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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
82/208

黒い天使日常編 『困った刺客』5END

黒い天使日常編 『困った刺客』5



病院で待ち受けていたのはもちろんユージ。ついでに拓とサクラ。

愕然となる老人。嵌められた!

が……思いもかけない展開に。

そしてそれにまんまとサクラも利用されたのであった。



***



 先頭にスパーツ医師、後ろにシーゲルとドーラ。

 三人はNY州立病院内の面談室に通された。



 そして、ここでシーゲルは言葉を忘れるほど驚愕した。



 部屋で待っていたのは、相変わらずダークスーツに身を包んだユージ=クロベFBI捜査官だ。彼の後ろにはその相棒と、とんでもなく美人な紅い髪の10歳くらいの少女が立っている。



 そう。先日暗殺に失敗した<死神捜査官>ではないか!



 シーゲルは動く左手で体を探る。だが武器になるようなものは何一つない。空港にも病院にも金属探知機があり警備も厳しい。



 ……嵌められた……!! しかしどうしてスパーツ医師まで……!?



 が、スパーツ医師は笑顔でユージに向かって手を差し出す。



「ありがとう、<ユージ・ブラック>! 元気そうだね。活躍は聞いているよ」

「バルゼル=スパーツ医師。貴方も元気そうで何よりだ。酒はやめたか?」

「酒か! ゆっくり語り合いたいな。ぜひ今夜NYを案内してくれ」

「それよりも患者と家族を紹介してくれ」

「ああ、そうだな。こちらが患者のドーラ=カリンド。で、こっちが祖父のシードル氏だ」

「俺はこの病院の救命外科医ユージ=クロベだ。で、後ろにいるのが俺の娘と相棒だ」

 そういうとユージはチラリと拓を見て笑う。

「紹介しなくても知っていると思うがな」


「…………」



 シーゲルは、すべてを理解した。そしてこのからくりも知った。



「頼む!! 虫がいいのはわかっとる! 孫を! 孫は助けてくれ! このとおりだ!」


 その場に崩れるように座り込み頭を床につけるようにして下げ叫ぶシーゲル。


 プロは一目でわかる。今ユージも拓も銃を持っている。そしてシーゲルは丸腰だしドーラもいる。自分の事はいい。だが自分を捕まえるためわざわざドーラを喜ばせ、今度は絶望させないでくれ! 



 シーゲルは、何度も土下座する。恥も外聞もない。



「そんな真似は必要ない」


 ユージはそういうと、そっとシーゲルの右腕を掴む。思わず呻き声をあげるシーゲル。それを見て、ユージは静かに言う。



「ここは病院で、俺は医者だ。医者である以上、人を治すのが仕事だ」

「…………」


 そういうとユージはドーラの傍に行き、彼女の頬を撫でた。


「ぱっと見る限り、血色もいいし表情もいい。栄養状態は問題なさそうだ。ドーラ、ちょっと大きな手術をする。そのため一つ君に謝らなければならないがいいかい?」

「何ですか?」


 ドーラの返事はスペイン語だった。だがこの程度の会話は双方分かるようだ。


「手術は、君の頭の中にある悪い部分を切り取る。だから、髪を短くカットしなければ手術は出来ないんだが、切ってもいいかな? それと、しばらくは病院で生活する事になるけどいいかな?」


 ユージの言葉を後ろにいたサクラがすかさずスペイン語に訳す。


 ドーラは女の子だ。髪を切られる事に戸惑ったが、スパーツ医師が「その代わり苦しくなくなるよ」というと、ドーラは仕方がなさそうに同意した。



「じゃあちょっと検査に行こうか。その後、俺の診察がある。大変だけど君なら頑張れるよ」

「はい。ブラック先生!」

「ブラックじゃなくてクロベ先生だ」そういうとユージはスパーツ医師を見る。「ブラックは昔の偽名、俺はクロベ。今は本名なんだ」

「そうか。だが僕にとっては、君は<ユージ=ブラック>もしくは<ブラック・50>だよ」



 <ユージ=ブラック>も<ブラック・50>もユージが潜入捜査官時代名乗っていた名前だ。いうまでもなくブラックは見た目の事だけでなく苗字の<黒部>からとったものだ。 



 そう、バルゼル=スパーツ医師はユージが潜入捜査官として闇医者をやっていた時の付き合いだ。だから彼にとってユージ=クロベよりユージ=ブラックのほうが馴染みがあるのだ。



「しかし、本当に手術代はいいのかい? 君の指名料だけでなく術後のケアやバックアップも必要だが?」


「実は本件でスポンサーがついてね。治療費は一切心配いらない。ただ、それにはシーゲル氏の協力が必要だが問題ないだろう? そうだな、シーゲル氏」

「あ……ああ。協力する」

「ということで金銭の心配はいらない。一応米国側で一年は面倒を見る。最初の一か月は俺が主治医として担当して、容体が落ち着けば専門の小児癌医師に引き継ぐ。手に負えない大事になればその時はヘルプで俺も手伝うが基本俺との契約は最初の一か月。それでいいか? 心配するな、協力するならアンタの滞在費はこっちの負担で出す」


 収監されれば滞在費もへったくれもない。スパーツ医師はユージのこの言葉の真の意味は分からなかったがシーゲルには十分察することができた。シーゲルはゆっくり頷いた。


「じゃあ、ドーラ。これから検査だ。ウチの娘が看護師のところまで連れて行ってくれるから大丈夫だ。通訳もしてくれる。いいよな? サクラ」


「いいよ」


 サクラは頷くと、「じゃあおいでー」とドーラを引っ張って検査室の方に向かっていった。


 そしてスパーツ医師も、「これまでの経過と医療記録を教えてくれますか?」という事で拓と一緒に退出していった。



 こうして部屋にはユージとシーゲルだけとなった。



 しかし立場はもはや決定的だ。シーゲルには立ち向かう気すらない。




「先日はどうもありがとう。まさか手術の依頼人に命を狙われるとは思わなかった」

「それは……申し訳ない。知らなかった」

「相手が俺じゃなきゃ、死んでいたところだ。笑い話にもならん。それで、だ」そういうとユージは冷徹な眼でシーゲルを見下ろした。

「孫娘を治療する代わりにアンタには色々話をしてもらう。CIAがアンタの昔の殺しの件について色々聞きたいそうだ。包み隠さずCIAが納得する結果が得られれば、その報酬としてCIAが治療費を全額負担する。嘘をついたり何者かをかばったりすればCIAは金を払わない。つまり孫娘は助からない。話は理解したか?」



 <ジャングルの死神>に仕事を依頼していた麻薬組織はすでに壊滅しているが、CIAの調査では他の麻薬組織や南米の政治家関係の案件もある。CIAとしてはそっちの情報が欲しい。何せ50人以上殺したといわれる伝説の殺し屋だ。表に出てないものも入れれば100は越すだろう。特に政治家関係はかなり強い興味を示していた。CIAが治療費全額負担なんて太っ腹を示したのはこういう事情があるからだ。


 ユージが語るまでもない。過去関わった連中がどんな連中かはシーゲルが一番よく知っている。当時は新進気鋭で野心的な政治家だった男が、今では政党の重鎮で権力の座に深く胡坐をかいていたり、田舎町のギャングの頭が大都市の裏社会の顔役にのし上がった男もいる。そういった者たちから口封じを受けないため細心の警戒を怠らなかった。だが今CIAに話せば、遅かれ早かれ彼らは気づき、やがて暴露したシーゲルに辿り着くに違いない。


 もちろん、そのことはユージも分かっている。裏社会がいかに密告者や告発者に厳しいかは世界でユージほど知る者はいない。当然ドーラも狙われる。


「アンタの孫の事だが……彼女はボリビアには帰せない。術後一年は要注意だし、三年は経過観察が必要だ。もちろん保護もいる。だから米国に在住してもらう。新しい戸籍で、全く別人として生きる。証人保護プログラムってやつだ。ちゃんと学校にも通えるし、高校までの学費はかからない。望めば大学にもいける。これが代償になる」


「…………」


 代償というにはありえないくらいいい話だ。手術代のためシーゲルは売れるものは全て売った。ドーラもこんな病状で外には出られず数年……特別仲のいい友達もいなかった。


 南米では政治不安や貧しさから命の危険を冒してまで難民となり米国に移民することを求める人が多い。手術だけでなく、ドーラは合法的に移住することができるのだ。それも生活費の心配はいらず、身の安全も普通以上に保証される。


 それがシーゲルの過去の清算と証言が確定する。



「強制はしない。アンタが選べ」

「分かった。協力しよう。なんでも話す」

「交渉成立だ。ならば俺は最善を尽くそう。FBI捜査官ではなく医者としてな。成功率は40%くらいしかない事は伝えておく」


 そういうとユージは立ち上がり、上着のポケットから携帯電話を取り出すと別室で控えている通称<ベン>に結果を報告した。



「逮捕はしない。だから俺はアンタがどうなるかタッチはしなし知ったことじゃない。だが……ドーラの手術日にだけは立ち会えるよう頼んでやる」

「十分だ」


 シーゲルはそういうと深く頭を下げた。


 1分もしないうちにドアが叩かれ、スーツ姿の長身の男が入ってきた。彼がCIAのベンだ。ユージに対し目礼すると、シーゲルの腕をつかんだ。


「ああ、そうだ。その男、右腕の二の腕に銃創がある。なんとか止血はしたようだが感染症や壊疽の危険がある。治療してやってくれ」

「普通の医者でいいか?」

「普通の傷だ。後、これで貸しは一つ消しておいてくれ」

「逆だろう? しかし構わない。そのうちまとめて清算してもらう」


 そういうと通称<CIAのベン>は笑み一つ浮かべず、小柄なシーゲルを連れて部屋を去っていった。



 ユージは溜息をついた。



 その直後、仏頂面のサクラと拓が部屋に戻ってきた。



「何が通訳よ! 病院スタッフ、スペイン語喋れるじゃん!!」


 サクラは今日、「通訳のため」と言われてやってきた。だがそんな必要は全くなかった。病院スタッフの中にスペイン語が喋れる者もいたし、ドーラも片言なら英語が分かる。


「そりゃあスペイン語が喋れる人間はいるだろう。米国にラテン系がどれだけいると思っているんだ? ほとんど第二言語みたいなものだぞ?」

と拓。


 東海岸で北にあるNYはそれほどではないが、西海岸や南部のほうはラテン系が多く、スペイン語しか喋れない人間も多い。病院のような公的機関には当然対応する人材がいる。



「じゃああたしは何のために連れてこられたの?」

「自分の孫に近い歳の女の子がいればシーゲル=カリンドも暴れないだろ? 野外ならともかく病院で銃撃戦なんてすれば大事件だ。それにもし他に依頼人がいるなら最終手段で爆薬抱いて自爆する可能性もゼロじゃないからな。いくら俺でも命捨てた自爆狙いをやられると対処に困る。100%殺さないと対処できんし周囲も巻き込むからな。だが躊躇してくれれば被害は最小限に抑えられる」



「…………」



 サクラ、唖然……。



 賢いサクラはユージのひどい手の内を完全に理解した。




「サクラちゃんを盾にしたのか!?」

「気にするな」

「娘を盾にする親がどこにいる! 弾避けじゃん! 純然たる弾避けじゃん! それが親の所業か!?」



 いつものクールはどこへやら……子供のように猛抗議するサクラ。



 ちょっと通訳をしてくれればケーキをごちそうする、という事で来てみたら危険な逮捕劇でよりにもよって盾にされたとは! 親として娘の命はどうでもいいのか!? まんまと騙され利用された。面白くない! 


 サクラは猛然と家族にしか見せない無遠慮な態度で猛抗議する。が、ユージは聞く耳持たず全く相手にせず携帯電話を取り誰かと喋っている。そして無視されてまたまた怒るサクラ。この不毛な親子の争いを、拓は仲裁することなく呆れながら見ていた。



「悪い。これからドーラの診察だ。今日……いや、三日くらいは病院にいるから、支局のほうは休む。すまんがそこの煩いガキを家に送っておいてくれないか?」


 ユージはそういうと携帯電話を懐にしまった。これから着替えて医者になる。ちなみにこの部屋は万が一を考え用意された面談室で、周囲に病室はない。ユージの自室は別にある。そこでメインの銃を置き白衣に着替え医者になる。白衣になってもヒップホルスターのコンパクトオートは持ったままだ。



「コラ! 逃げるな!! ちゃんとサクラちゃんにケーキを買い与えろ!! バナナチーズケーキとブルーベリーチーズケーキ!!」



 が……ユージは完全に無視して行ってしまった。



 悪態罵声罵詈雑言……散々愚痴るサクラの肩をポンと拓が叩く。



「そういうな。ケーキは俺が買ってやるから」


「本当か拓ちん!? だけどあたしとしてはユージに買わせたいンだけど? 少しくらい痛い目に合わせないとサクラちゃんの気がすまないンだけど!?」

「そういうな。ああは言っているが<ジャングルの死神>は紳士的な殺し屋で一般人や女子供は狙わない奴だから危険は低かったと思うよ。先日の狙撃もユージだけ狙って俺を撃ってはこなかったし」

「だからってこの扱いはあるか! エダだったら絶対弾避けに使わないでしょ!?」

「エダちゃんだと通訳にならないじゃないか。まぁ文句言うな。ケーキが食えるンだからいいだろ? バナナチーズケーキとベリーミックスチーズケーキ、1ピースずつでいいか?」


「1ホールよ! 合わせて2ホール! 三番街にあるケーキ屋<パルパース>の!」


 拓も知っているケーキ屋だ。評判がよく腕も素材も一流で、確か1ホール98ドルもする。たまにユージが仕事帰りにエダとサクラのため買いに行く店だ。


「お前ひとりで2ホールも食うの?」

「エダとJOLJUの分!」



 それはそうだな、と拓は納得する。JOLJUはどうでもいいが、今回はエダにも迷惑をかけている。何か埋め合わせが必要だろう。



 こうしてケーキ屋<パルパース>に向かうため移動することにした二人。


 ケーキが食える、という事でとりあえずサクラの機嫌は直ったようだ。


「手術報酬が入ったら、どこかバカンスに連れて行ってもらおう! カリブかハワイかサイパンか! カナダでもいい」

「手術の報酬はないぞ、多分。誰も支払ってないんだから」

「ふぬ? CIAが出すんじゃないの?」

「CIAが出すのはドーラちゃんの治療費だけ。その後の生活は証人保護プログラムの予算だから関係ない。CIAと交渉したのはユージだぞ? まさか自分への依頼料までCIAに要求できるはずがないだろ?」


「て事は……タダ働き!? 無駄骨損のくたびれ儲け? また!??」


「仕方がないだろ? 自分が交渉しといて自分はやりませんじゃあ話にならないじゃないか」


「……なんてお人好しな……」



 もうここまでくれば呆れて言葉も出ない。なんだかんだ言って、この手の無料診療,無料手術は何度目の事か。これだからいつまでたってもクロベ家は大金持ちにならないのだ。


 ユージは捜査官の時は悪人に対し一片の容赦を持たないし悪党の命の価値など微塵も認めないくせに、医療となると貪欲な聖者になる。金は特に問題にしない。ない相手からは取らない事で有名な男だ。



「もしかして……あの殺し屋のじいちゃんも刑務所行きじゃない?」

「だろうな。何の罪でぶちこむんだ? その老人、米国内での犯罪歴はないんだぞ? 公にはどこにも手配されていない。理由もなく刑務所に入れると怒られるだろ?」

「CIAには秘密隔離施設があるじゃん」

「そんな大物じゃないし。でもこの情報で大物検挙した時裁判なり公聴会で証言が必要になる。つまりあの殺し屋の老人には生きてもらわないといけないし、目に届く場所に置いておかないといけない。ということは……結論としてはドーラちゃんと一緒に証人保護プログラムに入れる……だな」



 ドーラは12歳。一人で米国に住むことは不可能だ。そしてユージは彼女の保護者を設定しなかった。それはつまり、他にちゃんとした保護者がいるということだ。いうまでもない、シーゲル氏だ。ユージはカリンド家を丸ごと証人保護プログラムに入れたのだ。むろんこれはFBIの職権以上の行為で、実現させたのはコール支局長と<CIAのベン>だろう。<CIAのベン>がユージに「貸しだ」と言ったのはそういう事だ。


「ちょっとまった。先日の暗殺未遂はどうなるの? アレ、米国内の事件じゃん。殺人未遂の」


「撃たれたのはユージだし、大した事件じゃない。案件もNY市警からFBIが引き取ったから……ま、ユージが犯人射殺したことにして事件はクローズだな。裁判なんかすればシーゲル氏とCIAの事もバレるからやらないだろう。なのでシーゲル氏は無事老後を米国の田舎で安らかに過ごし余生を送るんだろうな」



「…………」




 なんとよくできた話だろう……と、サクラは呆れて言葉も出ない。



 難病の孫を助けるため米国屈指の外科医に依頼しようとしたが金がなくて無理。仕方がなく昔取った杵柄で世界一危険なFBI捜査官を殺そうとしたが失敗。しかしその外科医の正体がFBI捜査官の副業だった。そしたら孫娘を助かることになり米国での新しい生活も手に入れることになった……などという話が普通あるものだろうか? 飛鳥が聞けば喜んで記事にしそうな世界びっくり仰天事件だ。


 これが普通の捜査官なら、本当にテレビ局のネタになっていたかもしれないが、そこはユージの案件だ。世の中の人々がこの珍妙な奇跡の物語を知ることはない。



「ま、血の雨が降るよりマシさ。少なくとも今回は人助けだからな。結果的に」

「難しい手術なんでしょ? 失敗してまた命狙われたら今度こそ笑い話だ」

「成功率は40%らしい。だけどユージ曰く、それなら250%の力を出せば100%になるらしい」



 ……つまりは究極の根性論か……と呆れるサクラ。だがユージにとって医学は計算でも根性でもなく、信念といえるかもしれない。きっと可能性が1%あれば、もてる全能力を投じて何が何でも遣り遂げるだろう。



「でもさ。なんだかんだいって患者がドーラだったから引き受けたンでしょ? ユージは<美少女ホイホイ>だから」


 ユージに関してはどこまでも悪態をつくサクラである。


「男の子でも引き受けたと思うけど……まあ……女の子のほうが確実だし成功率が高いのは事実かもな。自己防衛のようなものだけど。もうこれは運命論なのかもしれない」


 ユージが無駄に少女に甘く縁がある事は事実だ。ユージが少女に優しいことも事実だし、それに関して言えば長年の相棒である拓も同感である。もっとも、それをつきつめればエダにいきつく。そういう意味では諸悪?の根源はエダなのかもしれない。


「ま、いいや。じゃあケーキよろしく♪」

「バナナとラズベリーだったっけ?」

「バナナとベリーミックス! ホールだぞホール!」

「分かったよ」


 拓は溜息をつく。よくよく考えれば自分が奢る理由はないのだが、こういう話の流れになってしまったのだから仕方がない。こういう貧乏くじには慣れている。サクラたちから<不幸の拓ちん>と呼ばれる由縁である。


 こうしてサクラと拓は州立病院を出た。

 

 まだ太陽は天辺にある。当分いい天気が続きそうだ。





***



 その後……<ジャングルの死神>の姿を見たものは誰もいない。

 裏社会では<死神捜査官>に手を出して殺されたという噂が流れ、それがほぼ確定情報として広まった。


 というのも、それらしい射殺事件がFBIの記録にある事。そして使い込まれたドラグノフ狙撃銃が押収された事を警察内部にいる裏社会の内通者が確認したらしい。


 老兵は散り、死神の脅威は揺るぎもしない……裏社会は<死神捜査官>の強さに、辟易と落胆の吐息を吐くしかなかった。



 カリンド家の二人がどうなったかは、また別の物語である。






黒い天使日常編 『困った刺客』5でした。



ということで仰天ハッピーエンドです。

しかも珍しく?w誰も死んでませんw


ということでタダ働きするユージ、ケーキを買わされる拓ちん、よくわからんけど利用されたサクラです。なんだかんだいい話なーだけど散々デス。


サクラはこのオチだけの登場です。主人公なのにw


ということでこれで「困った刺客」編は完結です。


さすがに最近主人公のサクラが出番がないので次はサクラたちが出てくるコメディー系になるかと思います。サクラ以上に最近JOLJUの出番がない……こいつ短編では使いづらいんですよね。逆に短編では飛鳥やユージが使いやすい。


ということで次回は何かコメディー系で。


これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。


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