黒い天使日常編 『100万ドルのシンデレラ』1
黒い天使日常編 『100万ドルのシンデレラ』1
ある日、ゲーム会社の社長がとんでもない事を言い出した。
自社のゲームの少女に恋!?
その少女のモデルに100万ドルの賞金!?
この話にさっそく食いついた飛鳥だったが、その動画を見て顔色をかえる。
はたしてアイリーンのモデルは?
黒い天使短編「100万ドルのシンデレラ」1
***
「私はジョン=ホーホス。知っての通りゲーム会社ゴールドボムのCEOだ。今回<ロボティック・シャングリラ>DLCで主人公ホークの空白の2年間のエピソードが追加されたよね。中々クールな出来で私も非常に満足している。そして今日は<ロボティック・シャングリラ>について重要な発表をしようと思う」
ここはサンフランシスコにある彼のオフィスだ。カメラはそこに入っている。
「今回のDLCで登場したゲスト・ヒロイン、アイリーン=ローンについて語りたい。ゲームをやった皆も彼女の強くて清楚で愛らしい少女の魅力を知ってくれたと思う。彼女……アイリーンは、セクシーじゃない。まだ10代半ばの若々しい天使のような非常にチャーミングで愛らしい少女だ。私は彼女アイリーンについてはただのキャラだと思っていた。だが出来上がったゲーム・ムービーを見てみんなは度肝を抜かれただろう、私もこんなチャーミングで美しく少女に驚いた。まさに彼女は理想郷のバンビだ。これほど完璧な愛情溢れる美少女がいるなんて……衝撃だったよ。彼女を開発したのはリドリー=パトリック。彼はアイリーンを世に生み出した。残念な事に彼は去年亡くなった。非常に惜しい人材だった」
ジョンは涙を拭う仕草をする。涙は流れていなかったが。
「アイリーンはプログラミングされたCGの少女だ。だがムービーカット・シーンは違う。リドリーは生前私に言った。『アイリーンは実在するんだよジョン』とね。アイリーンにはモデルがいたんだ。キャプチャーだけでなく、仕草、言葉、そして造形も、全てモデルの少女をリドリーなりにカスタムしたに過ぎない。カスタム・アップではなく再現したとリドリーは言っていた。だからあのアイリーンのムービー・シーンで見せるあどけない魅力は全部モデルがいたんだ。それを聞いて私は彼の情熱と芸術の高さを再認識した。そして私もアイリーンに魅了された。そう、多くのファン同様にね。私は思う。彼女こそ理想の美少女なのだと。私は長年ゲーム開発に関わり多くの魅力的なキャラクターを生んできたが、その究極こそアイリーンだったのだと痛感した」
「まるで恋をしているようですね、CEOジョン」
「全くだ。これは恋でも初恋といえるかもしれない。相手は10代の少女だ。性的な意味合いは全くない。私は開発者として、その完成度の高さと美しさに心から魅了されただけだ。……私は自社のメンバーにリドリーの少女について尋ねたが、彼は外注職員で、アイリーンについての情報は本社にも秘密だった。そりゃそうさ。私たちはこのアイリーンはリドリーの創造の産物でプログラムで組み上げられたものだと思っていた。モデルがいるなんて知らなかったし彼は言わなかった。まさに秘密の楽園の少女だ」
***
「……何を力説しとるんや? ようは可愛い娘自慢みたいなもんやん」
ここは東京練馬、飛鳥の家。そして飛鳥の部屋で時間は夜だ。
飛鳥はPCでだらだらと探偵ネタを執筆しながらネット内にある動画ニュースを流し見していた。そこで見つけたのがこのゴールドボム会社の特別報道動画だ。日本語字幕も出ているから飛鳥も見れる。
だが次の一言を聞いた飛鳥の指は止まる。
「このアイリーンに会いたい。会わせてくれれば私は100万ドルを支払おう」
「おう! マジか! 金持ちすごいなぁ~! 100万ドルも出せばアメリカ中の美少女が立候補するんやないか?」
「私は本気だ。繰り返すが彼女をモノにしたいとか売り出したいとかそういった邪まな欲望は一切ない。これは私の夢が、ついに成功したのか、それとも未だゲームCGは現実の少女を超えられないか……その興味と、純粋な感謝なのだ。だからこの放送をアイリーン、君が見ていたら我が社に連絡してくれ。その感謝が100万ドルなんだ。今回は特別に、アイリーンのムービー・シーンを抜粋した特別ムービーを制作した。それを見て欲しい」
「お? ゲーム買え、やないのか? ということはウチが見つけたら100万ドルか?」
ちょっと本気になる飛鳥。こういう話は大好きだ。お金もそうだが中々面白そうではないか。まぁどうせ米国だから飛鳥なんか手も足も出ないが。
「これが<ロボティック・シャングリラ>アイリーン=ローンだ」
「ま……とかいうて、これって一種のネタ投下、炎上宣伝ってトコやな! 何が100万ドルやねん」
こうやって告知すれば否が応でも米国のマスコミやゲーム雑誌は取り上げる。追加DLCの販売宣伝のネタとしてはややあざといが効果はあるだろう。これを馬鹿正直に捉えるほど飛鳥も馬鹿ではない。が、ネタとしては面白い。
流れ始めたアイリーンは、確かに美少女だ。腰まである栗色の髪、そしてアイスブルーの瞳。スラリとした体型で出来すぎたほど整いすぎている。飛鳥の目にはCG美少女にしか見えない。
が……アイリーンがプレーヤーに向けて語りかけるムービーを見たとき、その人間らしい仕草や癖を見つけることが出来た。成程、まるで本物の少女のようだ。
「…………」
アイリーンのムービーは1分程度だ。
飛鳥は考え込んだ。
落ち着くため、一度一階に降りて冷蔵庫からコーラを取り出し一気に飲んで、それから再び自室に戻ってネット上で「アイリーン=ローン 動画」を検索してみた。ゲームファンまの間でもアイリーンは話題のヒロインで、関係動画や抜粋動画は沢山上がっていた。やっぱり皆彼女の清純で芯が強く優しいキャラと抜群の愛らしい外見に絶賛を贈っている。
それらを観る事10分……飛鳥は困り果てた。
このアイリーンの正体が分かった気がする。しかし本当だろうか?
飛鳥は携帯電話を取った。
「あ、ウチやけど。お前、日本に来い。ちょっと用があるねん」
『は?? 急ぎ?』
「急ぐから電話しとるんやないか」
相手はサクラだった。今日本が午後21時過ぎだから、NYは午前11時、昼前だ。
サクラは今NYの自宅にいる。好きな米国テレビドラマの連続放送があってここ数日はNYにいるのだ。
『急ぎなら二時間後くらいに行くけど? 昼ご飯食べたら』
「いや、この後ウチは寝るっちゅーねん! 明日の夕方日本に来てくれたらええど!」
『用件は何よ?』
「来たらいうわ。まぁ、面白い話や」
『じゃあ15時間後くらいね。……何故にいつもあたしが日本の時差にあわせないかんのカイ』
ブツブツ文句を言いながらサクラは電話を切った。
さて、これで終わりではない。飛鳥はさっそくアイリーンの動画が画像を集めはじめた。サクラが来た時確認させるためだ。
1時間ほどその作業に費やし、PCの電源を落そうとモニターを見つめる。そこにはアイリーンが嬉しそうに微笑む笑顔の画像があった。
「やっぱ……エダさん……やんな?」
髪の色や瞳の色は違うが、飛鳥にはこれがエダに見えて仕方がなかった。
こうしてこの事件は、始まった。
黒い天使日常編 『100万ドルのシンデレラ』1でした。
アイリーンは誰だ!?
と……始まったこの短編ですが、さっそく正体がバレてますw
短編シリーズですからね。
しかし本当にエダなのか!? サクラと飛鳥とJOLJUはその謎に迫ります!
このシリーズも全5話か6話くらいです。
今回なんと表紙付き!
ちなみに表紙のアイリーンはエダのイラストの色替えバージョンだったりするのでまんまエダですねw
ということで軽い感じで楽しんでもらえたらと思います。
これからも「黒い天使短編・日常編」を宜しくお願いします。




