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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
201/206

黒い天使短編「異世界ヒロインズ!」12

「異世界ヒロインズ!」12


修学旅行……もとい異世界出発準備編ラスト!

JOLJUの安全対策は万全!

しかしこんなチートなアイテムばかり出していいのか?

***

<生活に注意だJO>



 JOLJUは、次の説明に入った。


「みんなが気を付けなきゃいけないのは以下の点だJO。まず大原則として<パラダイムシフト>を起こさないこと!」


 そういえば出発前にもそんなことを言っていたような。


「<パラダイムシフト>って何デスカ?」とマリー。


「その世界の文明、価値観、文化を一変させるような行為、道具は使わない、教えないって事。気をつけなきゃいけないのはロザミィ以外のあたしたち」とサクラ。


「17世紀くらいだと、多分境界線は産業革命以降だね。うん、地球も19世紀の近代から大きく発展したし」



 エダは相変わらず賢い。



 ちなみにロザミアは適応外。ロザミアからみれば地球の科学も中世みたいなもので大差はないし、ロザミアの科学力は到底中世人には理解出来ない。それにロザミアは宇宙旅行者で色んな文明差のある世界を行き来している。そういう問題がよく起きる宇宙ルールを知っていて、その加減にも慣れている。だから今更JOLJUが注意することはない。



「で、次~♪ 今回皆にコレも用意したけど、いつものをちょっと改造したJO~」



 そう言ってJOLJUが取り出したのは、銀色の金属製のブレスレットだ。人数分ある。

 これは全員知っている。



「<非認識化>のブレスレット? あたしやロザミィはいらんゾ?」



 <非認識化>とは<見えているけど認識できなくなる>という能力で、最大出力にすれば仲間以外からは完全に<姿を消す>ことができる。サクラは自前の能力にあり、ロザミアは携帯している多機能万能腕輪(多機能すぎて説明省略)にその機能があるし、サクラほどではないが自前の能力にもある。



 エダとセシルはたまに借りて使う。ナンパ防止のためだ。



「あれ? なんかボタンがついているけど、これ何?」


 サクラがブレスレットの横にある小さなボタンを見つけた。普段JOLJUが用意する<非認識化>ブレスレットにはないものだ。しかも赤、青、紫、緑の色がついている。



「<赤>がフォース・バリア発生装置。オイラ仕様だから惑星崩壊しても無事だJO。で、<青>は浄水殺菌機能~。押すと光が出て飲み物を除菌してくれるJO」


「水? 重要なん? ソレ」


「みんな、中世を甘くみちゃダメだJO。水は安全だと思っているけど、それは間違いだJO。潔癖で安全な水って中々入手大変なんだJO? 殺菌されていないから色んな危ない細菌とかあったり腐ってたりするもん」


「あー……赤痢とか大腸菌とかコレラとかあるな」


「井戸水やから美味い! ンやないんかい?」


「ないない。泥水だったり川の水だったりする。だからあたしは発展途上国に行くときは水道水を水筒に入れていくし、ないときはペットボトルじゃなくて缶ジュースを飲むもん。安全に水道水が美味しく飲めるのって下手したら日本だけよ?」


「そうだね。あたしも昔そうしていたよ? ユージもJOLJUも基本は缶ジュースを飲めって口煩かったの。ペットボトルの水も余裕があるときは煮沸していたもの」


 エダの<昔>とは<AL事件>の時で、あの時も世界は崩壊して浄水施設は稼働しておらず、ユージは「水は安心だと思うな」と口煩かった。そこは公衆衛生学もやる医者だし、下手したら食当たりでも死ぬ世界だ。



「昔(「AL」世界の時です)はギリギリペットボトルでもよかったけど、今度はペットボトルがまだ開発されていない異世界だからペットボトルの飲料は禁止だJO。あ、缶はギリギリいいJO。そのくらいなら誤魔化すから」


「…………」



 顔を見合わせせる一同。



 実は全員ペットボトルの飲み物を結構持ってきている。そういうことは出発前に言え!



 しかし全員思った。「原住民が見てないときならいいや」と。飲み終わったら潰して跡形もなく燃やせばバレないバレない。




「で! そういう事情だから当然食事の時とか困るじゃん? 多分ワインやビールが出ると思うんだJO」

「中世や近世だとそうなるよね。歴史で習った」とエダ。


「ボ……ボクはお酒、飲めないのデス~」

「ウチも苦手や! お酒不味いヤン!」



 完全未成年の飛鳥とマリーが顔を顰める。こういうところは真面目な飛鳥だ。



「あたし、お酒弱いよ?」



 エダは国によっては飲酒可能な19歳。ただ、あまり好きではない。シャンパンや甘口のロゼやライトなワインは飲むが、白人としては下戸の部類で、グラス三杯以上は飲むと酔っぱらう。エダは酔うと甘え癖があって、家庭以外では飲まないようにしている。



 しかし中世、近世の食卓でビールやワインは子供でも飲んでいた。酒が好まれたわけではなく、それだけ水はあまり清潔ではなく危険で貴重だった。酒は腐らないし栄養も取れる。そういう時代だ。



「なので、だJO。この<紫>のボタンを押すと体内に特殊なアルコール分解粒子が放出されるから……簡単にいうとアルコールを無力にさせるJO。どんなにお酒を飲んでも酔わないし肝臓にも負担ゼロだJO」



 今回のJOLJUは色々準備がいい。



「酔っぱらって変な男に連れていかれても困りますしね」

「あたしも合法的に飲酒OKか~! あはははー、飲んでやろ」


 お酒はたまに悪戯で盗み飲むしか許されないサクラと、社交上ワインやシャンパンくらいは飲むこともあるので未成年だが飲んできたセシルもひと先ず安心する。



 一人……飲酒が趣味になっているロザミアだけは難しい顔になる。ロザミアはユージ並みに飲む。今では色んな世界の酒を楽しむのも数少ない趣味の一つだ。まぁ、使わなければいいだけだから別にいいが。



「<緑>は何や?」


 残るは最後のボタン。


「何があるか分からないし、食事で当たったりするかもじゃん? 食べ物でも魔法でも怪我でも……バリアあるから怪我はないだろうけど……なんか体調悪くなったらそれ押したらいいJO。どんな病原体がウヨウヨしてるか分からないし、狂犬病とか肝炎とかペストとか結核菌とか、そういう現代地球の先進国では少なくなった病気にかかるかもしんないでしょ? そん時はこの<緑>のボタン一つで復活するJO~」



 完全解毒+回復アイテム。これこそ魔法の世界だが、こいつの道具はすべて科学アイテムだ。地球人でも到底理解できない科学力だからJOLJUも原理の説明はしない。



 まぁ……JOLJUに言わせたら魔法も科学の範疇らしいが。



 とにかく、これで準備万端だ。



「今回は随分秘密道具、大盤振る舞いやな? お前、普段冒険いくときもこれくらい用意しろや!」

「いつもの冒険は自己責任だJO! 今回は特別だから特別なの!」

「それにしたって気前いいな」



 これだけ特別な道具があれば、まず安全だろう。ドラ〇もんだってこんなに親切ではない。



「コレにサインしたモン」



 そういうとJOLJUは四次元ポケットから一枚の紙……ユージと交わした誓約書を皆に見せる。


 何か起きた時はJOLJUがユージにボコられた挙句永遠にお小遣いナシになる。何よりも貴重なニート生活が破綻する! そりゃあJOLJUだって真面目になるってもんだ。家族であるエダは勿論、セシル、マリーの名前も記されている。


 ここまで完全バックアップする、というのがユージとの約束だ。ここまで徹底的に安全を保障しないと女の子だけで異世界にいくなんて許可は下りない。



「ところで私の名前はないみたいだけど?」


 ロザミアにはない。



「保護者のオイラがいるじゃん」

「別に貴方の保護なんていらないけど。自分でなんとかするわ」

「でもロザミアさんもこの腕輪はあったほうがいいんじゃないかな?」とエダ。


 腕輪もロザミアの分はない。

 しかし必要ない。



「だってロザミィ、そもそも<順応エノラ>投与済みじゃん」

「それもそうね」



 <エノラ>は生体順応に特化した宇宙世界用の生体ナノマシン。異世界以上に環境な複雑な宇宙世界でも順応できるように人体を強化する、スーパーアイテムだ。宇宙世界では性能の差はあるが基本装備のようなものでほとんどの宇宙文明の生命体はまず投与されている。



「じゃああたしもいらない?」


 エダも投与されている。


「エダのは<順応型>ではなくて<才能覚醒型特化>だから、カバーしてない能力もあるJO。ま、上書きすればいいだけなんだけど、これ以上エダを超人にすると地球の生活に影響でるから今回は道具でカバーだJO」


「あたしもいらん気がするけど、便利だからもらっとく」


 サクラの場合は<エノラ>はないが、自身の能力が高く、一発回復以外は自前の能力で対処できる。必要ではないが、サクラの場合能力開放になり、他の副反応も起きるし周りも巻き込む、だからサクラはアリ。もっとも……渡さないと欲しがるだろうから面倒なので渡したという説もある。



「後、困ったときや連絡はスマホが使えるようにするから電話してねー。ネットもつながるから暇つぶしもできるけど、極力見られないでねー」

「なんで異世界でスマホが使えンの?」

「オイラが時空間跳躍できる通信衛星打ち上げといたモン。地球ともつながるJO~。ただ時間軸の差分が発生するしユージにしか電話はつながらないケド。あ、バッテリーはオイラが一発充電器もってるからモーマンタイ~」



 もうなんでもアリになってきた。



「良かった。寂しくなったらユージの声が聞けるね! うん、助かる!」


と、エダは今回ばかりはこの反則に怒ることなく喜んだ。



「とはいえ体感時間軸が違うから頻繁だとユージが困るから、ユージへの電話は保険だJO? ユージ的にはこっちの二日が30分くらいだし。メールはいいJO~」



 これはエダ限定のサービス+自分たち以外に病人や負傷者が出た場合のホットラインだ。今回非常時用の医療用バッグも持ってきていて救命処置に必要なものはすべて入っている。使えるのはエダだけだから、完全にエダ限定サービスに近い。



 とはいえ電話は使わなくてもインターネットが使えたり、スマホに保存している動画や音楽やゲームができるのは有難い。これはサクラや飛鳥といったスマホが日常アイテムになっている世代には嬉しい。



 しかし世の中には異世界にいく物語は沢山あれど、ここまで準備万端なことはそうないのではないか。

 しかも異世界の神が能力を与えてくれるのではなく、もっとチートなJOLJUが異世界のルール完全無視して事前に用意して乗り込んでいくわけだから……普通の異世界転移冒険とは全然違う。確かにここまでくると<修学旅行>だ。




 世の中、相手が悪いということもある……という一例である。



 神の免許を持つ、神以上の超生命体は、ものすっごく自己中なのであった。




「異世界ヒロインズ!」12でした。



JOLJU秘密道具大盤振る舞いです!


普段はこんなもの貸してくれません。ついでに「AL」の時のほうがよほど大事件ですがその時も出していません。まぁ「AL」は人類の命運がかかった事件で、そういう時は口出ししない節度がJOLJUにありましたが。


今回は異世界を救う! なんて高尚な意思はなく、まさに修学旅行みたいなノリだから色々出しています。なんかあると怒られますからね。ユージに。「AL」のJOLJUと「黒い天使」のJOLJUは事件当時者で責任があるか、何の責任もなくなった平和なニートかの違いです。このカバモンは平和になったほうが無責任です。


ということでサクラたち一行はこれで何があっても死にません。


完全に遊び感覚で異世界の魔王を倒す気です。こうなると倒される魔王のほうが可哀想な気すらします。よりにもよって勇者一行がこんなチートだなんて聞いていない。どんなに悪の魔神様の加護が凄くてもJOLJUには敵わないわけですし。


異世界にチートキャラが行く話は沢山あれど、次元が違う神が乗り込んでいくなんて話はないかも。


そしてついに次回から異世界編です。


そんでもってサクラたちです。


素直に……なんて頭からない、自己中の塊です。


こんな感じでこのシリーズはズイズイ進んでいきます。


これからも「黒い天使短編集日常編」を宜しくお願いします。

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