表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使 中編 災厄者」シリーズ
31/206

「黒い天使・災厄者 vol 14」

「黒い天使・災厄者 vol 14」



市警の刑事と売春婦組織を見回る拓とサクラ。


何件目かあたったとき、サクラはあることに気付く。


そしてその時喧しい物音が聞こえてきた……

 クリス=ウォーカー警部補が案内役として手配したのは、風紀課刑事として2年目で27歳と若く、拓より背の低い黒人刑事サミュエル=デトリスだった。


 ウォーカー警部補としては、新人のサムに経験を積ませる目的と、ベテランたちだと下手に巻き込まれ事態が余計厄介な方向になることを恐れたのだろう。ただの聞き込みだったら問題ないが、何かあればその件に関してはFBIではなくNYPDの担当になる。


 まずダウンタウンの、その界隈では有名なポン引きや街角の売春婦たちの組合から当たり、徐々にランクを上げていった。中級規模以上の組織になると新人のデトリスには新領域でクロベ・ファミリーである拓のほうが詳しい。二時間の巡回は、バッチに怯え無抵抗なポン引きや化粧の濃い売春婦、マフィアの最下層のチンピラたちで何の成果もなかった。


 6番目に選んだ相手は、中の上クラスのコールガール組織だ。


「表の顔はファッションモデルの事務所。裏はコールガールやストリッパーとして送り込んでいます。ファッションモデル事務所といっても二流ですけどね。<ローズガーデン>という事務所ですが、マリー=ガドナーという女性が経営者です、捜査官。別名<マダム>と呼ばれ慕われているようです」

「まぁ、よくあるケースだな」

「他もそうだし日本でも中国でもそうだけど、どうして娼婦って花に喩えられるンだろーね。いや、意味は分かるけどサ。どうして皆発想が平凡で安易なネーミングしか付けられないのかねぇ~」

「大物はもっと複雑だから気にするな」

「そりゃタノシミだ♪」

 拓の後ろにはちゃんとサクラがついて回っている。サクラは<非認識化>を最低レベルで使っていた。だからこれまでの犯罪者や同行しているサムも、「拓が誰か相棒といる」とは認識しているが、それが10歳の子供とは気付いていない。


 事務所のあるビルに到着し、8階の事務所に向かって進む最中……一瞬サクラが足を止め、拓の服を掴んだ。


「なんだ?」


「……この辺りって治安はあまりよくない? ギャングやチンピラがヒャッハーっていつも銃撃戦しているとか?」

「1980年代はそうかもしれないけど、今のNYでそんな場所なんかあるか。ダウンタウンでもそこまで危険じゃないぞ」

「そりゃそーだ。銃規制もあるしねー」

 そういうと、サクラは地面から45口径の弾丸を掴み上げる。そしてそれを拓に手渡した。NY市は全米でもっとも拳銃所持の厳しい市の一つだ。市民は護身用のため拳銃携帯は出来ないし市内にはスポーツ射撃場もない。ビルは清潔で弾も古い物ではない。


「…………」


 普通、街中に弾は落ちていない。拓は黙ってその弾をデトリスに渡して意見を求めた。デトリスは意味が分からず拓を見るだけだ。だが拓にはいくつかの状況が予想できた。



 ……<狂犬>が使用していた銃は1911系45オートだ……。



 それだけではない。45口径は全米で一番使われている弾丸の一つだ。どこででも手に入る。しかしここは銃規制の厳しいNYだ。特に拳銃には煩い。



「どっかの馬鹿のプロファイリングじゃないけど、プロ意識だけあって銃の腕は素人のチンピラが、いざ使う前にスライド動かして装填したりするよね。あたしはたまにするんだよネ、薬室に弾があるのにスライド動かして一発どこかになくしちゃったり」

「実際は薬室にちゃんと弾は装填されていたのに、再装填……それで弾が一発、落ちる」


 普通のプロはちゃんと薬室に弾が入っているかいないかチェックすることに慣れている。そんな証拠が残るようなドジはしない。だが場慣れしていないチンピラが焦り仕事前にスライドを起こす……そういうミスはよくある事だ。同じように一般人が拳銃暴発事故を起こす一番の原因は薬室内の残弾の誤認によるものだ。



 <狂犬>の可能性、トラブルの可能性……そのどちらも考えられる。



 その時だ。ビルの奥から何かを叩き壊す音が聞こえた。



「どっちか分からないが、とにかく何かあったようだ」



 拓はショルダーホルスターから、ベレッタM96Dを抜いた。それを見てデトリスも慌ててヒップホルスターからグロック17を抜く。だがすぐに拓はデトリスに自制するよう命じた。



「ここは俺の指揮に従って下さい。けして安易に発砲しないように。何があっても、です」



 そういうと二人は頷き合い、奥にと進む。その後ろをのんびりとサクラが続いた。





「黒い天使・災厄者 vol 14」でした。



ちょっと短かったけど、サクラと拓の捜査編です。


ついに何か起きました!


ようやく黒い天使らしい、事件&事件編になります。


ついでにようやく主人公のサクラが出てきましたね。


まだまだサクラは好奇心だけの関わりあいですが。


さて、これからが事件本番です。



これからも「黒い天使・災厄者」を宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ