黒い天使日常編 『100万ドルのシンデレラ』4
黒い天使日常編 『100万ドルのシンデレラ』4
追求編!
NYにきたサクラと飛鳥とJOLJU。
そこにエダが帰ってきて晩御飯に。その美味しさについつい肝心の話題を忘れるサクラたち。
だがついに飛鳥が話を始めた!
そして……!?
***
場所は移動して、ここはNY。時間は午後5時過ぎ……。
NYのクロベ家。サクラとJOLJUはリビングでゲームをしている時、エダが大学から帰ってきた。
「おかえりサクラ。飛鳥ちゃんも来てるんだって? 晩御飯食べていくんでしょ?」
「飛鳥の分、ある? なくてもいいけど」
ちなみに飛鳥はまだ二階の客間で爆睡中だ。
「大丈夫だよ。シチューは多めに作っているから」
エダは出かける前に電気自動圧力鍋にセットしてきたので、もう煮込みは出来上がっている。後は仕上げをするだけだ。
ということで、エダは一旦部屋に戻って部屋着に着替えると、すぐにキッチンでビーフシチューの仕上げとスパゲティーに取り掛かった。
サクラとJOLJUは顔を見合わせる。
……どうする……?
しかしまだ飛鳥は寝ている。蹴飛ばして起してもいいが、今料理をしているエダを中断させて話を聞くのはどうも気が引ける。
「あのさぁ? ユージって今日遅いの?」
「遅いよ。だから先に食べてていいって」
……なら晩御飯を食べながら聞くか。
ちょっとユージには知られたくない気がする。ユージが知れば問題がもっと大事になりそうだ。
ということで、サクラとJOLJUはそのままアクション・ゲームを続けることにした。
***
そして一時間後。飛鳥を蹴飛ばして起して、4人で和気藹々と美味しいビーフシチューとスパゲティーを満喫する。スパゲティーはアスパラと空豆とベーコンのペペロンチーノで、これだけで食べてもいいし、ビーフシチューをかけて食べてもいい。ビーフシチューは大きな牛肉がとろとろになるまで煮込まれ、野菜は別にオーブンで焼かれたものが添えられている。「わざわざ食いに帰るサクラの気持ちが分かった」と飛鳥もほくほくの笑顔で食べている。
こうして世間話をしながらあっという間に楽しい食事が終わり、4人はデザートのアイスクリームを食べた。
「それで……サクラは何か用があったんじゃないの?」
話を切り出したのはエダのほうからだった。
サクラと飛鳥とJOLJUは顔を見合わせる。
サクラと飛鳥がしばらく無言で見つめ合っていたが、これは飛鳥の持ち出した案件だということで、飛鳥が切り出すことにした。
とりあえず遠回しから。
「エダさん! <ロボティック・シャングリラ>ってゲーム、しっとる?」
「うん。知ってるよ。お父さんが仕事で関わっていたし」と、さらりと答えるエダ。だが、すぐにエダも飛鳥たちがなにを言おうとしているのか悟る。
「あ……アイリーン!」そういうとエダははにかんだ。
「そっか。もう出たんだ。うわー……ヤだ、三人とも見ちゃったンだ……」
と、耳まで真っ赤にしながら照れ笑いを浮かべるエダ。この瞬間、疑惑は確定となった。
「やっぱ本物のエダさんのほうが可愛いな、うん!」と頷く飛鳥。
「お前ね、一応年上だぞ? エダは。なんだその感想」と一応ツッコむサクラ。
「じゃあアイリーンはエダがモデルで間違いなのね?」
「うん。でも、ちょっとサンプル・モデルを演じただけだよ? モーション・キャプチャーは別の人がやっていたはずだし」
「どういう感じだったの?」
「あたしのお父さんはゲームの翻訳家をしているんだけど、お父さんのお友達の映像作家の……リドリー=パトリックさんが、カットシーンのムービーのサンプル・モデルになって欲しいって事で、カットシーンを一連ムービーで撮ったの。あたしが参加したのはその最初のモデルだけだから、ゲームのベースになるほどじゃないと思うんだけど?」
「でもアイリーンのモーション・モデルは表記なしだったJO。リドリー=パトリック氏のスタジオ名が出てたJO」とJOLJU。
「そうなんだ。あたしが演じた時、脚本とリドリーさんしかいなかったから、あたしはあくまでイメージサンプルだったと思うよ? モーション・キャプチャーのモデルだと、全身に3DCG用の機具をつけないと駄目でしょ? そんなのなかったけど?」
はて? と首を傾げるエダ。今まで知らなかったが、親がゲーム関係者だけあってエダはゲーム制作を多少知っている。
同時に顔を見合わせるサクラと飛鳥。この二人はなんとなく話の全貌が分かってきた。
エダが嘘をいうはずがない。そしてモーション・キャプチャーのモデルはしていないという。だが出来上がったムービーはエダそのものだ。
つまり……リドリー=パトリック氏はエダに惚れ込んだ。彼はサンプルという形でエダを撮影し、そこからはモーション・キャブチャーの力を借りず映像と想像を駆使してエダを再現してみせた……そういう事のようだ。
これはもう芸術なのか情熱なのか、それほど惚れ込んだのか。
「あー……コリャ、ユージ二号だな」と溜息をつくサクラ。
「いやいや、オタクの拘りやろ? オタクはすごいで、こだわりと情熱は」と頷く飛鳥。
「アイリーンがどうかしたの?」
エダには話が見えない。ゲームもしていないし問題の100万ドルの話など知らないから当然だ。
そう、この話はアイリーンの正体がエダだと突き止めることではない。
「ユージ三号、ジョン=ホーホス氏をどうするか、か」
「こうなってくるとウチとしては初代のお方の反応が恐ろしいンやけど?」
「そだね。ユージが知ったら…………二号はもう他界してるからいいとして、三号社長は生きてて絶賛ベタ惚れ中だからヤバいね。もし今社長が変死したら容疑者ユージだな」
「な……何の話をしているの? 二人共」
やはりエダは馬鹿社長の100万ドル騒動など知らないようだ。
しかしここまで来てしまったら、エダ本人に教えないわけにもいかない。
「仕方がない。全部教えよう」
サクラは許可した。一応これで家族の同意が出たということで、飛鳥は
「ちょっと待っててや! ウチ、ノートPC持って来る!」と言って客間に取りに行った。
こうしてエダも、一連の騒動と、問題のアイリーンの完成ムービーを見ることになった。
そして……当然の展開として、仰天した。
黒い天使日常編 『100万ドルのシンデレラ』4でした。
ということでエダ本人も知っていました。
とはいえまさか100万ドルなんて大金が懸賞でかかっているなんて露知らず……
はてさて、この騒動はどう決着するのか?
多分次回完結です。
前回も書きましたが、半分くらいは「AL」外伝です。
「AL」も別サイトですが書き始めたので興味のある肩はドウゾ。
オチはサクラらしいというか「黒い天使」らしいオチです。
ということで次回もお楽しみに。
これからも「黒い天使日常編」を宜しくお願いします。




