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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使 中編 災厄者」シリーズ
57/206

「黒い天使・災厄者 vol 40」END

「黒い天使・災厄者 vol 40」


全米は事件で沸き立つ。

捜査の後始末に追われるFBI。

そしてユージに下されたペナルティー。


そして、物語は……。

17 エピローグ

-------------------------------



 ジェームズ=ウェラー上院議員逮捕の電撃的ニュースから一週間が経過した。

 当初逮捕理由は伏せられていたが、関係して他にも政治家や著名人、大物資産家がFBIに摘発されると、マスコミや世間の関心高まり、FBI本部は会見を開き彼らが秘密の売春倶楽部に関係していた事と人身売買を行っていた事、そしてそれに連座していくつかの殺人にも関与している事を発表して、世間に衝撃を与えた。


 世間が事件に沸きあがっている最中……ユージはFBI・NY支局長コール=スタントンに呼び出された。



 


 呼び出された支局長室で、ユージは20分以上コールと沈黙に付き合う羽目になった。

コールは黙々とユージが出した捜査報告書の束を読み直している。その間、ユージは黙って座っていた。これはあまりよくない傾向だ。コールははっきりとした性格で、報告書に問題がある時はユージが椅子に座る前に小言を言う。


 読み終わったコールは、さらに5分間、黙った。ますますよくない状況だ。

 堪らずユージのほうから喋り出した。


「俺の怪我のほうはほぼ治りました。まぁ自分で治したので労災請求はしないことにしましたが」

「…………」

 コールは一瞥しただけで黙ったままだ。

「本部のマック捜査官から散々文句を言われました。余計な事をしすぎだ、と。秘密倶楽部の内偵捜査は本部でかなり進めていたようで……それを一気に俺がやってしまったので、本部は組織犯罪課だけでなく凶悪犯罪課まで動員して当たっているそうです。そちらとの調整は多分ミスなくこなしたと思いますが……ま、やりすぎで本部は相当怒っていますから支局長にはご迷惑をおかけしました」

「…………」

 またコールは一瞥した。が、何も言わない。


 今回の事件で一番迷惑を被ったのは、バルガス議員を内々に捜査していた本部の組織犯罪課のほうで、ユージの急転直下のようなウェラーの逮捕とそこから出た情報に、有り難がるよりむしろ怒りを覚えた。嫉妬もあった。彼らにすれば積み重ねてきた内定が全部無駄になっただけでなく、功績は全部NY支局が掻っ攫っていった点が面白くない。だが得られた情報は大きく、そして事件捜査がユージによって動かされた以上知らん顔もできず、本部は捜査官を総動員して事件の対応に追われていた。


 コールはようやく動いた。が、それは冷えてしまったコーヒーを口に運んだだけだった。

 さすがにユージも閉口する。どうもコールは相当怒っているに違いない。本部との調整や記者会見、検事への説明と、煩わしい仕事が鬼のようにコールのスケジュールを埋め、この一週間コールも相当忙しかった。ユージとまともに落ち着いて話をするのは一週間ぶりであることから察すれば、それがいかに大変であったか分かる。


「今回、随分<死体>を作ってしまいました。正当であったことは証明できますが、その点支局長にはご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「……そうだな」

 ようやく、コールは口を開いたが、相槌を打っただけだ。

 だがキッカケになったのだろう。コールは冷えたコールを飲み干し、空になったカップを置くと、ようやく体をユージのほうに向けた。

「何か他に言いたいことはないか?」

「ありません。自分に出来る最善の結果であったと思います」

「それがこの捜査報告書か? これのどこが捜査だ、馬鹿者」


 ……小言が始まったかな……ユージは長い説教を覚悟した。

 だが予想外に、コールは説教などしなかった。束になっている報告書をおくと、眼鏡を外し懐から目薬を取り出し注し、深く椅子に座りなおしユージのほうに体を向けた。


「この報告書は受理する」

「…………」

「後はこっちでやる」

「……それだけですか」ちょっと拍子抜けした感がなくもない。もっと怒られるかと思っていた。そのユージの無言の言葉は顔に出ていたのだろう。コールは不機嫌そうに眉を顰めた。


「小言というのはな、クロベ。言って聞く奴に言うのだ。言っても聞かん奴にぶつけるのは単なる愚痴だ。私は部下に愚痴るほど落ちぶれておらん」

「……そうですか……」

 成程、よくユージを分かっている。

「結果は出した。それは認める。だが捜査違反や独断捜査はいかん。バッチと拳銃を出せ」

「……はい……」

 ユージは頷くと、DEとUSPコンパクト、FBIバッチをそっとコールのデスクの上に置いた。コールはそれを一瞥する。


「停職2週間だ。その間銃とバッチを預かる」

「クビじゃなくて?」


 その一言に、コールは初めて怒気を発した。


「CIAもNSAもDEAもシークレットサービスもNYPDも、どこもお前を欲しがらん!! 容疑者を片っ端から殺す捜査官がどこにいる! 馬鹿者!! かといって一般社会に放り出せばそこで事件を起こすだろう!!」


 ユージくらいキャリアがあればどの捜査機関でも入れるし、その腕と医学知識、裏世界の知識を買われ、CIAのような諜報機関から市警察までよく出向を乞われるが、それはFBIという鎖でつながれたユージであって、自由になったユージを欲しいと思う組織はない。どこもユージを飼いきれないのだ。


 ……だから、私が使うしかないだろう、馬鹿者!! とコールは無言だがそう言っていた。ユージも、コール以外自分を扱える上司はいないだろう……と思っている。無論お互いその事は口に出さない。


 ユージは苦笑いして、席を立った。そして退室しようとした時、コールが呼び止めた。

 コールは、黙ってDEを掴みユージのほうに向けた。


「これはお前の私物だ。登録してある45口径を後でライアン課長に提出してから帰れ。2週間は顔も見たくない」

「…………」


 登録してある45口径というのは、ユージがHRTで使用したりDEが使えない時に携帯するカスタムのコルト・GCNMの事だ。しかしユージは普段使う銃としてはちゃんと一番目にDE44を登録してある。


 その時、ユージはコールの言葉の意味を完全に悟った。

 ユージは黙ってDEを受け取り「すぐに提出します」と答えた。

「しばらくNYに帰ってこなくていいぞ」

「そのつもりです。カナダにでも行こうかと思っています。療養がてらに」

「そういうと思って、いい場所を探しておいた。後でメールを確認しろ。いいか、クロベ。あくまでこれは個人的なメールだ」


 そういうとコールは深く椅子に座りなおし、電話を取って秘書にコーヒーを一杯持ってくるよう告げた。ユージとの用件はこれで終わったという事だ。ユージはその空気を悟り、静かに会釈し、退室した。

 






「停職2週間か。それは迷惑をかけてしまったね、ミスター・クロベ」

中華街の屋台外の一角。ユージとアデウス=ジョンソンは粗末な椅子に座り、テイクアウトの春巻きを食べていた。マフィアの首領がここにいて昼食を取っているようには見えないし、取り巻きもいない。周りの一般市民はこの身形のいい初老男がマフィアだとは誰も気付いていないだろう。


ユージはテイクアウトのチャーハンを食べていた。


「失職2週間の対価は我々が用意させてもらおう」

 ユージは単純計算だと週給4000ドルだから、2週間で8000ドルになる。

「無用だ。別に金に困っているわけじゃない」

「それでは我々の顔が立たないのだよ、ミスター・クロベ。君は見事<狂犬>を始末してくれた。見事な手腕だ」


 <狂犬>を殺害するシーンはサクラが使っていたラックトップが録画していて、ユージはそのデーターをこっそりマフィア側に渡した。彼らはそれを見てユージが依頼を完遂させた事を確認した。さらにユージの手腕に感嘆したのは、<狂犬>の死体を火災の炎で焼き、身元不明にしてしまった事だ。これは彼らが警察関係の情報提供者から知らされた。裏世界としては、満足いく配慮と結末だ。ロシア・マフィアは今回の事件で人身売買の件で追及されることになるが、情報が一般公開されるより早くユージがデーターを引き渡してくれたので、肝心の人物はロシア本国に帰る事が出来たし、適当な人身御供はすでに手配されていた。


「ロシア人たちも感謝している。まぁ、内心でどう思っているかわからんがね。それでも当分君に近づこうという馬鹿者は裏社会にはいないだろう。ゆっくり休養してくれたまえ」


 ジョンソンの言葉には色々な意味がある。ひとつは今回の件でユージに報復行動は起こさない、と裏社会が決めたという事だ。ロシア・マフィアに対し他のマフィアが圧力をかけ断念させた。今ユージを狙えば、本格的に組織潰しに動いているFBI本部の思う壺で、わざわざ自分が関係者である、と名乗り出るようなものだ。


 別の理由として……この理由が一番大きい理由だが……もうユージを単純な戦闘力で上回る事はできない、クロベ・ファミリーに手を出せば、ユージは<狂犬>以上の災禍を裏社会にもたらす……と、改めて裏社会が痛感した事だ。ユージを敵に回す事は、砂漠の真ん中で、裸で人食い大狼と対峙するようなものだ。裏社会はその事を再認識した。


 むろん、好意的な意味もある。自分たちの依頼に身を粉にして働き、期待通りの働きと結果を出したユージに対して裏社会は一応感謝と好意を見せている。そのため、天敵であるユージの休息が穏やかに過ごせるよう、裏社会は活動をしばらく自粛する……ジョンソンの言葉にはそういう意味も含まれていた。


 ユージもマフィア相手に多弁になる男ではない。「そうか」と答えただけだ。


「今回みたいな頼みごとは二度とないでほしい」

「我々もそうなるよう願っているよ」

「簡単にいうぜ」

「2週間どうするのかね? いや、これは裏社会の意向ではなく私個人の興味だが。NYでじっと謹慎するような人間ではないだろう? 病院に篭るとも思えんが」

「旅行の予定だ」

「なら好きな場所を言いたまえ。せめて疲労を労うに足るホテルくらいは私が手配しよう。裏ルートではなく、ちゃんと表のルートで」

「生憎、そういうリゾートに行く予定じゃない。家族サービスとちょっとした息抜きをするだけだ。秘密の保養所でな。場所は知られたくない」

「何か君の働きに礼をする方法はないのかね? これでは我々の顔が立たない。私たちの立場も考えてくれないか」

「働き? 違うな」そういうユージは残ったチャーハンを掻きこみ、コーラで流し込んだ。

「俺は今回また、裏社会の秘密を知った。アンタたちを逮捕しようと思えば逮捕できる材料はいくつもある。だが逮捕しない。切札として使う手が増えた。アンタたちのためにやったんじゃないさ」

「だが君はその切札を使う事はない。我々は、君をよく知っているからね」

「…………」


 さすがは海千山千のマフィアの首領だ。ユージの脅しなど気にも留めなかった。脅されなくても、力関係は完璧に把握している。あの上院議員とは役者が違う。ユージは苦笑した。


 ユージは食べ終わったチャーハンの箱を丁寧に折り、近くにあるゴミ箱に投げた。


「そうだ。1つだけ報酬を要求しよう。これでアンタの顔も立つ」

「何でも言ってくれ」

「<ボローニェ>のスペシャル・チーズケーキ、1ホール。電話で今すぐ予約を入れて買ってくれ。これから店に取りに行く」

「分かった。手配しよう」


 そういうとユージは歩き出した。ジョンソンは苦笑し、携帯電話に手を伸ばした。








 カナダ ある地方……。

 大きすぎない湖がある長閑な湖岸で、三人が並んで釣り糸を垂らしていた。サクラ、JOLJU、エダの三人だ。三人とも涼しい格好で帽子を被り、水面を泳いでいるニジマスを狙い竿を振っている。


「ぎゃーっ!! またラインが切れたぁぁぁーーっ! 逃げられたぁぁぁー!!」


 サクラはガックリと肩を落とす。そして黙々とフライのラインを回収……また毛鉤を付け直す。


「サクラのライン、細いんじゃない?」とエダ。エダのほうもヒットしたようで、フライロッドの先が小気味よく震えている。エダは丁寧にラインを手繰り、見事30センチのニジマスを釣り上げた。

「合わせが強すぎるんじゃないかな? フライ釣りは焦っちゃ駄目なんだよ? 落ち着いて、ゆっくり上げてこないと」

「理屈では分かってるンだけどネ」

 サクラは毛鉤を結びなおし、フライロッドを振り始めた。フライは竿を振りながら、目的のポイントまで毛鉤を投げ誘って釣る釣り方だ。疑似餌釣りのため、ラインはできれば細ければ細いほどいい。


「隣であんなに釣ってるの見せられると、腹立つンだよネ」

「JO―――っ! まったヒットだJO♪」


 サクラの左横5mのところでJOLJUが威勢よく竿を立てている。ギーッギーッとドラグを唸らせながら大きなニジマスを引き寄せていた。今度のも40センチはありそうな大物だ。


「身長50センチのうーぱーるーぱー犬モドキがどうしてそんなに簡単に大物が釣れるんだ! お前、なんかイカサマしてるだろっ!」

「さすがはカナダだJO~♪ マスも引きが違うJO」

「そのまま湖に引きづり込まれてしまえ!」

「残念だけど、もう釣り上げちゃったJO♪」


 自分の身長の2倍はある大きな網を器用に使ってニジマスを救い上げるJOLJU。魚は45センチくらいだろうか、ビチビチと元気よく跳ねている。JOLJUはこれまた器用に陸まで持ち上げ、スプーンの針を外す。JOLJUだけがルアー釣りだった。竿は1mと短いが市販品である。サクラとエダがフライ釣りだ。


「オイラ10匹、サクラ2匹、エダ5匹……サクラがドベだJO♪」

「煩いわいっ」

「まぁまぁ……釣りは楽しむのが一番なんだよ? のんびり楽しもうよ♪」

 とエダは宥めるが、一番釣れていないサクラは納得するはずがなかった。そしてそのエダも釣れていないサクラの右横でまたもニジマスをヒット。丁寧に釣り上げる。


「エダはどこで釣り方学んだの?」

「ん? 東京だよ」

「東京でフライ釣り……管理釣堀か。あーーー、一応サクラちゃんのほうが本場仕込みなんだけど……」


 サクラは幼い頃、父とオレゴンの湖でこのフライ釣りを学んだ、自称<本場仕込み>だ。……フライ釣りは元々イギリスの釣りだが……アメリカのマス釣りではフライ釣りはメジャーな釣り方だ。クロベ家養女になって世界をぶらぶらするようになってからも時々釣りにはいくが、ここまで一人負けするとは思っていなかった。魚がいないわけではない。肉眼でもいくつもの群れが泳いでいるのが見える。東京の管理釣堀でちょこっと釣りをやったエダでもこんなに釣れているのだから、自分はもっと釣れてもいいと思うのだが……。


 と、サクラが一人不貞腐れている間に、またJOLJUの竿にヒット、JOLJUが上機嫌でリールを巻き始める。その直後サクラのマーカーに反応があり、今度こそ! と慎重にフライラインを引き寄せ、魚を寄せるが…………。


「やったJO! 今度はブルックトラウトだJO~ 40センチはあるJO~」

「やったねJOLJU。それは美味しいホイル焼きになるよ♪」とエダ。

「あたしは………………ブルーギル…………」とアンニュイな瞳で魚を見つめるサクラ。

 サクラが持ち上げたリーダーの下、ピチピチと12センチのブルーギルが跳ねていた。北米大陸の湖だから、ブルーギルはどこにだっている。無論、これは食べない。

「むがぁーーーーっ!!」針から外したブルーギルを渾身、力いっぱい湖に放り投げるサクラ。八つ当たりは良くない。

 かと思うと、いざ次の釣りに挑もうとしていたJOLJUからルアーを奪い取った。

「サクラちゃんがルアーをやる! アンタがフライ釣りしろ! ほれ、交換っ!」

 そう言って有無を言わさずJOLJUから奪うように取替え、釣りはじめるサクラ。仕方なく黙ってサクラのフライ竿を拾い、「オイラの腕の長さじゃフライは大変だJO」と言いながら竿を振るJOLJU。


 10分後…………ニジマスを釣り上げたのは、JOLJUだった。


「やってられるかぁーっ!」


 サクラの叫びは、人影のない平和な湖や森に虚しく木霊した。


 二時間後……。


 三人は釣りを止め、ロッジに向かって並んで森の中を歩いていた。


「散々だった……」と肩を落とし歩くサクラ。

「大丈夫だよ。サクラだって8匹釣ったじゃん。十分だよ」

「……17匹釣ったエダはいいじゃん」

「あははは……」

「そしてオイラは32匹だJO」

 エッヘンと胸を張るJOLJU。JOLJUの完勝である。釣りはJOLJUの趣味の一つ、釣り歴は600年である。一年二年のサクラやエダが敵うモノではない。理屈ではサクラもその事を分かっているが、それでも負けるのは面白くない。


「よし。明日、ヘラジカ狩りでリベンジだ」

「射撃じゃユージやエダには叶わないと思うJO?」

「あたしは、そんなにハンティングはしないけど……」と苦笑するエダ。

「ところで……こんなにニジマス釣ってどうすんの? 今夜バーベキューにしても、あたしたちだけじゃ食べきれないケド? 釣ったのみんなデカいし」


 合計57匹の良型のマスである。魚好きのJOLJUでも5匹も食べれば飽きるだろう。


「半分は明日燻製にしようと思うの。そうしたら後日楽しめるでしょ? サクラのオヤツにもなるし、ユージや拓さんのお酒のおつまみにもなるし」

「昔よく燻製一緒に作ったものだJO」

「そうだね。懐かしい」

「それはそれで美味しそうだけど。でも朝ユージとJOLJUが釣ったサーモンはどーすんの?」


 そう。朝はユージとJOLJUが川のほうでサーモン釣りをしてきたのだ。コテージの大型冷蔵庫には釣りたての60センチオーバーのサーモンが13匹あった。


「バーベキュー用には1匹か2匹あればいいから、あとは塩漬けと燻製にするつもり。半分はおすそ分けにするの。コール支局長や拓さん、それに飛鳥に」

「成程」

 採れたてのサーモンだから、鮮度もいいし皆も喜ぶだろう。カナダ土産には十分だ。


「ところで朝のサーモン対決はどっちが勝ったの?」とエダ。それを聞いたJOLJUはニヤリと微笑んだ。

「9対6だJO~」そう言ってフッとJOLJUは空を見上げた。

「オイラ、6匹……」

「負けたンかい!? 釣り歴600年っ!!」

 ペシッと突っ込むサクラ。滝涙を流すJOLJU。釣り歴600年は釣り歴4年に負けました。

「仕方ないJO~!! だって最初の一匹に竿ごと川に引きづられて……10キロも泳いでたんだモン。その間にユージに抜かれたJO」

「あははっ……まるで<ウサギとカメ>だね♪ うんうん、ユージもJOLJUもよく頑張ったよ♪」とエダはどこまでも優しい。それにどこか楽しそうだ。そのエダのご機嫌を見て、サクラも苦笑した後、楽しそうに微笑んだ。


 こうしてのんびり家族だけで旅行をするなんて、いつぶりだろうか。


 ユージはワーカーホリックでFBIの仕事の他、非常勤で州立病院のERドクターを勤めている。エダも大学勉強で忙しいし、サクラもJOLJUも月の半分はNYにいない。こうして家族みんなが集まってのんびり過ごすなど、中々ない機会だ。この時間を過ごせるだけで幸せなのだ。


 その時、唐突にサクラは分かった気がした。コールがユージを停職にしたのは、ユージの強制休養命令であり、心配をかけた家族への家族サービス命令なのだと。ならばそれに甘え休暇を楽しむのが、コール支局長の好意に報いる事だろう。


「あれ? ところで肝心のユージは? ロッジにいて寝てるんだっけ?」


 一応まだ怪我人である。打撲や切り傷は治ったが骨折の完治はしていない。医療道具も持って来ている。


「ん……ユージは夕方まで帰ってこない。お肉かお野菜か、何かを買ってくるんじゃないかな。車でどこか出て行ったみたい」

「エダもどこに言ったか知らないの?」

「知らない♪」そう言ってエダは微笑んだ。これは知っているけど、知らないことにしている顔だった。それだけで、サクラはユージの用件が何か悟った。



 ……なんだ。やっぱり半分は仕事か……。



 サクラの中で色々填まってなかったピースが全て填まった。コールが停職を与えた理由も完全に分かった。停職と言いながら、半分は事件の後始末ではないか……。



「相変わらずワーカーホリックだねぇ……ユージわ」

「そうだね。でも、それがユージの良いところだもの」


 エダから見ればどんなことをしてもユージらしい、ということで微笑ましいらしい。きっと今度の事件の結末を一番喜んでいるのはエダなのかもしれない、とサクラは思った。







 クロベ・ファミリーが借りた湖畔のロッジから100キロは離れた山裾にある小さな村。その村はずれにある小さな農場に、ユージは向かっていた。その農家の庭先では70近い白髪口ひげの老人が元気に薪を割っていた。


 ユージは車を降り、名前を名乗り軽く挨拶した。老人は嬉しそうに自己紹介し、ユージと握手を交わす。ジョン=グレソンという名の元医者で、恰幅がよく温和そうな老人だ。

「コール支局長から連絡がきとりますよ。お会いで来て光栄です。捜査官」

「彼女たちは中ですか」

 そういうと温和な老人は頷いた。ユージは車から保温バックを取り出しジョンに「手土産です。サーモンが入っている」と言って渡した。ジョンはそれを笑顔で受け取り、家の中に案内した。


 古風なウッドハウスの中は、玄関入ってすぐに大きなリビングがあり、薪暖炉がまず目に入った。そして、その前のソファーの前で、二人の少女がチェスを楽しんでいた。


 二人はユージがウェラー低で保護した少女たちだ。そしてそのうちの一人はマリアだった。二人とも、ユージが来たのを見て笑顔で出迎えた。


「一人の子はまだ怪我療養中で二階のベッドにおります。ですが元気ですよ」

 ジョンがやってきて笑った。負傷した少女は、事件後ユージが外科的な処置は施して、今は彼が容態を看ている。

「よかった」とユージは珍しく笑みを浮かべた。


 ここは米国司法省が管理する証人保護者用の秘密の家だ。司法省が証人保護プログラムで保護した人間が第二の人生を送るため作られた場所で、ここに住む人間は全て何かしら事件に関係し、第二の戸籍を与えられた人間だ。ジョン老人も元々は医療マフィアから命を狙われ証人保護プログラムを与えられた米国人だった。カナダのこの農場は、NY支局管轄で、正確な場所や保護者のデーターはNY支局のグレード5以上の人間しか知らない。


「春からは地元の高校に通う予定ですよ。それまでは自宅で勉強ですわい」と保護者役のジョン老人は笑顔で言った。偽装された新しい戸籍ではこのジョン老人の孫ということになっている。


 ユージは満足そうに頷いた。彼女たちの様子を見てくる……というのがユージの隠された任務であり、要望だった。ユージは通常はグレード3の捜査官だから、公的にはこの場所には足を運べない。全てコールの計らいだった。


 ユージはレザージャケットのポケットから一枚の書類をジョン老人に手渡した。


「彼女たちの裁判のスケジュールです。ネットテレビでの証言だから自宅でセッティングします。NYはマスコミがえらく騒いでいますからね」

「お勤め、ご苦労様です」


 その後、ユージはマリア他少女たちと今後の事や裁判での事など説明し、それが終わると30分ほど事件とは関係のない世間話をして、家を出た。



 そして玄関前で、ユージはソレと会った。



「ロック=フォーマー……だったかな?」



 名前を呼ばれた大男は、デニムのつなぎを着、大きなスコップを背負っていた。



「その様子だと、怪我はもう大丈夫のようだな。<狂犬>」

「その名は、消滅した」


 <狂犬>は、無愛想に答える。ユージはその様子を見て苦笑した。


「お前のおかげで危なく失職しかけた。柄にもない事をするものじゃないな」

「…………」

 そういうとユージは自分の車に向かって歩き、冷えたビールを取ってきて<狂犬>に投げ、自分も一本開け、傾けた。<狂犬>は、家の前の丸太に座り、そのビールを瞬く間に飲み干す。

「……感謝している。ユージ=クロベ捜査官」

「お前のためじゃない。マリアたちのためだ」言いながら、ユージはゆっくりビールで喉を潤す。

「彼女たちは多くのことを知っている。そしてお前も裏社会のことを多く知っている。彼女たちだけだと危険だと思った。何より……」


 その時、<狂犬>が戻ってきた気配を知ったのか、マリアが玄関まで飛び出してきて、二人に向かって無邪気に手を振った。二人はそれを見る。


「彼女には、お前が必要だ」

「どうして……ここまで親切なのだ」

「そりゃあ仕事だからだ」ユージもビールを飲み干した。

「俺の知る警官は、腐った連中ばかりだ。善人など、見たことがない」

「だからって殺すのは感心しない。いい警官もいる。俺がそうだとは言わんがな」


 <狂犬>を生かしたまま逮捕せず証人保護プログラムで保護する……これはユージが捜査途中から考えていた事だ。マリアたちはマスコミからも裏社会、今回摘発された資産家たちからも追われている身だ。政府の加護で守りきれるかどうか確実ではない。誰か護衛者が必要だったが、捜査官が行けばその線から居場所がバレ兼ねない。過去そのルートから身元がバレて襲撃を受け証人が死んだ事が何度かあったし、ユージ自身保護プログラム中何度も襲われた。その経験から、当局以外の護衛者で、危機回避能力が高い人間の選定が必要だった。<狂犬>や少女の一人は大怪我を負っていた。病院の線から身元がバレるかもしれない。そこで元医者のジョン老人が保護者の一人として選ばれた。後は護衛者の選定を考えた時、ユージは<狂犬>を入れることを決意した。


 あの時、ユージはヴァトスの長剣で<狂犬>を貫いたが、<狂犬>自身に強力なショックを与えるだけで体に傷はつけなかった。ヴェトスにはそういう機能もある。すぐに<狂犬>と少女たちだけをその場から運び出し、ユージの車で匿い、後は<狂犬>の身代わりとしてラテンスキーの遺体を薬品を使って焼いた。そしてすぐにその場でユージは<狂犬>を応急治療し、後はやってきたNY支局のヘリに乗せユージの病院に運び誰にも知られることなく治療をした。強靭な男で、弾はほとんど筋肉で止まり、内臓へのダメージは少なかった。ウェラーや裏社会は<狂犬>が死んだと思い込んでいるし、<狂犬>を助けた事はコール他数人しか知らない。まず生存していることが洩れる事はないだろう。


「お前を生かしたのは、もし万が一裏社会が彼女たちに気付いて襲ってきた時の護衛、そして裏社会が俺にとって厄介になったとき奴等を摘発するための隠し玉だ」

「…………」

「だがそうならないよう手は十分打ってある。だからお前の仕事は……」そういうとユージは無邪気に手を振るマリアを見た。

「彼女の新しい人生を守る事だ。ただの保護者として……ただの農夫として、だ。これは俺との約束だ。もうお前は何がなっても銃や武器は手にするなよ。どんな理由があろうとお前がこの農場から出た時、今後こそ俺はお前を殺す」

「……俺は農夫……それで、満足だ」

 <狂犬>は心の底からそう言っていた。彼の人生で、初めて陽の下で堂々と生きられる境遇となった。心なしかあの険しい強面の表情も優しく穏やかになった気がする。


「家族はいい。お前の荒んだ心も癒されるだろう。俺も家族がいるから道を誤らずに済んでいる。お前と俺は似ている。それを証明してくれたのはマリアだ」

「感謝する」

「感謝なんかするな、ロック=フォーマー」と、ユージは<狂犬>に授けられた新しい名前で呼んだ。

「事件も、マフィアも、俺の事も忘れて、ただの農夫となり一生を終えろ。それが、お前に課せられた唯一のルールだ」

「なんと感謝していいか分からない」

「気にするな。おかげで俺も2週間のんびり家族サービスが出来る」

 ユージは自虐的に笑った。


 ユージが停職を食らったのは、厳密には違法捜査ではなく、越権捜査手段によるものだ。グレード3のユージには、ここまで物事を決める権限はない。<狂犬>を殺したことにして証人プログラムに入れるという計画はユージの職務権限以上だったが、ユージはそれを断行し、コールと二人だけで事件を始末した。コールはグレード6でその責任を負えば済むが、ユージにはその責任は負えない。結局ユージはコールに甘えた形で無理やり事を進めた。当然今、当局もそのことについてコールに釈明や責任を問うているだろう。もしその場にユージかいれば責任の所在はユージに及んだに違いない。それが官僚組織というものだ。その事を察したコールは、いち早く自分の責任でユージを停職させ、矢面から下らせた。コールの親心だった。それだけではない。今NYではマスコミが騒ぎたっている。そこからユージを一時避難させるのが、停職処分の理由の一つでもあった。担当者が責任を取って停職したということにすればFBIとしても行き過ぎた捜査のケジメをとった形にできる。全てはユージを守る方便だ。


 なんだかんだと、コールとユージには強い絆と愛情と、信頼感がある。むろん二人共それを微塵も表面には出さないが。


 ユージは立ち上がった。それにあわせて<狂犬>も立った。


「お前の事、一生忘れない」


「俺はお前の事を車に乗ったら忘れる。二度と思い出させるな。次はないからな」


 そういうとユージは懐から煙草を取り出し口に咥え、火をつけた。「そうだ、忘れていた」と、ユージは車の助手席を開け、たっぷりキャンディーの入った大きな缶を取り出し<狂犬>に投げて渡した。

「持っていけ」

「<死神捜査官>が、こんなに優しい男とは思わなかった」と、初めて<狂犬>の顔に笑みが浮かんだ。ビックリするほど清々しい、男っぷりのいい微笑みだった。

「勘違いするな。俺は男には優しくない。ただ、フェミニストなだけだ」

 そういうと、ユージは煙草を咥えたまま車に乗り込み、それ以上は語らず車を発進させた。その車を、<狂犬>は見えなくなるまで見つめ、マリアはずっと手を振って見送った。






「ということで……つくづく呆れたヨ。ユージの<美少女ホイホイ>には」

 ロッジに戻ったサクラ、エダ、JOLJUの三人は、エダ手作りのクッキーを食べながら三時のお茶を楽しんでいた。


 口外するな……と言われていたが、結局サクラは二人に事件の顛末を語った。この二人なら別に捜査秘密を話しても問題にならないだろう。


「うん。ユージなら、きっと皆を幸せにすると思っていたんだ♪」


 エダはどこまでもユージの理解者だ。話を聞いたエダは、ユージの決断やコールの温情など、全て理解していた。


「サクラはどこから知っていたんだJO?」

「<狂犬>を生かす……って話は、実はインディアンパーク・バレーに向かう車内で聞いたんだよね~。綱渡りみたいな作戦であたしは反対したケド。あー元々はマフィアたちの弱みを握るためってネ。殺し屋扱いされたこと相当怒っていたし」

「ユージの嫌がらせ的判断だJO」

「ま、車内のときは『人身売買の組織をぶっ潰す証人に利用する』って事で、本気じゃなかったと思うけど……方針転換、本気で助けようって決めたのは多分マリアを保護した時だったと思う」

「マリアちゃんのため、ユージは動いたんだね~♪ さすがユージだね」とベタ惚れのエダが頷く。サクラとJOLJUは何か言いたげな表情をしたが、黙った。本人はフェミニストだというが、それは未成年の少女を守るためだということになるとユージは相当な無理でも押し通す。……こうしてなんだかんだと少女たちはユージに好感を覚えるので、サクラとJOLJUは陰で<美少女ホイホイ>と皮肉と感嘆を込めて呼ぶのだった。


「しっかし、それにしても無茶苦茶な作戦だったヨ。どうしてあんなに巧くいくか……ユージの強運というか、なんというか。だから本当に巧くいって正直驚いたヨ、サクラちゃんも」

「綱渡り決断は昔からだJO~」

としみじみと呟くJOLJU。無茶なユージの作戦に付き合わされた経験はJOLJUが一番多い。


 だがいつも超法規的な能力を使う事なく、なんだかんだと事件や作戦を決着させてきたのは三人ともよく知っていることだ。


「結局、ユージの弱点の勝ちだな! なんだかんだと美少女に甘いからな、ユージは」

「ユージはフェミニストだもん」

 どこまでもユージに対しては好印象しか取らないエダである。人はそれを惚気ともいうが……そう指摘してもエダは嬉しがるだろう。


「ま。大きな貸しを作った裏社会も当分は自重するだろうし、しばらくは安全な日々が続くだろうね~。これもユージの計算かと思うとなんといっていいやら。ホント強運というか、裏社会で生き抜く力が強すぎるというか……」

「あんな化物倒したってコトで箔もつくJO」


 大きな貸しを作っただけでなく、マフィアたちがどう手を尽くしても倒せなかった化物<狂犬>を撃退したユージの強さはさらに喧伝されるであろう。彼らとしては、本当は両者共倒れになってくれることが一番だったに違いない。だがユージはさらに強く、さらに厄介なことに色々な急所を握られてしまった。裏社会でのユージの存在はさらに大きくなってしまい、計算が狂ったと思った裏社会関係者も少なくないだろう。


 結局、なんだかんだと結末を見ればユージが一人勝ちしただけであった。


「ま。<ボローニャ>のチーズケーキも食べられたからサクラちゃん的にもおっけーかな」

「旅行もできたし、釣りもできたしオイラ的にもおっけーだJO♪」

「うんうん。皆幸せになれたから、あたしも満足だよ♪」


 エダがそういうと、三人は幸せな笑いを上げた。


 もっとも、その頃コールと拓は事件の後始末でNYとワシントンDC本部を行ったり来たり。多忙の極みで彼らが幸せであるとはとても言えなかったが……。





 そして、世間では超大物の逮捕とその衝撃的逮捕内容で大騒ぎとなっていたが、捜査から外されたユージとクロベ・ファミリーには無縁の事だった。そしてそれら事件の終着までのドラマは、また別の物語である……。






「災厄者」END 


「黒い天使・災厄者 vol 40」でした。



これでこのシリーズも完結です。

このエピローグだけ切りもあるのでちょっと長かったですが……こういうオチです。

まさかのハッピーエンドです(笑

多分、この話がハッピーエンドだとよそうしていた人はいなかったんじゃないでしょうか。


今回の後書きは「災厄者」全体の後書きをしようと思います。


「黒い天使」は基本サクラとJOLJUを中心としたオムニバス・短編シリーズです。基本一話完結で、他のシリーズと連帯していません。これは「死神島」みたいな大長編でも同じです。

その中で、サクラが飛鳥と絡む話はショートショートやコメディーが多く、ユージが絡む場合はハードボイルドだったりします。あと、ユージがメインだとサクラの存在はオマケ的な事が多く、もはやユージ・メインの別タイトルくらいの感はありますね……ユージはキャラが濃いからw チートだしw


で、今回の「災厄者」も、振り返れば、結局「いかにユージが強いか」という話だったような……。

ちなみに元ネタというか、<狂犬>やマリアの設定を参考にしたというか雰囲気というかそういうのは映画「シン・シティー」かな? ユージだけ別格ですが。

こんなに強かった<狂犬>さんも、今後のシリーズで出てくることはないです。もちろんマリアも。だから、数年後<狂犬>サンとマリアがどうなったのか、それは作者も知りません。今のところは<狂犬>リターンズとかいうシリーズもないので。


今回のシリーズは中編としましたが、なんか気付けば40話もありました。そう考えると「死神島」なんかはこの文章量でカットしていたら150話くらいありましたね。今、いくつかのんびり書いている「黒い天使」の大長編は同じくらいボリュームがあります。が、それらを公開するのは当分先になりそうなので、一先ず「黒い天使」は短編を続けて公開していくことになると思います。


とりあえず次は飛鳥関係のコメディー系の予定です。

ちょっと作風変えて~という感じですかね。とはいえユージも出てきますがw

そしてユージ・メインの短編が二作、今ストックにあります。こっちは短いです。


ということで、当分は「黒い天使」の短編をお楽しみ下さい。


これまで「黒い天使・災厄者」を呼んで頂きありがとうございました。

これからも「黒い天使」を宜しくお願いします。


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