えにユージが来ていたからだ。



 サクラたちが露骨に嫌な顔を浮かべたが、文句を言いたいのはユージのほうだ。突然爆破テロ事件を捜査する羽目になった上、サクラたちが救助されたとなれば法律上家族として迎えに行かざるを得ない。



「お前ら、派手に遊んでいたらしいな?」

「南の島でサバイバルしてただけだい。ま! あたしたちは優秀だしな! サクラちゃんたちなら無人島だろうが北極だろうが生き残れるケドね」

「乗客は全員生存だな」

「オイラが乗っていて人が死ぬはずないJO」


 と今回ばかりはJOLJUも得意顔だ。この点ばかりはユージもJOLJUを責められない。今回はこいつのおかげだ。


 だがそれが実は大きな目算違いとなる。


「これはお前らだけ、特別に先に知らせるんだがな。今回の事故……正しくは事件だが、特別条項<J>の自主的行動ということで、航空会社はモントリオール条約の適応外ということになった」




「ん??」


 三人は顔を見合わせる。どういうことだ?



 ユージは説明してやることにした。



「つまり、だ。JOLJUが乗っていてJOLJUが助けた。航空会社に落ち度はなく、墜落の責任はテロリストにあり、命の危険はなかった。よって本来定められた高額の慰謝料の支払いはしなくてもいい、という事になった。少なくともお前たち三人には支払われない。まぁ出るのは遭難三日分の慰謝料と、航空会社からの見舞い代わりの謝礼だけだな」



「ええ!? 2000万円は貰えへんの!?」と声を荒げる飛鳥。

「国際条約無視していいのか!」とサクラも抗議する。

「いいんだ。それがJOLJUだ」



 ユージは言い切る。

 国際条約の、さらにその上に存在するのが国際特別条項<J>だ。


 これは地球政府とJOLJUが結んだ約束で、任意ではあるがJOLJUは地球人を危機から助ける……という一文がある。JOLJUの人助けに関して一般企業がその責任を負わないということも一文にある。つまり、今回の奇跡は同乗していたJOLJUがその責任において全員助けた。だから一般人は文句を言わない! ……という事だ。


 腐りきってすっかりニートが板に付いた居候のJOLJUだが、一応こいつは神様なのだ。地球の宗教になんら関わりはないが、世界がこっそり公認している神である。神様が仕事をしたときは、地球の国際法より上なのだ。



「なんじゃとてー!? このアホを連れて行ったばかりに!!」


 飛鳥は嘆く。だが連れて行かなければサクラと飛鳥以外全員死んでいた。そうなれば後味が悪いったらありゃしない。


 とはいえまったく慰謝料が出ないわけではない。いらんといっても航空会社のほうがそれでは気がすまない。



「飛鳥には一応三日分の慰謝料として30万円出る。後チケット代金は返してもらえるし、航空会社が日本米国間の無料飛行機利用チケットをくれる。向こう5年は乗り放題だ」


 十分な慰謝料、太っ腹……と飛鳥は喜べない。


「えー!? ……あの……ユージさん? この悪ガキとへちゃむくれの飛行機代もウチが出したんですが?」


「支払いは当人にだから仕方ない。30万あれば二人の飛行機代はあるだろ?」

「あるケド……ほとんど儲けにならへん!! うがぁ~!!」


 安い旅行チケットではなく飛び込みの正規の航空チケットだ。片道4万ちょっと。その往復三人分で20万ちょっと。自分の分は返ってくるがサクラたちの分は返ってこない。ということで手に入る慰謝料は数万円である。他に日本=米国の飛行機乗り放題というが、そもそも普段は転送機がある。何が悲しくて狭い飛行機に10時間以上乗って米国に行かねばならんのか。転送機なら一時間以内だ。つまり、そんなものは使わない。


 そしてそれはサクラも同様である。飛行機代は保護者であるユージに払われるし、無料チケットなどあっても使わない、完全転送機組だ。だから何も得しない。



「お前のチケットは俺が有難く使わせてもらうから無駄にはならない」


「あたしに得、ないじゃん!!」


「南の島で遊んだだろ? お前ら三人、今日解放されるだけマシだと思え。特別なんだぞ?」


 他の生存者は色々チェックがあったり病院に入れられたりマスコミ対応がある。さらに捜査も入ることになっている。自爆テロ犯も生きて混じっているからだ。サクラたちの存在はマスコミに知られたくないしテロリストの可能性はないということでユージがねじ込んで自由をもぎ取ったのだ。



 サクラたちはガックリと肩を落とした。他の誰が出てきても怖くないが、ユージにだけは頭が上がらない。



「さぁ帰るぞ。お前らは飛鳥の家でしばらく謹慎だ。俺も今夜は東京でホテルに泊まる。事後処理があるからな。今回は俺と一緒に飛行機で帰れよサクラ。パスポートの偽造までは目を瞑れないからな」



「なんてこった! ……何しにいったやら」

「だJO」

「とほほ~」



 と三人はガックリと肩を落とした。

 余計な欲をかくな……という神様の教えなのかもしれない。




 後日……自爆テロの実行犯は逮捕され、その後ろにいた反米組織も摘発……その捜査の指揮をしたのはユージで色々苦労もあったが、それはまた別の物語である。



黒い天使短編「遭難大冒険」3でした。



これで完結です。


まったくもって、サクラたちの骨折り損のくたびれ儲けですな。

ま、一応乗客の命は救ったんですが、誰も褒めてくれなかったオチ。

なんだかんだいってJOLJUは神様なのです。

たまにはギャフンな目にもあうべきですw


とはいえ、なんだかんだと飛鳥はこういうオチが多いですね。どんな大事件でも生き残るし人助けもするけどお金という形で報われない、それが飛鳥です。小銭稼ぎくらいはしているんですけどね。

一番トホホなのは特別条項<J>だなんて知らされない、他の乗客たちと、なんだかんだと飛行機失った航空会社ですが、まぁ補償がないだけマシですがどう説明したやら。


ということで今回の話はこれで終わりでするワリと短い短編でした。


ちょっとギャグ系が続いたので、次はユージとサクラがメインの話です。


ということでまだまだ短編集は続きます。


これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。

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