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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使 中編 災厄者」シリーズ
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「黒い天使・災厄者 vol 31」

「黒い天使・災厄者 vol 31」


拓からユージの暴走を止め役を頼まれていたサクラ。

仕方がなくユージを宥めるため屋敷に向かう。


一方屋敷下の秘密部屋では、<狂犬>がウェラー親子の攻撃を受けていた。

人質を取られ手も足も出ない<狂犬>だったが……。




「拓ちん……さすがは相棒だな。よくユージの事分かっている」



 ウェラー邸に来る前……拓はサクラを少しだけ呼び止めていた。



「今回の事件は多分ユージの逆鱗に触れる。あいつは暴走する。止めるのはお前の役目だぞ、俺じゃあ制御しきれないから。昔何度も止めようとしたけど無理だったからな」


 サクラもそんな事は言われなくても分かっている。血の繋がりはないとはいえ親娘である。ユージの逆鱗……少女が被害者になると、ユージは怒り暴走する。コールもそれがよく分かっていてFBI局内でも連続レイプ事件などの事件をユージに回すことは基本的にはしない。ユージが容疑者を殺害しかねないからだ。


 今回、まず<狂犬>が感情むき出しで行動しているので形的にはユージは自重し冷静だが、いつその箍が外れるか分からない。



「まぁ、アレでもまだ大分丸くなったんだけどな。エダちゃんが狙われない限りは」



 確かに丸くなったかもしれない。少なくとも10年前、エダしか守っていなかったユージは今より遥かに獰猛で凶暴で危険だった。それを長い年月かけて分別ある大人の漢に変えたのはエダの力……そして拓たち友人たちの力だ。


「確かにユージと<狂犬>は、似た者同士だしねぇ……サクラちゃん的にはユージのほうがえげつないケド。動物的凶暴さはユージのほうがエグイんじゃない? それでいて法律と医学の知恵があるからねぇ~……そりゃドSにもなるわけサ。ユージが勝っているのは見た目だな。何せ<美少女ホイホイ>だし」


「話を戻すけど、頼むぞ、あいつが暴走しそうな時、止める役な。まぁ、どんなに怒ってもお前なら殴られる事はないし撃たれることもない。俺は殴られるから嫌だ」


 その時サクラはものすごく膨大な量の文句と異論を飲み込み、ここは一先ず拓の意見に同意した。

この借りはいつかこの二人に両手一杯ケーキを買わせて償わせよう。



「20秒経過。1分以内って言ったから急がないとね」



 この屋敷の外からでも目的の三階の寝室は分かる。飛んでいけば10秒ちょっとで辿り着ける筈だ。


 サクラはラックトップを掴み、車の外に出た。


 その時だ。サクラの耳に、遥か遠くからこっちに迫るサイレンの音を聞き取った。



「地元の保安官事務所かな。また厄介に……」


 今はまだ、サクラの超人的な聴力で集中して何とか聞こえる距離……13キロから15キロといったところか。サイレンも派手に鳴らしているわけではなく、通常のサイレン音だが、間違いなくこの屋敷に向かって来ているようだ。特別な無線か特別な緊急警報回線を使ったのかもしれない。半径5キロ県内の電話は全て傍受していたが、911への通報も保安官事務所への直接通報もなかった。ただし、無線の傍受はそこまで徹底してやっていたわけではない。サクラのせいでなく、電話は盗聴機器を持ち込んでいるが、全無線対応する機器を持って来ていないのだ。無線用機材は嵩張る上に使えば航空無線や衛星無線まで拾ってしまって一人では処理が大変なのだ。


 拓のほうがいち早くこっちに向かっているはずだ。パトカーより拓のほうが早く到着するだろう。そしてその頃には拓もサイレンの音に気付くはずだ。


「拓ちん、任せた!」


 普通の公的機関ではサクラは無力だ。第一今はユージのほうが優先だ。ラックトップを掴み、サクラは跳躍……空を飛び真っ直ぐウェラーの寝室に向かった。







 ウェラーは完全に興奮していた。


 ついさっきまでは焦りと苛立ちと混乱で頭の中は一杯で、とにかく身を守る事、全ての証拠を消したい一心だったが、今は違う。これは人狩りだ。巨大な獲物だ! こんな経験など、まず出来ることではないではないか!


 すでに二人の私兵が駆けつけた。そして彼らから、この男がNY中で騒動を起こしている<狂犬>という怪物男である事も知った。


 ならば幸いだ! 撃ち殺しても正当防衛が成立するし、荷厄介となってしまった<人形>を処分し全てこの怪物男に押し付けられるではないか!


 <狂犬>は丸腰だ。時々独房の中の鉄パイプや鉄板などを凄まじいスピードで投げつけてくるが、ウェラーたちの銃撃に阻まれ上手くコントロールできていない。程々に注意していればどうということはない。幸いこの地下室は非常用武器庫があり、銃も弾も膨大に保管してあった。ただ一つ気がかりなのは、レスラーとチーフのブラウンの所在が不明な事だが、今はどうだっていい。


「俺にもショットガンをくれよぉ!! パパッ! この化物は俺が始末してやる!」


鼻と顎から流れる血を素手で拭いながらジュニアは叫ぶ。ウェラーは返事をしなかったが、私兵の一人がショットガンとタオルを持って駆けつける。


「…………」


 その様子を、<狂犬>はじっと独房の中から伺っている。


 この程度の修羅場は何度も経験している。この程度の連中などいつでも殺せる。警戒すべきはショットガンくらいで、9ミリ弾くらいならば急所に当たらないかぎり問題ない。


 だが、それができない。


 脱走防止と証拠隠滅のためだろう。この独房には爆発物が仕掛けてあり、その爆破スイッチはウェラーが握っている。今いる独房、そして左隣の独房は爆破された。<狂犬>は爆破に耐えたが、同じ独房内の衰弱していた名も知らぬ14歳の少年は死んだ。隣の独房が爆破した時、爆発音に少女の断末魔の悲鳴が混じっていた。



 独房は後2つ……。



 その中に、何人入れられているか分からない。<マリア>がいるかもしれない……。



 それだけはさせるわけに行かない!



 ウェラーたちの関心が<狂犬>に向いている間……銃を撃っている間は爆破されることはない。ならば<狂犬>は、ウェラーを楽しませるためのリアクション……敢えて標的となり続けなければならない。殺さないよう反撃し、関心を失わせないために隠れすぎても拙い。


 <狂犬>は足首の裾をめくり、38口径リボルバーを取り出した。ユージが手渡した銃だ。弾は一発だけはいっている。先の発砲はボディーガードから奪った銃で撃った。銃はある。だがどのタイミングで撃つべきか……撃てばウェラーたちをより怒らせ、興奮させることになる。


「出て来いよぉ! デカブツ!! それともそんな図体して臆病なのかハルクもどき!」


 ジュニアはショットガンの弾を装填させ叫ぶ。だが<狂犬>は姿を現さない。その事に苛立ったジュニアは、ショットガンの銃口を独房の方に向け発砲した。ショットガンの散弾では分厚い扉に穴をあけることは出来ないが、散弾の一部が僅かに開いた窓へ飛び込む。独房の置くで小さな悲鳴が起こった。ジュニアは少女たちの悲鳴により興奮し、さらにショットガンの弾を独房に向け無茶苦茶に放つ。銃声と弾ける金属音はハードロックのドラムを聴くかのようだ。その激しさに、ウェラーたちは一瞬銃口を下げた。


 正にその瞬間だった。


 <狂犬>は凄まじい速さでリボルバーを掴むと、ジュニア目掛けて引き金を引いた。




「おぉっ……」



 弾は正確にジュニアの眉間を撃ちぬいた。ジュニアは何が起きたか理解する間もなく、狂気の笑みを浮かべたまま真っ直ぐ後ろに倒れた。即死だ。



 あまりに一瞬の事に、ウェラーたちもすぐに理解できなかった。その隙を<狂犬>は見逃さなかった。



「うおぉぉぉっっ!!」



 撃ちつくしたリボルバーを、渾身の力でウェラーに向かって投げた。が、ウェラーの前にはボディーガードが一人立っていた。鋼鉄のリボルバーはそのボディーガードの肩に当たり、僅かに軌道を変えウェラーの頬を掠めた。


「ジュニア!! 貴様っ!!」


 頬から血が噴出す事など構わずウェラーは叫んだ。ウェラーの叫びにジュニアが反応することはなかった。駆け寄ろうとしたがそれをボディーガードが制した。


「あの化物男を八つ裂きにしろっ!!」


 状況を理解したウェラーは次第に怒りに身体を震わせ、叫ぶ。二人のボディーガードたちがSMGで<狂犬>のいる独房目掛け銃弾を叩き込む。跳弾が容赦なく<狂犬>の体を傷つけていく。だがそんな跳弾では<狂犬>の体の筋肉を傷つけるだけで深手にはならない。そして<狂犬>は中に篭ったままだ。出てきたくても、猛烈な銃撃の雨……何より<狂犬>にはもう投げられそうな破片は独房内にないのだ。だがそんな事ウェラーの構う事ではない。


 ウェラーはガンロッカーからカービン銃と拳銃を掴む。


「出てこい化物!! 出ないと……!!」


 次の瞬間……一番右の独房が爆発した。爆発音に少女の断末魔が混じる。


「きっ……きさ……まぁぁぁっ!!」


 <狂犬>は思わず飛び出す。しかしそれは全てウェラーの狙い通りだった。飛び出した瞬間、二人のボディーガードがすかさず狙撃する。<狂犬>は跳躍したが、8発の弾を撃ちこまれ、5mほど飛んだところで両膝を付いた。


「頭は撃つな! 殺すなよ、お前たち!」


 ボディーガードたちは小さく頷き、<狂犬>のところまで駆ける。そしてさらに両手両足に銃弾を撃ち込み、SMGを逆手に握り激しい打撃を<狂犬>の背中に加えた。堪らずその場に倒れる<狂犬>。



「マ……<マリア>は……どこだ……」



 <狂犬>には分かる。爆発の中の悲鳴に自分の知る<マリア>はいなかった。


 爆発の直撃を受け、10発以上銃弾を撃ち込まれ殴打された<狂犬>は全身を真っ赤に染めていたが、声にはまだ生気が宿っている。信じられないことだが、これだけの攻撃を受けてもまだこの怪物は致命傷を負っていなかった。




「黒い天使・災厄者 vol 31」でした。


まぁ……ユージが切れることは皆想定済ということデスネw


この点だけは分かりやすい人なので。もっともユージが厄介なのは切れても猪突猛進しない事ですね。容赦がなくなるだけです。敵の人権とか情状酌量を考えないだけです。(いいのか?w)


一方大ピンチなのが<狂犬>側。

隠していた銃の一発も撃ってしまったのでもう武器なし。そしてジュニアを殺されたウェラーは怒り心頭。仮に現状警察がやってきたとしても捕まり殺されるのは<狂犬>だけ。まだ決定的な黒でないのです。ちょっとでも白やグレーの色があればたちどころに裁判で真っ白にひっくり返されちゃう……このあたりがユージの暗躍の理由でもあるわけです。


実はまだ二転三転します! 


これからも「黒い天使・災厄者」を宜しくお願いします。

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