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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
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黒い天使短編「そうだ! 料理をしよう」2

黒い天使短編「そうだ! 料理をしよう」2



始まった料理会!

今度はJOLJU、拓、ロザミア、飛鳥。

安全パイと地雷が交互にあるぞ!?w


ということでレッツクッキング!


水曜日  JOLJU

============



 ここにきてJOLJU登場!!



 しかし全員、ここで少し安堵する。JOLJUと飛鳥は数少ない安牌だ。JOLJUはアウトドアでの料理経験が豊富で、大人数分の調理にも慣れている。



「だけどあいつ、月曜日からどこかに出かけていたけど、どこいったんだ?」

「今日もおらんな」


 この料理会が決まってからというもの、JOLJUは晩御飯以外の時間は一人行動でどこかに行っている。今日もどこかにいっていていない。そこに一抹の不安を覚える。


 今日はサクラと飛鳥は午前中は自宅でゲームをし、午後はセントラル・パークで遊んで帰ってきたは夕方だった。



 帰ってきたサクラと飛鳥は、リビングまで匂ってくる臭いでJOLJUが何を作ろうとしているかわかった。



「お、カレーライスだ」

「良かった。安牌やなぁ~」


 キッチンでは、10人前はありそうな大鍋でカレーをかき混ぜるJOLJUの姿があった。こいつもこいつで馬鹿正直に特製エプロンをつけている。


「もうじき出来るJO♪ たっぷり作ってるからたくさん食べるがいいJO」

「カレーだと失敗はないか」


 野外のキャンプなどでもよくJOLJUはカレーを作る。カレーは鍋一つでできるし、JOLJUは特に小技を使わず炒めて煮込んで市販のルゥを入れるだけだから失敗もない。


「昨日と一昨日はあんまだったから、今日はちゃんと食べたいとこやな」

「ふふふ! まぁ出来上がりを見て驚くがいいJO!!」


 と自信満々に胸を張るJOLJU。



 はて? カレーでそこまで自信満々になるか?

 なんとなく嫌な予感がするサクラと飛鳥。



 そう、そして食卓に並んだのは、ただのカレーではなかった。いや、カレーだけではなかった!



 メイン・ディッシュはカレーだ。牛肉と野菜がゴロゴロっとした家庭風のカレーで、気持ち具が大きいかな? というくらいでルゥも市販のものを素直に適量使った普通のカレーだ。そして野菜サラダもレタスとキュウリとトマトで市販のドレッシングをかけたシンプルなものだ。




「な、なんじゃこりゃ!!」



 問題はそれではない。カレーライスもメインだが、別にメインが用意されていた。



「すごい! みんなJOLJUが作ったの!?」

「えっへんだJO」

「マジか! ……えー、何人前あるんや? コレ」


 食卓の中央に並んだ大皿に山盛りに盛られているのは……何種類もの刺身だった。



 マグロ、カツオ、ブリ、サーモン、マダイ、アジ、サバ、ヒラメ、スズキ……豪華9点盛り合わせだ。それがクロベ家で一番大きな鉄皿に、これでもか! というくらいに盛り付けられている。刺身盛りというより食べ放題バイキングの大皿だ。


 これには全員驚いたが、その説明を聞いてもっと驚いた。



「コレ全部オイラが釣ったンだJO♪」

「まぢか!!??」

「鮮度抜群! みんな日本産だJO!!」


 そういう事だ。


 この三日間……JOLJUは釣りをしていたのだ。この刺身は買ったものではなく釣ったもの、釣り馬鹿のJOLJUにしかできない芸当だ。もちろん捌いたのも処理したのもJOLJUだ。


「お前、よく三日でこんなに釣ったな」と拓も呆れ顔だ。

「風禅のジッチャンと一緒に協力して釣ったんだJO!」


 マグロは近海でも釣れるメバチマグロ一匹。カツオ二匹。ブリ1匹。これは静岡で昨日釣った。サーモンは初日に北海道で釣り、マダイ、ヒラメ、アジ、サバは今日千葉沖で釣り、スズキは風禅が東京湾で釣った。みんな釣ってすぐに内臓抜いて処理をして急速冷凍したから鮮度はいいし寄生虫処理もしたからその心配もない。釣り好きでテレポートでどこにでもいけるJOLJUだからできる事だ。


「豪快だね♪」

「エダのために頑張ったんだJO~」

「いや……コレお前アレだろ。ただ単に釣りがしたかっただけじゃん」

「お前こんなに釣れるんなら普段から釣ってもってこい!」

「普段はこんなに贅沢に釣りできんJO。お金かかるし。1万円、ほとんどエサ代で使っちゃったJO」


「こんなに食えるか! お前1万もあれば市場で買ってきたらいいじゃん!」


 カレーライスがあるならこんな刺身盛り合わせはいらんではないか!

 そういわれると言葉がない。その通りである。結局釣りがしたかったのだろう。


「本当に寄生虫は大丈夫だろうな」とユージ。医者が生魚に当たって倒れたなんてみっともない。だがその点さすがに釣り好き魚好きなだけあってちゃんとJOLJUは生きた状態で内臓を取り除いたし、下ろした柵は急速冷凍(JOLJU丸秘アイテム『ぽこっと一瞬冷凍棒使用』)したし、刺身にするときチェックしながら切っている。魚だけは信頼感がある。



「うん! 美味しいよ、JOLJU!」


 そのエダの言葉にみっともないほど喜ぶJOLJU。皆食べ始めた。サクラも食べる。

 今度はユージの料理のように想い出の調味料はない。ごく普通のカレーだ。サラダもかなり強引なものだがまずくはない。そして刺身はいうだけあって鮮度抜群で旨い。店などで出るような洗練されたカットではなく、どれもちょっとぶつ切り感ある豪快な漁師風だが魚の質がいいから旨い。


 お酒は自由に飲んでいいので、成人組はよく冷えたビールと日本酒を持って来て酒盛りを始めた。未成年組も楽しく刺身を摘んでいる。



 そしてすぐにある問題点に気付いた。



「合わない。絶望的にカレーライスと刺身が合わない」


 嘆くサクラ。飛鳥も同感だ。


 香辛料たっぷりのカレーライスは旨い。そして鮮度のいい刺身も旨い。しかしカレーライスの旨味と刺身のワサビ醤油+生臭さはまるでマッチしない。大人組はこの食い合わせの不味さを知っているから、さっきから刺身とサラダで一献楽しむばかりでカレーライスを口休めくらいにしか食べない。料理が出来て味も分かるエダは、上手にカレーライスを食べ、サラダを食べ、お茶で口の中をスッキリさせ、刺身を食べ、サラダ……と、ここまで上手くやれば食べられないことはないが……困った事に月曜日、火曜日とロクな料理に当たらなかったので、オナカがペコペコな未成年組は上手く制御できない。


 カレーライスをガッツリ食べるには刺身が邪魔で、大人組のように刺身をメインにするならカレーライスが邪魔だ。一応何が出されても残さず食べる、というのがルールだ。



「あ、そうや。ええこと思いついた! カレーライスの白米だけ皿に取って……」そういいながら飛鳥はカレーのかかっていない部分の白米を別皿に移す。


「そしてそれに刺身を乗せれば! 海鮮丼や!」


 白米に刺身をたんまり乗せ、ワサビ醤油をかければ……はい、特製海鮮丼である。こうすれば何の問題もない。


「成程。あたしもそうしよっと」


 サクラも飛鳥に倣い海鮮丼にしてみた。JOLJUが刺身を肉厚に切っているのでこっちのほうが食べ応えがあり旨い。それを見てユージと拓も真似をした。


 こうして晩御飯は久しぶりに盛り上がったが、釈然としない者が一人……JOLJUだ。



「メインはカレーライスなのに」



 ちょっと哀しそうな表情を浮かべ大鍋一杯のカレーライスを見つめるJOLJU。結局、自慢の特製カレーライスは誰もおかわりせず保存食として冷凍庫行きとなった。


 尚、刺身も刺身以外の切り身もアラもたっぷりあったので、エダがそれを使って明日のお昼ごはん用に海鮮ピラフを炊いた。抜群に美味しく、ますますJOLJUのカレーライスは忘れられた。




=========

 木曜日  拓

=========




「ほーら!」


 拓が持ってきたのは大鍋だった。中身はフタがされていてわからないが、ツーンと唐辛子の香ばしい匂いがしている。


 拓は皆の前でフタを開いた。


「特製キムチ煮込みラーメンだ」


 そう、そこには鍋一杯の刻まれたキムチと肉、そして麺が見える。


 拓は全員分注ぐと自信満々に説明を始めた。


「大学時代覚えたんだ。まず大鍋に湯を入れて、肉、きのこ、野菜を入れる。その後インスタントラーメンのスープを入れて麺を入れて、それから刻んだキムチを鍋一杯に入れる。スープが薄い分、キムチで味を出すんだ」


「インスタントとはいえ美味いな」


 料理はできないくせに舌は肥えているユージが感嘆をこめて言った。男らしい料理だが味は洗練され栄養的にもいい。


 エダもこれには絶賛だ。


「冬食べたらよさそうだね」

「当然」

 と自信満々に誇った拓だったが、その後


「いかにも独身の男の料理だよね。女の子にコレ出してもモテないだろうね」


 というサクラの一言で拓の得意面は打ち砕かれるのであった。


 こんなトウガラシとニンニクの匂いがプンプンする料理はデートでは使えないだろう。そしてアジア人には物珍しさのない料理で欧米人には見た目が悪い。所詮は独身料理である。


「なんか、我が家の昼ご飯みたいや」


 飛鳥も呟く。確かに日本人なら誰でも簡単に出来そうだ。豪快だが失敗のないインスタントラーメンに具とキムチを入れただけの代物である。味は悪くないが、手間でいえばユージの卵雑炊の次くらいお手軽なものだ。ただ難点もある。それは時間である。さっさと食べれば旨いが、少し待つと麺が伸びるし出汁を吸って野暮ったくなる。一人用ならともかく大人数でワイワイとつつくにはちょっと向かなかった。


 こんな手抜きラーメン鍋をクロベ家で食べることはないから珍しいが、この手のお手軽手抜き料理をよく作る飛鳥と、その御相伴になるサクラはあまり嬉しい料理ではなかった。

そして……皆、鍋料理が続いているのには少々飽き飽きしてきた。



=============

金曜日 ロザミア=パプテシロス

=============



 予想した通りの結果が展開された。


 イレギュラーも意外性もなく、まったく予想通りの出来。


 ミートローフに温野菜、スープそしてパン……献立は立派なものである。



 全て黒い事を除けば……。


 ついに地雷炸裂である。



「私が調べたレシピ通りに作ってみたものだけどどうかしら?」


 愛想笑いを浮かべながら作り方を自信満々に披露するロザミア。一応間違えてはいないようだが、それならば何故ミートローフは黒い!?


「ちょっとコゲたけど、でも中は火がちゃんと通っていて美味しいはずよ」



 ……レアというか通っていませんでした……。



 幸い良質の牛の赤みだけを使ったようだし、遠赤外線オーブンで焼いているから食中りにはならないと思うが……。


「…………」


 こうして皆は泣きながらコゲコゲ・レアのミートローフと、塩っぽいスープ、半生の温野菜を食べる羽目になるのだった。



 予想通りの結末である。


 そもそも人生初めての料理に期待するほうが間違いなのだ。


「これも……こういうイベントの定番みたいなもんやからな」

「そだね。昨日たらふく食べてて正解だったわ」


 調味料はレシピ通りきっちり量ったようなので、味は見た目ほどひどくはなく、「不味い」といいながらもなんとか食えるレベルだった。


「ミートローフじゃなくて、ハンバーグだったら失敗してないよ、ロザミアさん」


 エダはどこまでも優しかった。

 幸いオナカを壊した人間はいなかった。




==========

土曜日 真壁飛鳥

==========


 

 このメンバーの中で一番の安牌!



 普段から普通に真壁家の食卓の料理を作っている飛鳥! 人数がいつもの倍だがそのくらいは許容範囲内だ。


 ということで、飛鳥の場合は「作れる料理」ではなく「美味しい料理」を目指す事になる。


 大人数でもあるし、手軽に寄せ鍋でええか? と思っていた飛鳥であったが、周りが「期待してます」「次が地雷だからせめて今日くらいまともに」「飛鳥ならいいもの作る」「鍋以外で」と、ハードルを上げられた。


「過大評価や。ウチはエダさんとは違うんやが」


 同じ主婦といっても、飛鳥は別段料理が好きなわけではなく、手抜きできるところは手を抜くしシンプルにすめばそれがベスト……という奴だ。


 ということで、真面目に作る事になった。


 鍋はなし。魚はJOLJUが出した。パスタはセシルが出した。昨日はロザミアが肉料理を失敗した。ならメインはカッツリ系か?


 飛鳥は冷蔵庫の中身と睨めっこして、キノコと豆腐のみそ汁、ほうれん草のお浸し、肉じゃが。そしてメイン・ディッシュがコレだ。



「我が家特製モンモン焼きやぁ~!」



 ドーンと食卓に乗せられる大皿。そこに盛り上げられた肉野菜炒め!


 牛肉と白菜も椎茸、しめじ、ニラ、もやしの豪快スタミナ炒めだ。


 飛鳥の家に居候しているサクラとJOLJUはよく食した料理だ。


 出てきた瞬間、このよく知っている二人は「げっ」という顔をした。



「なんやその顔は! モンモン焼きは我が家オリジナルの特製やど!」

「いや味はともかく、もう少しひねりが」

「オイラたちよく食べてるJO」


 サクラとJOLJUはこれが飛鳥の十八番であるのは知っているし味もよく知っている。


「うん♪ 美味しそうだよ。さすが飛鳥ちゃんだね」

 とエダは褒めてくれている。



 作り方は至って簡単。味付焼肉用牛肉をフライパンで焼き、半分火が通ったところで白菜、キャベツ、ネギ、えのき、ニラ、もやし等色々な野菜を入れフタをする。野菜から出る水分で半分蒸し焼き状態になり、焼肉のタレの味が野菜に広がる……という料理だ。最後に味が薄くなった分、酒と醤油で味を調える。作り方は簡単だが飯のおかずには最高だ。



「今回は特製やで。ステーキ肉使ったから!」


 いつもは100g158円の格安味付けカルビ牛を使う。だが今日は大奮発、特製和牛サーロインを焼肉のタレに漬け込んで作った。尚、調理所要時間は20分、メンバーの中で最短である。


「旨いけど……めっちゃB級グルメだよね、モンモン焼き。定食屋のおすすめ定食みたい」



 ちなみに「モンモン」とは……飛鳥が昔牛肉の事を「モンモン」と呼んでいたことからなのか、「猿でもできる」という意味で「モンモン」なのか……と、両方の説があるが、きっと両方だろう。



「そこがええんやないか。日本やったら生卵つけるけど、米国やと卵は危ないしやめといたで」


「あ、それ大丈夫だよ。我が家の卵、週に一度日本で買ってくる新鮮なのだから」


 米国の卵は日本ほどサルモネラ菌のチェックが厳しくないので生は危ない。だが卵が一番美味しいのは半生だ。なので週に一度エダ(がいけない時はサクラ)が東京まで行っていい卵を買いだめしてくる。


 ということで、エダが人数分の生卵を取ってきて、皆それを割って入れて食べた。



「うまい!」

 拓は嬉しそうに言う。男性はこういうガッツリ系は大好きだ。


 成程、食べてみるとコッテリとはしているが、生卵がいいカンジにマイルドにしてくれるし、ソースとよく絡んで旨い。少なくとも初めて食べる仲間たちには好評だった。


 食べ過ぎた拓はその後「胃が凭れる」と喚いたが……。




黒い天使短編「そうだ! 料理をしよう」2でした。



ようやくレシピの参考になりそうな拓ちんと飛鳥が登場しました。

キムチラーメンはありきたりですが、「モンモン焼き」はオリジナル料理です。とはいえただの手抜き焼肉野菜炒めですがw


ああみえて意外に安牌なのがJOLJU。伊達に600年生きていない!


まぁ「AL」でこいつ料理してますしね。「AL」でも何度かカレーライス作ってます。まさに得意料理なのだろう。ルゥー入れるだけという話もあるが。


ということで次回オチ!

むろん残されたのは主人公サクラだけ!


こいつは地雷原だがどうするのか!?


ということで次回をお楽しみに。


これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。

 

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