「黒い天使・災厄者 vol 25」
「黒い天使・災厄者 vol 25」
移動するユージたち。
拓は、<狂犬>との会話で彼らの出自を知り、同情を寄せる。
だが、運命は変えられない。
そして別荘地では、ウェラー上院議員が一人快楽に悦に入っていた。
そこに秘密倶楽部の先輩議員から連絡が入ったが……。
ニューヨーク州は広い。
州の名を冠しているNY市は南の僅かな一角でしかない。
世界一の都会NYから北部の五大湖周辺までを繋いでいるのが、ニューヨークステート・スルーウェイだ。他のフリー・ハイウェイと違い有料ハイウェイで、夜9時頃までは一般車が多いが、11時過ぎると大型トラックばかりになる。
そのハイ・ウェイを、二台の車が時速200キロ近いスピードで北上していた。
一台は赤のフォード・マスタング・コンバーチブル。もう一台はトヨタの黒のSRVハイブリッドワゴン。二台ともユージが所有している車だ。どちらも防弾加工の上、エンジンはカスタムされている。マスタングはユージ個人の趣味用で、SRVハイブリッドワゴンは家族用だ。ちなみにどちらの車にもショットガン、SMG、自動小銃、各種弾薬、非常用医療キットや薬品がトランクの中に隠されている。
この二台にユージ、拓、サクラ、そしてラテンスキーと<狂犬>が同乗している。
マスタングにはユージが運転、助手席にサクラ、後部座席に手錠で拘束され窮屈そうに横になった状態で乗っているラテンスキー。SRVハイブリッドワゴンは拓が運転し、後部座席には鎖で両手両足を縛られた<狂犬>が乗っている。乗っているというより積まれている感じだが。
「ねぇ~ユージぃ~、折角だから屋根あげよーよぉ~、オープンカーらしくさぁ~」
元々オープンカーであるマスタング・コンバーチブルだ。幌はオプションのようなもので閉じれば車内は狭くなる。サクラは気分の問題だが、おまけのような後部座席に横になって座る大柄なラテンスキーはもっと窮屈だろう。むろん彼は文句がいえる立場にないが。
「今時速206キロだ。お前、吹っ飛んでも知らんぞ。第一雨が降っている」
「ぐぬぬ~、折角マスタングに乗れたのにぃ」面白くなさそうに拗ねるサクラ。基本、このマスタングはユージの個人趣味用で助手席に乗るのは基本エダか拓だから、普段乗せてもらえないサクラが興奮するのは当然だ。このあたりサクラは子供らしさがある。
『急ぐのは分かるけど、もう少しスピード落としてくれ。そっちとこっちじゃ馬力が違うし、ハイウェイパトロールに捕まるぞ』
内蔵スピーカーから拓の声が聞こえた。日本語だ。両車ともFBIでの使用車として登録してあり、無線機も搭載していて、現在両車は常に繋がっていて双方の会話は聞こえている。
「大丈夫だ。さっき州警察とハイウェイパトロールに俺たちの車のことは通達しておいた。止められる事はない」
「ちょっとギリギリだったケドねー」
ユージもサクラも日本語で答える。州警察が「スピード違反の一般車発見。犯罪の可能性アリ」と無線で報告が上がったのをサクラが別に持ち込んだ警察用無線傍受で知り、ユージはすぐに州警察に電話し、該当車はFBIのものである事と、緊急のため急いでいる事、この後面倒が起きないよう二台のGPS情報を報せた。米国の警察機構は面倒なもので、州、郡、市、さらにハイウェイや国立公園等……それぞれ違う警察組織になっている。どこが偉いというものではなくそれぞれ独立したものなので、一箇所連絡すれば済む物ではない。ユージはまず一番規模の大きい州警察に話を通し、他の郡警察やハイウェイ・パトロールにはサクラがユージの行った手続きを模倣して持って来ているラットクップで処理した。
「そんなに急ぐんならヘリにすりゃよかったのに」
ヘリコプターなら車より圧倒的に速い。そしてFBI・NY支局には常時ヘリコプターが2台ある。手続きは必要だが、コールが了承を出せばそれほど手間はかからない。そしてユージはヘリコプターの運転免許を持っている。ちなみに拓は小型飛行機の免許を持っている。
「ヘリには乗員制限がある。目立つし第一あの<狂犬>が乗せられるほどをスペースはない。それに連れているところが見つかれば大騒ぎだ」
「久しぶりにちゃんとしたヘリに乗れると思ったのに」
サクラも何度もヘリコプターには乗ったことがあるが、大半はJOLJU自作の怪しいモノだ。それ以外は何かしらの大事件の時で、遊覧飛行的なものは数回しかない。
「それよりお前はウェラー議員が今夜いるかどうか調べろ。それと別荘の内部見取り図のデーターを集めろ」
「ホイホイ」
コールが何かしらの令状を取ったとしても、普通のやり方で訪問し尋ねてもはぐらかされ追い出される事は目に見えている。ウェラー議員がほぼ黒だと判断した以上、ユージは相手が上院議員でも手を抜くつもりはない。一気に攻め確保する、突入に近いやり方でなければ現場を押さえる事は不可能だ。そしてそのためには、ウェラー議員にボロを出させるための餌が必要だった。その餌のため、<狂犬>やラテンスキーを連れて来ている。
どういう手段でウェラー議員を釣り上げるか……ユージはすでに拓とサクラに方法を語っている。サクラは移動中にその作戦のための下準備……衛星での監視、セキュリティーの解除方法、郡警察への根回しなどやることは一杯あった。普段はサクラ(やJOLJU)が捜査に首を突っ込むことを嫌うユージだが、利用すると決めればトコトン利用する……これがユージの方針だ。サクラに言わせれば「自己中の極み」である。
「後1時間ちょっとでインディアンリバーレイクに着く」
「ほいほい。それまでには終わると思うよ」
答えながらもサクラの手は動いている。ユージは簡単に言ったが、サクラの仕事は普通、FBIの上級情報分析官が3人は必要な仕事量だ。さらに作戦実行するにはFBIの現場捜査官が1チーム7人は最低必要だ。それをユージと拓だけでやるのだから、相当無茶をやることになる。人員を呼べないわけではない。ニューヨーク州北部の大都市バッファローには支局もあり、そこに要請を出す事は可能だ。だが、それではユージたちが行おうとしている作戦が知られてしまう。
ユージが行おうとしている作戦は囮捜査で、かつかなり強引な手法だ。普通の捜査官が知ればその無茶苦茶な捜査に苦言を呈したり、もっとマシな正攻法をあげ協力を拒む可能性があった。形としては飽くまでユージと拓の独断の暴走、それをコールが庇う結果になる……。
「ユージを部下に持ったコールのおっちゃんは大変だ~♪ <ジャック=バウアー>とユージ、どっちがマシかねぇ」と他人事にように呟くサクラ。それを聞いたユージは、珍しく無視せず答えた。
「そりゃ俺のほうがマシだろう。少なくとも俺は容疑者が即死しなければ蘇生させる腕がある。不慮の事故で容疑者を死なす事はない」
……強引な違法捜査は同じレベルって事じゃん……と、サクラはユージの答えを聞き心底呆れる。自己中心的な性格で容疑者を射殺する数ならユージのほうが上ではないだろうか、とサクラは心の中で呟いた。
一方、後続の拓のほうは、同乗者は<狂犬>だけ。ユージと無線でやり取りする以外は、会話もない。スポーツカーであるユージのマスタングは楽に240キロが出せるようにカスタムされていて200キロで走るのは造作もないが、基本家族移動用に使っているSRVハイブリッドワゴンでは200キロについていくのは集中力を使う。後ろにいる<狂犬>にも注意しなければならない。警察無線は常時聞いているがそろそろ拓も退屈になってきた。到着まであと一時間はある。音楽をかける気分でもない。
仕方なく、拓は<狂犬>と雑談する気分になった。
「もし<マリア>を見つけたとして……お前はどうする?」
「…………」
「俺たちが<マリア>を見つけたら、<マリア>は保護されるだろう。でも、お前と一緒にどこかに逃がすことは出来ない。それはお前も分かっているだろう? 俺たちと協力すると決めた以上、それは変えられない」
「…………」
「ま……彼女の事を考えたら、当局に保護されるほうがいいよ。娼婦から足を洗えるし、未成年なら保護施設もある。ユージは女の子には甘い男だから、きっと普通の生活に戻れる。それは確約するよ」
「……普通の……生活……」
その時、初めて<狂犬>が口を開いた。その声は淋しげで、拓の話を喜んでいるようには思えなかった。
「<マリア>は……お前たちのいう、普通の生活など、知らない……できない。誰にも、彼女の心は……開けない」
「同情はするよ、彼女にも、お前にも」
「……同情は、俺には必要ない…… <マリア>を助けて保護しろ。だが……」そういうと、<狂犬>はやや顔を上げ天井を見つめる。
「……<マリア>が……心を開くのは……俺だけだ」
「愛し合っていたのか?」
「……愛……? わからない……だがお前たちに心を開くとは思えない。お前たちは、彼女の悲惨で不幸な生い立ちを、知らない。共感しあえるはずが、ない」
「……かもな」
「彼女が心を開くのは……俺……だけだ」
「愛し合う仲だから?」
「……俺だけが……俺だけが……彼女を抱かなかった、壊さなかった。俺たちは、心からの会話で結ばれていた。<マリア>は……地獄の中で必死に生きていた……」
アレックスのプロファイリングにもあった。「<狂犬>とマリアの間には性交渉はない可能性がある。その分、心のつながりは強い」と……。
「彼女の本名は? 出身は?」
「ない。<マリア>だ。育ったのは最低の街……コーカサスの貧民街。政府も見捨てるほど荒れた街の中だ。俺も、そこで……育った。転々と、コーカサスやウクライナ、ロシアで……最低の生活を」
拓はわずかに顔を上げた。
「……そうか。君たちは、ロマの出身か」
民俗学を専行している拓は、その情報だけで彼らの出自を悟った。
ロマ……一般的にはジプシーのことで、一般にはヨーロッパで生活している移動型民族を指す民族のことだが、ユーロ圏が出来てからは定住者も増えた。その一方、定職をもてなかった一部のロマは東に流れ、紛争地域に流れたり難民になった者たちもいる。さらにヨーロッパの一部、主に東欧では今でもロマ出身者を差別している。そしてロマの中には生活苦のため裏社会に堕ちるしかない者もある。しかし裏社会に入っても強力なバックを持たないロマたちはのし上れず消耗品のように使われると聞く。
……恐らく<マリア>も<狂犬>も、幼い頃ロマの仲間が裏社会に売った生き残り……。
……そして<マリア>は娼婦に、<狂犬>は殺し屋件闇デスマッチの闘士になった……。
元々ロマは一族団結力が強い。
そのロマの一族から、二人は捨てられた。天涯孤独となった。二人は場所と時間こそ違え、裏社会の暗黒の泥沼の底で過ごし、そして偶然同じ境遇者と知り合った。その時初めてこの親子ほど歳の離れた二人には見えない絆と信頼が生まれたのだろう。それがいかに本人たちにとって大切で強い絆となるのか、拓には容易に想像ができた。何しろシュチュエーションこそ違うが、そういう絶望の世界で強い絆を結び合い、這い上がった人間を拓は知っている。ユージとエダの事だ。二人と<狂犬>たちの違いは、堕とされた場所が異常世界か裏社会かの差と、神の手が差し伸べられたか神がいない世界かの違いだ。
「ユージはお前のことも<マリア>の境遇も理解している。あいつはお前と似た境遇にいたからな。だから、<マリア>はきっと助かる」
「…………」
「だが、<マリア>を助けるにはお前の誠意も必要だ」
「分かっている。インディアン・リバーレイクに着いたら、刑事の居場所、話す。<マリア>を保護したら、仕掛けた爆弾の場所を教える」
「分かった」
その約束は出発前に一度交わされた約束だ。この点に関して、ユージも拓も、<狂犬>の約束を疑ってはいなかった。<狂犬>にとっては<マリア>の安全が第一で、FBIであり、各方面にゴリ押しが利くユージに頼る以上自分自身の自由など毛頭考えていないようだった。潔いといえばこれほど見事なまでの潔さであり、同時に自分がこれまでやってきた殺人によって起こる事まで理解しているようだ。
<狂犬>はそれだけ喋ると、「会話は終わりだ」とばかりに深く椅子に座り目を閉じた。
拓もそれで口を閉じた。ユージは何をするか……一応聞いてはいるが、本当にうまくいくものか……拓にはそっちの事のほうも重要な問題だった。だが、それが行われるには一時間後……しばらくは運転に集中することが拓の仕事だった。
深夜になった。
ジェームズ=ウェラーは星を眺めながら、心地よいジャグジーの泡で疲労と汗を流していた。心地よく温い湯、体を優しく刺激してくれるジャグジー、そしてウォッカとヴァッファローウイングとポテトスキンが小腹を満たしてくれる。今年で62歳になり、胴回りは30歳の頃に比べ倍になったが、精力の衰えだけは感じなかった。
いや……面白い玩具の存在を知ってからは、精力はより強くなり、ここ最近は肌艶も甦り、頭の回転は以前よりよくなった気がする。そういえば、十九世紀の英国の貴族も、同じような趣向で日々の職務の疲れを癒し、精力をつけていたのではなかったか……自分はイングランド系の名家の出だ。これも一つの伝統と呼べるものかもしれない……。
ウェラーは一人悦に入り深く湯に浸った。その時、微かに息子の笑い声と言葉にならない少女の悲鳴が耳に入ったが、気にはしなかった。ここはインディアン・リバーレイクの別荘地の中でも高台にあり、そして広大だ。冬のシーズンでもないから、他の人間に気づかれることはまずない。息子にも十分玩具で楽しませたいではないか……。
その時だった。この三階にあるオープンバルコニーに、秘書のライアン=レスラーが現れ、ウェラーが気付くと軽く会釈をした。
「もう私は出て休むところだ、ライアン。ジュニアは好きにさせておけ、まだ若い」
そう答えたジェームズは深く湯に浸ったままウォッカの杯を煽った。だがレスラーの真剣な表情を見てジェームズは口元の笑みが消えた。
「何かあったのかね、ライアン」言いながらバスタオルとバスローブを取り、ジャグジーから出た。そして顔をバスタオルで拭きながら部屋にと入っていく。二人が部屋に入り終えると、執事のレスラーは戸を閉め、電動カーテンのボタンを押した。大きく開いていたバルコニーにカーテンが下りると同時に自動的に部屋の電気が点いた。
ウェラーはソファーに座る。そしてカーテンが完全に閉まるのをレスラーは確認して、そっとジェームズの傍に立ち耳元に口を寄せた。
「アラン=バルガス様に雇われたチンピラから今しがた連絡がございました」
「こんな時間に何だ?」
アラン=バルガス……彼も上院議員だ。マサチューセッツ州選出の上院議員で、東海岸上院議員委員会の委員長であり、ウェラーとは親しい。だが彼はNYに滞在しているはずだ。そして、バルガスもウェラーも、秘密倶楽部の一員だ。
「チンピラとは、どういう意味だねライアン。第一こんな時間に、そんな者をバルガス氏が使うかね?」
「ジェームズ様の玩具について、御興味をもたれたようです。それで、自分の玩具と交換したいと仰ってまして」
「……バルガス氏に確認は取ったか? 警察の罠ではないのか?」
「私がバルガス様の声を確認しました。やってきたのはチンピラですが、電話口に出たのはバルガス様本人でした。そして……チンピラは、先週<棺桶に入った玩具>を運んだフリーの運び屋で、ジェームズ様の玩具を運ぶのにも始末するのにも幾度か利用した男です。そういう世界には精通している男です」
……ふむ……とウェラーは考えた。
バルガスは先輩で、コネも金も力もウェラーより持っている。何より刺激的な玩具と、その遊びの存在を教え、秘密倶楽部に誘ってくれたのは彼だ。だがこんな時間に突然使いを寄越すのは、どうも彼の性格にそぐわない気がする。しかし秘密倶楽部に関する事ならありえるのかもしれない……
「そのチンピラはどこにいる?」
「このインディアン・リバーレイクに来ています。この別荘から4ブロック先の公園で待機しています。どうします?」
……追い返す事も、消す事もできます……と言外に含んでいた。この別荘には、特別の私的ボディーガードがいる。このボディーガードは知り合いの民間軍事会社で訓練を受け、高い戦闘力を持ちどんな命令でも従う。
髪を拭き終えるまで沈黙していたウェラー。拭き終えた時、決断した。
「用件を聞き、お前が判断してくれライアン」
ライアンは黙って会釈し、部屋を出て行く。ウェラーは部屋にある冷蔵庫からビールを取り出した。
時折興奮する息子の笑い声が聞こえた。秘密の地下室は防音加工しているのだが、よほど玩具遊びに興奮しているらしい。
……ジュニアにはちょっと早い遊びだったかな……?
今遊んでいる玩具が壊れないか……あれは高貴な遊びで、優雅さと優しさを持って、玩具を壊さず楽しむべきものだ。もっとも、最近手に入れた玩具は元々半分壊れていたし、遊びのための仕込みはよく調教されている。ドラッグもあるし、死ななければそれでいい。どうせ高い金を払ったわけではない。
ビールを半分ほど飲み終えたとき、レスラーが再び部屋に戻ってきた。
「どうだった?」
「ミスター・バルガスは、ジェームズ様が先日手に入れた玩具を借りたいと申しております。そしてその代わりに、新しい商品……玩具用ではなく特上の愛玩用ですが、それを貸してもいいとの事です」
「秘密倶楽部の子か……」
「独自のルートで手に入れた物だそうですが大変な極上品とのことです。私も確認しましたが、ジェームズ様好みかと思います。リスクはありますが確かに非常に上質な商品です」
そういうと、ライアンは懐の中から携帯端末を取り出し、一枚の画像を表示しジェームズに示した。その画像を見たウェラーは一瞬で表情を変え、食い入るように画面を見た。
「これは……極上品だな。まだ幼いが……だが、素晴らしい」
「まだ調教前だそうですが、米国人ではないので足がつくことはないとの事です」
「……いいだろう。その運び屋から話を聞いてこい、ライアン」
あくまでやり取りはレスラーが行い自身はタッチしない。もし警察の手が及んでもレスラーが人身御供となり自分には届かない。無論レスラーも承知している。これまでずっとレスラーが主人のため玩具たちの仕入れや始末を手配してきた。
「今回ミスター・バルガンはこの少女のレンタル代金についてと、玩具の状態を確認したい、と申しておりまして。使いのロシア人……先に申し上げていた何でも屋が直接確認することを希望なさっております」
「そのロシア人は、信用できるのかね? 刑事ではないだろうな」
「その点は大丈夫です。これまでも何度か取引した男ですし、玩具の処分も難なくこなしています。警察関係者にもバレてはおりません。警察の内部協力者の保証済でございます」
「分かった。バルガスの顔も立てんといかん。彼とは公私とも重要な知人だからな」
ウェラーはそういうと、悦楽と興奮に満ちた微笑みを浮かべ、まるでそこに少女本人がいるかのようにいやらしい手つきでレスラーが示した画像を撫でた。
そこに映っていたのは、髪を金髪に、瞳をアイスブルーに変え、両手をテープで巻かれ拘束されたサクラの姿だった。
「黒い天使・災厄者 vol 25」でした。
これから佳境に入ります!
とはいえちょっと長いので、幾分一章の長さを長くしました。
今回、ちょっと気分が悪くなる話でした。直接的な表現は避けましたが。
容疑者は少女を奴隷にしている奴ですからね……まぁ、仕方がないっス。
読んでいただいている方の不快感は、そのままユージの不快感です。
その分、ユージは暴走するワケですが。
最後のシーンででてきた写真は、書いてあるとおりサクラです。
ということでついにユージたちのひっかけ捜査が始まるワケです。というか囮捜査ですね。普通の捜査官にはできない方法です。なんだかんだいってサクラは10歳ですし。娘とはいえこれだけでも訓戒モノですね。多分これがエダならやらず別の手を使ったと思います。
ということでついにユージたち突入です。
相手は上院議員……その意味でいうとマフィアより厄介です。鉄壁の犯罪証拠を握らないと逮捕もできないし、逮捕してもマスコミに叩かれるし。撃ち殺せばやりすぎだときっと上層部からも叩かれるし……このあたりユージの捜査の難しさがあります。
ということでついに捜査もハードになってきました。
これからも「黒い天使・災厄者」を宜しくお願いします。




