黒い天使短編「異世界ヒロインズ!」13
「異世界ヒロインズ!」13
ついに大魔術発動! 異世界の乙女たちを召喚!
あれ? 失敗? ああ女神は気絶中でしたね。
ということで強引にやってくるサクラたち!
ようやく異世界に降り立つ!
<ようこそ異世界へ>
***
<神聖国家ハゼルリング>の王都スバルリング。
その王城の一角に女神スゥララを祭る大聖堂があり、この大国で特別な才能を持つ優秀な大神官と魔術師、総勢20人が集まり、中央にある魔方陣の中で一心に魔力を集中させて、儀式を始めていた。
魔方陣の中央には、この神聖国家が建国以来神より授かった魔力の結晶のクリスタルが発光し浮遊している。
異世界から英雄を召喚する儀式は神聖国家ハゼルリングにとって最後の手段であり、女神であり主神であるスゥララの力を借りる、国の存亡をかけた大プロジェクトだ。召喚儀式の媒体であるクリスタルは、この神聖国家の有能な魔術師たちが何十年、何代にも渡り魔力を注ぎこんだ宝具で、召喚を実行すると、再び儀式可能になるまで最低でも百年は要する。
もはや百年など待てない。魔界との<門>は開き、すでに僻地では魔王軍の侵攻が始まっている。圧倒的な戦闘力と膨大な下等魔族の兵力の前に、神聖国軍は撃破され、敗北は目前まで迫っている。
神の力を得る……神にすがる……人類にとって最後の希望。
教皇にして国王であるスザエクス三世も、玉座からその様子を注視していた。
ついに魔力が最高点に達し、クリスタルを中心に時空が歪み、魔力の気流が小さな嵐のように駆け巡る。
これで後は女神スゥララが降臨し、異世界から勇者が召喚される!
……はずなのだが……。
それ以上、何も起きない。
伝承では、ここで神の世界へのゲートが開くはずで……術式も魔力も間違いなく十分のはずだが……?
困惑と戸惑いの声が漏れる中……突然それは起きた。
「なんかぽかんって光の空間が出てきたけど、これに入れってことカイ?」
「異世界側の儀式が始まったみたいだね」
「ついに出発なのデスカ?」
「あー、行くのはまっただJO~。さっきも言ったけど、これ、不完全並行次元転移で空間つなげただけだから、普通に入ってヘンなとこに飛ばされるかもしれないから危険だJO。しかし雑な仕事してるJO。これを補うのが女神サンのサポートで、本来は協力合体技なんだJO」
「ていうけど……気絶したまま起きへんど、あの女神」
「お前がぶん殴って気絶させたからでしょ? 加減も知らん奴め」
「どうしよか? 帰るか?」
「本当無責任の塊ですね、飛鳥は」
「水かけて起こすか? 水筒にたっぷり水あるし」
なんかすごい絶叫……。
「きゃぁああーー!! 何するんですか! このクソ幼女! 死ぬ! 死ぬ!! 女神様ぁぁああーー!!」
「あ……断末魔の悲鳴じゃないですか、コレ」
「お前もクソ幼女のくせに。ん? ……目覚めんな……?」
「なんかああいう拷問みたことあるケド……いいのかな?」
「気絶した人間に水をかけると、気管に入ってよくないと思うけど。でも神なら死なないでしょう、多分」
「あ、完全に気絶したJO」
「困ったのデス」
「アンタら悪魔だぁあああー!! うわぁあああーん!!」
時空の向こうで何が起きているのか、さっぱり分からない。
神の世界……とは、とても思えない。
国王スザエクス三世も、この召喚儀式の責任者である大魔術師カルーセスも、他の神官や魔術師、重臣たちも困惑顔で見守っている。
「術式は成功したはずです、陛下」
「ならばなぜ召喚されぬ?」
「この声は、神の会話でしょうか? 異世界の勇者殿たちか?」
「……ど……どうなっているのだ……?」
聞こえてくる会話は……そんな高貴な感じも神々しさもなく、ついでに勇者らしさもなく、まるで市政の子供たちの雑談のようなのだが……?
そんなことよりも、だ!
こうしている間もずっと召喚魔法は発動している。肝心の召喚ができないため、百年以上貯めた膨大な魔力が暴走をし始めた!
慌てる魔術師たち。だが術をここでやめるわけにはいかない!
そんなこんなをしているうちに、暴走した魔力に耐え切れず、宝具であるクリスタルに亀裂が! 慌てる魔術師たち! だがもう手遅れだった。
大魔術師カルーセスが儀式の中断を決断した直後、クリスタルは木っ端微塵に砕け散り、内包していた魔力は凄まじい爆発を引き起こした。
「クリスタルが! 儀式のための膨大な魔力が!!」
神の世界とのゲートも消え、魔力の残滓が周囲に漂っているだけだ。
終わりだ。召喚儀式は失敗した。
「我が神聖国家ハゼルリングの命運は、尽きてしまったのか!?」
愕然となる国王スザエクス三世。その横に控える大魔術師カルーセスも言葉を発することができない。
儀式は完全に失敗した上にクリスタルが砕け散った今、救国を賭けた神の力による勇者の出現……彼らの希望は消滅したのだ。
その場にいた関係者全員が、絶望と混乱で言葉を失う。
こんな事が起きるなんて、聞いていない。文献によれば女神が降臨してすぐに救世主である異世界の勇者がこの場に転移してくるはずだ。
失敗だ。彼らの命運は尽きた……。
絶望感が全体に広がる。
もう何も起きない。静寂だけだ。
と……その時だった。
魔力も何もかも消失した部屋の中央に、突然7人の少女と一匹のちびモンスター……もとい、ヘンな生命体が出現した。
「!?」
魔力も何もなく突然現れた少女たちに、王も魔術師たちも重臣たちも言葉を失う。
いうまでもない、JOLJUとサクラたち。そしてこの世界では一応<神の使途>ペストォカだった。
「お、ついた」とサクラ。
「コレ魔法か? 魔法なんか?」と飛鳥。
「今のは召喚魔法じゃなくてテレポートだよね? JOLJUの」とエダ。
「普段はこんなことしないんだけど……だって女神サン、サクラたちがボコボコにして気絶したままだJO。一応異世界<ワリシェトエ>に行くことは決めたわけだし……まぁ同次元内の異世界テレポートくらい別にオイラがやってもいいわけだし、こんくらいのこと失敗しないし」
「その程度なんやなぁ~異世界の神って」
「あのね。無知な皆に一言言っておくけど、この馬鹿は簡単にやってのけているけど、コレ十分暴走よ? 同一惑星文明内の並列時空転送なんて、相当高い科学力を持っていないとできない。設備もなく自前の力でできるのは上位の神だけ。銀河連合の長老たちが知ったら頭抱えて泣くから。普通なら懲罰モノだけど、そこの馬鹿は銀河の神や法律より上だもの」
「気にしちゃ駄目だよロザミアさん。JOLJUだもん」
「エダはあの馬鹿に甘すぎる」
雑談花咲くヒロインたち。
異世界に来たのに誰も驚いていない。
この娘たちは特別だからしょうがない。何せJOLJUの友人たちだ。
それより周りの異世界人たちのほうが、想定外の出来事に言葉を失っている。
「異世界ヒロインズ!」13でした。
ということでついに異世界です!
いきなり暴走しまくってますが。
そして女神様は結局気絶したままですが(笑
まぁ……JOLJUがいたら別にどうとでもなるという「それを言えばおしまいだー」の連中ですけど。
何でもできますね、JOLJU。まぁ神の神の神ですし。
何はともあれ、中世ファンタジーぽい異世界にやってきました!
ただサクラたちです。間違いなく異世界のほうを振り回します(笑
ということでこれからです。
これからも「黒い天使短編日常編」を宜しくお願いします。




