表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
64/206

黒い天使日常編 『虫歯の真相!』2END

黒い天使日常編 『虫歯の真相!』2END



喚く子サクラ。

結局ユージがやることになるがここでとんでもない事実が!!


そしてブーたれるサクラ。

後日飛鳥の家で、ようやく事件の全貌?が明らかになるのであった。


 ついにサクラは叫んだ。

「もうどうでもいい! これ治して! JOLJU以外で!!」

「仕方がないな」


 ユージは舌打ちすると、タブレットをテーブルに置いて立ち上がった。


「ロキソニン取ってくる。後、局部麻酔してやるからしばらく我慢しろ」

「注射はヤなんだけどぉ~もうこの際我慢するぅ!」


 ちなみにサクラは注射が大嫌いだ。だが今回ばかりは歯痛のほうが堪えるらしい。


 ユージは自宅に大量の医薬品や医療器具を置いている。尚、違法だが気にしていない。


 ロキソニンをなんとか飲み、大嫌いな局部麻酔の注射を打たれ子供のように泣くサクラ。これはこれでレアな姿だ。そして麻酔は即効性で、10分も立たず痛みは消えた。口の感覚も消えたが。


「仕方がない、俺が処置してやる」

 やれやれ、とユージは溜息をつきながら携帯電話を取り、「娘急病のため午後から行きます」とメールを打った。そして今度は病院のほうに電話を入れる。

「ペンチとかヤだよ!」

「安心しろ。だからちゃんと電話している。病院の歯科部屋の空きを確認しなきゃできんだろ。道具の用意もしてもらわないとな」

「よかったね、サクラ。ユージに任せたら大丈夫だよ」

「…………」

 まぁ、結局こうなったか……でも、これで治るのなら文句は言わない。


 州立病院のほうもすぐに調整が終わり、午前10時20分、病院に行く事が決まった。執刀医はユージ。ユージは歯科医師免許はないから、口内の外科手術という建前で話を通した。ユージはFBIでも特別だが州立病院のほうでも特別で色々無茶が通せる。何せ日頃、ランク無視の日当手当で救命外科医として働いてもらっている。指名であれば一度で20万ドルという最高ランクのフリーの外科医であるユージが日当ですんでいるのだから病院側も悪くは扱わない。外科だけでなく内科、産科、整形といったジャンルでもトップクラスの腕をユージは持っている、医学界の超人でもある。



 これで朝の騒ぎも一段落した。



 が……ユージはラックトップを取り出し、何かを調べ始めた。



「何調べてるんだJO?」

 何気に聞くJOLJU。まさか、この後とんでもない一言が出るとは思わなかった。


「歯の抜き方。あと器具の使い方もだ。ちゃんとした器具を使ったことがない。強引に外科道具で抜いた事はあるが」



「……えっ……」



 家族全員がユージを見た。



 ユージは顔色変えず、平然と言う。


「だから言ってるだろ、俺は歯科医師免許はない、と。座学と実戦でなんとなくやったことがあるだけだ」


 実戦はある。闇医者時代に貧乏な患者の治療をしたことがある。もっとも、基本外科の延長で抜いたり縫合したりした事があるという経験だ。そもそも違法な闇医者時代だから何だって許されていただけで、正しい医師法ではやってはいけない行為だ。


 その言葉を聞き、サクラもエダもJOLJUも固まった。つまり厳密にいえばユージだって素人ではないか。


 だがその点、ユージは肝が座っているのか恐れを知らないのか、まったく動じていない。一体この度胸……余裕はどこからくるのか。


「心配するな。虫歯で抜けやすくはなっているはずだ。ちょっと資料読めばできる。抜歯を失敗して死んだ人間はいないし、それに失敗したら、今度は美容整形外科だから俺の専門だ。どっちにしても失敗はない」


「…………」


「ユージ……あたしが出すから、サクラをグリッサム先生のところに連れて行くよ?」

と、常識かつ良識からエダはそう言ったが、ユージは「俺がやる」と譲らなかった。どうやら外科医として、歯科手術に興味が出てきたようだ。もうこうなると治療のためというより好奇心という名の人体実験というほうが正しい。



 結局……無事、歯が抜かれるまで……サクラは生きた心地はしなかった。





 



 それから三日後……。


 サクラとJOLJUの姿は東京練馬の飛鳥の家にあった。


「中々面白そうな体験やなぁ~」

 話を聞いた飛鳥は楽しそうに頷いた。


 時間は夕食後。風禅が作った甘い甘酒を啜りながら、みかんや煎餅を食べている。


「何が楽しいのよ。あたしがユージのドSの被害にあっただけじゃん」

 ぶすーっと不機嫌丸出しで甘酒を飲むサクラ。ついでにその横でみかんを食べているJOLJU。

 飛鳥もみかんに手を伸ばしながらサクラの様子を見ている。


「でも大丈夫そうやん」

「無事、サクラちゃんの虫歯は消滅したもん」


 そこはさすが天才外科医ユージ=クロベ。初めて使う歯科器具をあっさり使いこなし、ものの10分で処置を終えてしまった。恐怖しまくったサクラが拍子抜けするほどあっけなく終わったのだ。そりゃあそうだ。もう神経まで痛むのなら歯の中心まで蝕まれていて歯自体脆くなっている。麻酔学は外科も一緒だし薬学は完璧だし神経の抜き方は知っている。歯を整形しろと言われれば困っただろうが、抜くだけだったら簡単なのだ。


「だから言ったJO。ペンチでおっけーだったんだJO」

 モコモコとみかんを頬張りながらあっけらかんと言うJOLJU。結果をいえばそれでも大丈夫だったかもしれない。


 とりあえず無事治してもらったが、なんか感謝する気になれないし、色々釈然としないので、サクラは飛鳥の家に逃げてきたというわけである。JOLJUはおまけ。


 だが問題はまだ残っている。


「問題は誰がサクラちゃんを感染させたかよ! 飛鳥! アンタだろ!」

「なんでやねん。お前にキスなんかするかボケ」

「回し飲みでもうつるンだってさ」

「それくらいはあったかもしれへんケド、残念ながらウチも虫歯ないねん!」

「なにぃ!? アンタもないの!?」

「乳歯がきれいに抜けなくて歯医者で抜いてもらった事はあるけど、虫歯はないで!」


 イーッと歯を見せる飛鳥。確かに虫歯の跡はない。まさかこんなところにも健康優良児がいたとは! 飛鳥も歯磨きに対して神経質なほうではないが、それでも朝夜二回はしっかり磨くし水分をよく取るので口の中は清潔だ。しかし同じ虫歯なしでも、エダは美容的なイメージがあるのに飛鳥だと健康児としか感じないのはどうしてだろうか?


 これで容疑者はまた一人きえた。残るのはセシルとマリーだが、この二人は一緒にいる時間は限られている。仲はいいが何度も飲み物を回し飲みしたようなことがあったかしらん。考えても分からない。


 あまりにサクラがしつこいので、横にいたJOLJUが愛用のノートPC『叡智の幼稚園児』を使って調べ始めた。ネットなどを調べているのではない。サクラの過去を映像で見て探っているのだ。常に録画していた……のではなく、純粋に時間の遡ってサクラの記憶を映像にしているのだ。元神様のノートPC『叡智の幼稚園児』はスーパーアイテムで何だってできる。30秒後、ついにその問題の場面を見つけた。



「あ、分かったJO。犯人、エダだJO」

「は?」

「ホームパーティーの時、エダがワインで酔っ払って、サクラにキスしてる」

「ナント」


 エダは欠点がないように思えるが、お酒に弱いのはエダの弱点だ。飲めないのではなくすぐ酔っ払うのだ。まだ未成年で公にはお酒は飲めないが、大学生だし家で飲む分は米国社会では許されている。そして、エダはビールは苦手だが美味しいワインは好きで、ホームパーティーで身内しかいない時は、ユージや両親の許しが出たとき、たまに飲む。


「うーん。そう言われたらそういう事があったかもしんない」


 エダは酔っ払うと甘えん坊になり、サクラやユージにじゃれて甘えだす。サクラもエダにだけは嫌がることなくじゃれあう。ちなみにこっそりサクラもワインを飲んだりするが、サクラはワインくらいでは酔っ払わない。


「エダとは思わなかった。そっか……エダか」


 エダだったら仕方がない、とサクラは納得した。


 が、飛鳥が「まてや?」と顔を上げる。


「エダさん、虫歯ないんやろ? なんで虫歯になるねん」

「あ、ホントだねぇ」

「そりゃあなるJO。エダだって口内にはちゃんと虫歯菌あるんだし。単にしっかりケアしてるから虫歯にならないだけだし、それにユージは虫歯あるJO。確か」

「なんでユージの虫歯が関係して…………あ、そうか。そういうことか」


 二人は恋人同士。誰に遠慮することなくキスはしている。ユージの虫歯菌がエダに移り、そしてそれがサクラに回ってきて虫歯になったという事だ。


「って! じゃあやっぱりユージが元凶じゃんか!! 悪いのは全部ユージじゃん!」

 抗議の声を上げるサクラ。いや、世の中虫歯菌が全くない人間などいない。何かしらの方法で入り込むものだ。虫歯が発生したのは、やはり怠けたせいだろう。まぁ、ある意味これでサクラも人並みになったというところだろうか。


 とりあえず、なんやかんやとあったが、この騒動も解決である。


 解決はしたが、全然面白くないサクラ。変に気疲れしたし、歯が抜けた口の中の違和感は虫歯初体験のサクラにとっては違和感だらけだ。ということで、不貞腐れて寝っ転がるサクラ。今は甘酒もみかんも煎餅も食べたい気分ではない。


「なんや、いらんのか? じゃあ甘酒もらうでー」

「いーよ、あげるあげる。勝手に飲めばぁ~」

「わーい」


 ウキウキとサクラが飲み残している甘酒を啜る飛鳥。ウム、甘酒は冷えても旨いがやっぱり温かいのが一番だ。丁度熱くも温くもなく絶妙の温度で、飛鳥は一気に甘酒を飲み干した。



 が……。



「あ……」と声を上げるサクラ。

「なんや? もう飲み干したからないで?」

「いや、そうじゃないケド……飛鳥よ、これでお前も感染者だな」

「ふむ? …………ふむっ!?」


 そう、この甘酒はサクラの飲み残し。虫歯になりたて、虫歯菌いっぱいのサクラの……。


「どおぉぉっっ!! ウチも虫歯菌に感染してもうたぁ~!!」

 と頭を抱える飛鳥。それを見て「フッ」と笑うサクラ。


 今更感染など気にするような事ではない。別に潔癖症でもなんでもない飛鳥は、サクラだけでなく学校の友達でも気にせず貰い食いとかしているし、幼い頃ちゃんと愛されていれば親からうつるものだから関係ない。完全防菌の時期があったサクラだから問題だったわけで一般人はそんなこと気にすることはない。


 ないのだが、色々不愉快なことが続いたサクラは、その事は言わず「感染おめでとー」と飛鳥をからかい、少しだけ溜飲を下げるのだった。



 尚……騙された飛鳥はその後しばらく入念に歯磨きに気をつけたため、虫歯が発症することはなかった。そしてサクラも、他の歯に虫歯が広がることはなかった。



 こうして今日も平和に過ぎていく。





黒い天使日常編 『虫歯の真相!』2でした。



皆さん虫歯には気をつけましょうw


ということでこの話は読みやすい前・後編の短編でした。話も日常ドタバタ系です。

この日常系短編だけ読むとサクラはただのガキですね。死神島のクールで賢いサクラはどこへやら。まぁ日常はこんなんです。


次は射撃話にするか、ドヤドヤ系にするか、サクラと飛鳥が続いたのでユージメインの短編にするか。

とりあえずユージの話以外は大体サクラと飛鳥のドタバタです。


こんなカンジで当分日常系を続けまする


これからも「黒い天使」を宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] サクラちゃんのドタバタ虫歯騒ぎ みんなであーでもないこーでもないと言い合ったり JOLJUがペンチ持ってこようとしたり ユージがちゃんとした器具ではなくて強引に 抜いたって聞いた時の3人の絶…
2022/03/04 20:32 クレマチス
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ