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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使」シリーズ
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「サクラとJOLJUの大決戦」ショートショート・コメディー

「サクラとJOLJUの大決戦」ショートショート・コメディー


 とある日、行われたクロベ家の家族ポーカー大会。


 ちょっと間抜けで微笑ましいショートコメディーです。

「サクラとJOLJUの大決戦」



それは、何の変哲もない週末の夜の出来事。

クロベ家で時々行われる家族団欒のポーカーでの出来事である。

 


クロベ家のポーカーの面子は、ユージ、拓、エダ、そしてサクラとJOLJU。この五人が基本メンバーで、たまにロザミアや修一郎、ごくたまに飛鳥が加わったりする。今夜は外野はなくこの五人で行われていた。


 ポーカーは単なるトランプではない。そこには<賭博>の要素が含まれる。


 NY市はカード賭博は本来違法だが、所詮家族ゲームの身内だけなので誰も気にしていない。まぁこの程度のことなら微罪にもならない。家族友人単位ならどこでもやっていることである。

 賭博だから当然皆現金を賭けている。もっともレートはサクラやJOLJUにあわせているので、10セントが基本の単位だ。そもそも家族内ゲームだから金銭が目的ではなく、遊びの要素としての賭博だ。ちなみにクロベ家の公認賭博はこの家族ポーカーと麻雀である。





 その日のゲームは特別大きな流れはなく……ユージとエダの二人がやや勝ち越し、拓はやや負け……そしてサクラとJOLJUはどっこいどっこいに負けていた。


 ポーカーでも麻雀でもそうだが、それぞれ打ち方に個性がある。


 ユージは運も強くポーカーフェイスも上手く、そしてハッタリなど賭博師的なワザを使い、まれにイカサマ……というかイタズラに近いレベルだが……をしてくるので一番手強い。その点、拓は素直なほうだがたまにハッタリを出したり大勝負にでてみたりと小技は使う。エダはハッタリやイカサマも大張りもしないが運はズバ抜けて強いので、時々全員が打ち負かされることがある。JOLJUはどちらかといえば運の上下動が激しく、勝つときは勝つが負けるときは負ける。しかしポーカーフェイスという言葉がないので、全て顔に出るため相手はしやすい。


 サクラだが、サクラはどちらかといえばユージと似たタイプでハッタリや大勝負など一発デカいのを好む。ポーカーフェイスもしているのだが、飛鳥やセシルたち相手には通用するサクラのポーカーフェイスも、ユージとエダの二人には通用しない。


 ということで皆のレベルは大体一長一短で特にスバ抜けた人間はおらず、大体釣り合っているといえよう。あと前提としてサクラとJOLJUは透視能力および心読能力は禁止である。当然だ。所詮き家族団欒を目的としたゲームなのだから。


 事件は、最後の局……最初のカードが配られた時、場の雰囲気が変わった。


「ムムッ?」とサクラ。


「JO」とカードを見つめるJOLJU。


 最後に回ってきた手札を見た全員がそれぞれ緊張した表情を浮かべた。


 最後の勝負……となると、ポーカーの神様が降臨することがよくある。つまり、最後の最後で大物手の気配なのだ。それも自分だけではない。気配からして全員そこそこの手が最初の段階で出来上がっている気配なのだ。この緊張はそこから来ていた。


 サクラはじーっと自分の手配を見つめる。


 ……8のスリーカード……か……


 悪くない。フルハウスもしくはフォーカードも狙える手だ。


(よしっ! 最後の最後できたっ!!)

 勝負は全員参加。ユージ、拓の二人は3枚チェンジ、エダとJOLJUは一枚チェンジ、サクラは2枚チェンジした。



 こうして、波乱の最終バトルは始った。



 親はさっき勝ったユージ。

「1ドル」

 これは基本単価の10倍。かなり強い押し、大勝負である。これに対し拓、エダも1ドルをレイズ。それぞれが相当の手札の手ごたえ。

 だが、ここで勝負に出るモノが一人。サクラであった。

「3ドル!」

「!?」

 全員がサクラを見る。これは今夜最大の賭け額。いや、大人の三人はともかく、一日の小遣いが2ドルと決まっているサクラにとっては大金。だが、ここにさらなる展開が。

「レイズだJO~5ドル!」

「ご……5ドルゥッ!?」

 さすがのサクラも唸った。ほぼサクラの提示額の倍近い。しかもそれがよりにもよってあのJOLJUとは……!


 ……勝負にきたか!? JOLJUの分際でっ!!


「レイズ!! 8ドル」

「コール」

「……俺降りた」

「俺も」

と、ここでユージと拓は降りる。二人の手は共にツーペア。そこまで冒険はできない。


 だが、この流れの中……JOLJUは屈しなかった。


 一瞬の逡巡……じっと手の中のカードを見つめ、JOLJU攻める。


「10ドルだJO!!」


「ナンダトォ!?」


 サクラは呻いた。10ドル……これはもはや驚異的!!


 ……ハッタリか……!? すでに場には15ドル+ドロップ分と試合参加の分がある。相当な額だ。確かにこの状況下でハッタリは効果的だ。逡巡するサクラ。緊迫感があたりに立ち込める。


 ……いや違う。JOLJUは確かにいい手札を揃えた……


 カード・チェンジの際、JOLJUの交換は一枚。つまり、他はそろっていたと考えるべきだ。

考えられるのはツーペア、ストレート、フラッシュ、フルハウス、フォーカード、ストレートフラッシュ、ファイブカードだ。


 ……ただし……


 サクラは考える。


 常識的に考えてストレートフラッシュやファイブカード、フォーカードは考えにくい。一枚チェンジで一番可能性があるのはフラッシュとストレートだ。この二つの手は意外に最初の手持ちの運によって出てくる。


 ……ここまで勝負にくる以上、ツーペアとは考えられない。おそらく一枚チェンジで望みどおりの手となったはず。問題はそれが何かということ……


 サクラは自分の手の中を見た。

 サクラの手は8と2のフルハウスだ。

 ストレートかフラッシュであれば勝てる。だがその見極めができない。

 サクラは考えた。


 ……ちょっと試すか……


「レイズ。12ドル」

 ここで小刻みにレイズ。反応を見る。

「コール」


 そしてJOLJUは

「う……JO……レイズだJO! 15ドルっ」


「!!」

 予想以上の強気。驚く一同。JOLJUの一週間分の小遣い額である。大勝負に出た!


 だが、サクラはそのJOLJUの僅かな逡巡を見ていた。今、レイズの時わずかにJOLJUが一瞬ためらいを見せたのを見逃さなかった。

 ハッタリではない。もしハッタリであればいっそもっと大きく吹っ掛け、サクラのドロップを誘うはずだ。だがJOLJUのレイズはある意味常識的レベル。つまり、ストレート以上は確定! しかし、一瞬ひるんだのをサクラは見逃さなかった。


 怯むということは「この手では勝てないかもしれない」という不安! だとすれば、フルハウス、フォーカードといった超大物手の可能性は少ない。


 ……勝った……!!

サクラは確信した。 さらに、ここがポーカーにおける勝負運の絶好の好機であることを。

 ポーカーは、たとえロイヤルストレートフラッシュという最強手をえたとしても、それを悟られ勝負に下りられては意味がない。勝負にのせてこその魔力を発揮する。幸いJOLJUの手はいい。ここまで値を上げた以上降りたくても降りられないはずだ。今回はその心配はない。勝ちを確信したサクラにとって、あとはどれだけ吊り上げられるかが焦点となる。


 ポーカーは一見単純なゲームだ。だがそこには魔性も棲んでいる。


 それは他の賭博にはない、「無限に上がるレート」だ。


 そう、いくら賭けるチップの額が小額でも、レイズを繰り返せば天井知らずでレートは跳ね上がる、恐怖の青天井の魔性が潜んでいるのだ。

 強い手を持つ者同士が対決する場合、双方レイズの賭け合いとなり当初の思惑を超えた勝負となる。そうなった場合、<降りることができない>という心理と<なんとか相手を勝負から降りさせよう>という心理が働き、一種のチキンレース……オークションに似た状況を作り出してしまう。それがポーカーの魔性。

「レイズっ!! 20ドルっ!!」

「コール」

 ここまでくればJOLJUも引けない。すでに日給の小遣い10日分を超えている。勝たなくてはならない。

「レイズだJO!! 30ドル!!」

「コール」

「レイズ!! 40ドル!!」

「レイズだJOっ!! 45ドルっっ」

「レイズじゃぁー!!50ドルっ!!」


 もはや完全に<魔性>に取り憑かれた二人。


「おいおい」


「お前等……いい加減に……」

 呆れる大人たちを余所に……ついに掛け金は120ドルにまで跳ね上がった。

「……コール……」

「……コールだJO……」

 ついに120ドルで落着……これで掛け金総額は約360ドル。サクラとJOLJUにとっては莫大。凡そ2カ月分の小遣いを賭けた大勝負となった!

 サクラもJOLJUも、不敵な笑いを浮かべ双方を睨んでいる。

「覚悟はいいかJOLJU!!」

「玉砕するがいいJO!!」

 両者、運命のオープン!! 互いの手の内のカードがテーブルに叩きつけられた。


「JO~!!! ハートのフラッシュだJOぉぉぉっ!」


「勝ったぁぁぁぁ!! フルハウスだぁぁぁぁ!!!!」


 カードを叩きつけるサクラ。完全勝利の瞬間に思わずガッツポーズをとるサクラ! やはりあの一瞬の躊躇はJOLJUの不安感から出たものだった!


「ぐおぉぉぉぉぁ~!! なんてこっただJO~!!」

「かぁぁーかっかっ!! 後一歩で残念だったな馬鹿JOLJU! あたしの勝利だばぁぁぁぁかっ!!」

「JOOOOOっっっ!!」

「泣け!! 叫べ!! ないても賭けは非情なのだ! ふふふーん♪ 払ってもらうからね! きっちり!! ふわっはっはっはっ♪」

 高笑いするサクラ。泣き崩れるJOLJU。呆れるユージと拓。


「あ……ええっと……」


 と……その時、静かに声が上がった。


「ごめん……あの……あのね、あたし……エースのファイブカードなんだけど」


 ゴテっ……サクラとJOLJU、壮絶に倒れる。



 勝利者確定。エダである。



「あの……まさかこんな高額になるとは思わなくて……」

 そう、エダはずっと言っていたのだ。「コール」と……だが盛り上がってしまった二人は

すっかりエダの存在を忘れていたのだ……サクラは気づくべきであった。エダが高額にレートがあがっていく中、ずっとドロップせずについてきた事実に。

 エダはハッタリも冒険もしない。エダがついてくるということはよほどの手なのだ。そしてこの中で一番の強運の持ち主は誰でもない、エダである。サクラは警戒すべき相手を見誤っていたのだ。

 ユージは淡々とした表情でテーブルのカードを片付け始めた。

「ということでエダの勝ちだな。さあお前等それぞれ120ドル払えよ」

 と、勝負の結果を無慈悲に宣告するユージ。

「ちょっとまったぁぁぁ~!! サ……サクラちゃん120ドルなんかもってないよ? えへえへ♪ ほらぁ~ エダは別にいいよね? サ……サクラちゃんから別にお金取らないよね? そもそもサクラちゃんにはそんなお金ないし♪」


 ここに来て<子供モード>となるサクラ。だが、ユージはそんな甘えには意に介せず冷たい現実を突きつける。


「賭けは非情なんだろ? 毎日の小遣いから天引きだ。2カ月小遣いなしだな」


 というユージからの死刑宣告を受け……数秒前果てたJOLJUに続き、サクラもその場に崩れるのであった……。



 後日……サクラとJOLJUはしっかり小遣いはカットされた……


 もっとも……三日後、二人はこっそりなんだかんだ甘いエダから120ドルずつ貰い埋め合わせしてもらえたのであった……そのため、懲りることもなかったが……



「今度は勝つぞ!! 麻雀でもポーカーでも双六でも何でもこい!!」

「オイラも今度こそ勝って小遣いふやすJO!!」



 この単細胞な二人は全く懲りず、再戦を誓い合った。


 こうして、またいつの日か同じ墓穴を掘るのである……。


 

 この二人がギャンブルの魔性から目を覚ますのはいつの日になるのか……それは誰にも分からない……もしかしたら一生そんな日はこないのかもしれない……。




 これは、ある日の平和な家族の遊びの光景である。







「サクラとJOLJUの大決戦」ショートショート・コメディーでした。


今回はすごく短いショートショートのネタです。


いつもがいつもハードですごいことをしているわけではない、という話です。


しかしサクラもJOLJUも家族の中では馬鹿というかアホというか……

まぁこういう面もある、という話ですね。


ちなみに家族ゲーム大会は麻雀もやるしボン●ーマンやレースゲームなんかもあります。そう考えるとクロベ家も普通の家族です。


今度は飛鳥関係を書きたいですね~

今後も「黒い天使」短編集を宜しくお願いします。

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