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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使 中編 災厄者」シリーズ
20/208

「黒い天使・災厄者 vol 3」

「黒い天使・災厄者 vol 3」


超人<狂犬>の退治をすることになったユージ。


そんなとき、サクラとJOLJUが帰宅し、さっそく事件に関心を持ち首を突っ込み始めた。


ユージはサクラの参加を嫌うが、そうもいかない状況になりつつ……。



「ふーーーむふむふむ♪」



 サクラはテーブルの上に広げられた資料を覗き込みながら楽しそうに微笑んでいる。


「オマエなぁ……勝手に捜査資料を見るな」

「自宅に仕事持ち込んだユージがわるーい♪」


 結局時間が時間だったので、ユージたちはそのまま資料を自宅に持ち帰り、自宅で拓と捜査会議を行っていた。そして運悪く、この日はサクラたちが在宅していた。そして当然、当たり前のようにユージたちの捜査会議に興味を示した。


「オマエら、しばらくヨーロッパで遊んでるんじゃなかったのか?」

「自宅に帰っちゃいかんのかい」

「だJO」

 勝手に資料を読んでいたサクラとJOLJUが口々に文句を吐く。いつも勝手に遊びに出て行っては連絡なしに帰ってくる、それがサクラたちである。半分飼い猫半分野良猫のようなものだ。


「しかし凄惨な事件だねぇ」

「人間がここまでできるとはすごいJO」

「世の中にはすごいのがいるもんだ」と拓も同意する。

「お前ら随分軽くいうなぁ……」

とうんざり顔で零すユージ。

「この化物と戦うのは俺なんだぞ」

「おお! 化物同士の夢の対決♪ ふむ……しかしこんなアメコミに出てきそうなマッチョ、ユージ勝てるのぉ? サクラちゃん手ぇ貸そうか?」


 心なしウキウキというサクラ。だがユージは「いらん。手を出さんでいい」と一蹴した。サクラがいれば地球上の生命体であればどんな化け物、怪物でもなんとかなるだろう。だが公式な捜査として受けた以上サクラの存在がバレるのも介入させるのもまずい。


 それに飛鳥と違いユージは超越者であるサクラが自分の事件に介入することを嫌う。対処が完全にどうにもならない案件を除き、サクラの能力を使って事件を解決するのはユージの矜持が許さない。もちろんサクラもその事は承知している。


「ま、ユージもサクラにできることがあれば頼むさ」


 拓がそう場をいなす。ユージが敵わないようであればあとは軍隊か反則的能力を使ったサクラでなければどうにもなるまい。だがそれでは事件の本質は分からないし、その最悪の事態はユージの死を意味する。


「ではサクラちゃんも資料を読む権利がある♪ ふむふむ」

「読むのはいいが勝手に持ち出すなよ」

「ほいほい」


「で? この化物はどうしてマシューを殺したんだ?」


「狙われていることを知っていた。マフィアどもから連絡はないが、そのあたりは隠したい事情があるんだろう」

「殺されたくなくて泣きついてきたんだから、連絡あるさ」

と拓は暢気にコーヒーを啜る。


「じゃあ問題はユージがどうやってこの化け物を倒すかだ♪」


「身長で20センチ……体重は倍近く差があるJO?」

「いくらユージでも完全にクラス別すぎない?」


 サクラは男……彼らのいう<狂犬>の写っている写真を見つめた。拓は洞察した通り2mを越す身長にユージの二倍以上ある筋肉。格闘技のランクでいえば三つは階級差がある。いくらユージのパンチや蹴りが強力でもこの男を倒すことは出来ないだろう。しかも相手は素手で人間を引き裂くような男で、話や資料によれば格闘技の経験もあるようだ。とすればユージが有利な点は武器を用いるしかない。


「ヴァトス使うJO?」


 ヴァトスというのはゲ・エイル星人が愛用する白兵武器で、特殊な形状の剣だ。切れ味は地球上あらゆる刃物よりも切れる。昔、ユージが愛用していたもので、サクラのラファ同様基本的にはJOLJUが使用を限定させているものだ。そのJOLJUがユージの使用の有無を確認していることからすると、JOLJUとしてもこのユージの戦いに不安を覚えているらしい。


 もっとも、相手が相当の格闘技の使い手であれば刀術の効果も絶対ではない。


 とすれば、残りは銃になる。


「射殺しかないじゃん。銃ならユージ勝つし。しかし世紀のドリームマッチがソレだとツマランな」

銃だけは間違いなくユージの方が上だ。


「こいつは体を防弾で固めている。撃つなら顔しかない。顔を撃てばこいつの正体も事件の真相も分からなくなる。最後の手段だ」


 答えながらユージはため息をついた。ユージとしてはマフィア連中の思惑に従い殺して始末することはしたくない。生かして捕まえれば相当面白い裏社会の話が聞けるはずだが、サクラやJOLJUが言うように殺すことは容易だが果たして生きて無力化できるかどうか……どう考えても自分が得することはなさそうだ。


「サクラもJOLJUも、この件、エダには言うなよ」


 エダが聞けば、彼女は食が喉に通らなくなるほど心配するのは目に見えている。ユージにとってはそっちも気苦労だ。


「もし標的が俺個人に及ぶようならサクラにも手伝ってもらう。それまではとりあえず、俺一人でやってみる」

 ユージはそういうと資料を置いた。


 ユージに護衛依頼の電話が入ったのは、翌日の昼だった。







 その日の夜。早くも舞台は整えられた。


 NYの18番街。その一角にあるビルの二階のイタリアンレストランにユージの姿はあった。店内にはジョンソンの組織の中核幹部ロック=フェルトンと、その取巻きの下端の護衛が5人。店内は貸し切りで、シェフたちを除けばユージを加えた7人しかいない。ロックは今、ワインとイタリアンのフルコース・ディナーを楽しんでいた。取巻きたちは食べない。ユージは同席を勧められたが断った。


 ロックがターゲットの最有力候補に上がったのは簡単である。先日殺害されたマシュー=リーベルの直属の上役であり、さらに元々ターゲット候補でもあった。リーベルの前に殺害された男がリーベルの名前を出したか、リーベルと一緒にロックの名前を出した可能性は大きい、という結論になり、ユージが呼ばれたということだ。ロックが組織内でどんな仕事を担当していたかは、一先ず聞かない事にした。


 この結論に行き着くまで一両日要したのは理由がある。まずマフィア側もロックに裏事業の整理をさせつつ、同時に他のターゲット候補になりそうな要人を海外に逃がしたり余所の街に飛ばしたりして、<狂犬>にターゲットがロックしかない、と思わせる状況を作り上げるため一日という時間は必要だった。


 こうして<釣り餌>としてのロック=フェルトンが完成し、晴れてユージに依頼がきたわけだ。


「ここまでやって、<狂犬>が来なかったら大笑いだ」


 窓の外を見ながら、ユージは呟いた。気分はジョン・コナーを守るターミネーターの気分だ。もっとも、襲ってくるほうがターミネーターのような戦闘力の持ち主だが。


 ユージは愛用のデザートイーグルに45コンパクトのバックアップに加え大型ナイフを持ち、防弾防刀のレザージャケットを着込み、体にも特別素材の衝撃吸収ベストを着て手甲グローブ、肘膝にはプロテクターをつけている。一見すると普通の私服だが、ユージはユージなりに最新技術の鎧に身を包んでいる。さらに12ゲージのスラッグを8発装填してあるベネリM3ショットガンを持っていた。


 さらにユージは窓の外……対面のビルにサクラとJOLJUが姿を消して待機し(気分としてはただの傍観者だが)、さらに1ブロックはなれたところに拓が車内で待機している。サクラは連絡と監視のためで戦闘には加わらない。サクラの存在を公にはできないし、乱闘になった場合、姿を消して気づかれなかったとしても巻き込まれれば、身体的には10歳の女の子でしかないサクラはちょっとした一撃でも致命傷になり兼ねない。


 ユージほど最新でもないが、取巻きたちも銃と防弾チョッキを堂々とつけ、ユージの目を気にすることなく晒している。NY市は全米屈指の銃規制の厳しい街だから、これだけでも逮捕対象だ。だがユージもこの程度は見逃している。


「しかし何も食べなくていいのか? ミスタークロベ。なんでも奢ってやる、この店の七面鳥のパテは最高だぞ?」


「腹が重いと格闘技なんかできん。そんなことも知らんのか?」


「真面目でいいことだねぇ」


 ロックとユージは今回初対面である。事情はお互いわかっているが友好的関係を築いているわけではない。


「断っておくが……もしヤツが現れて銃撃戦になった時、間違っても俺に銃口を向けるなよ? たとえヤツを狙ったものでも……」ユージは取巻きたちを一瞥し「俺に銃口が向けば、それが誰でも射殺する。ヤツでも、お前らでも、関係なくだ」


 ドサクサに紛れてマフィア側がユージを殺す……その可能性は十分あった。ユージの重装備はそっちの警戒もあってだ。


「そんなこと分かっているよ、死神さん」


 ロックは嫌味ったらしく微笑した。




 ロックが食後酒に入り、このイタリアンレストランに入って2時間が経とうとしている、その時だった。


 ふと、ユージは何か<通常ではない雰囲気>を感じ、顔を上げた。


 その直後、脳内にサクラの言葉が滑り込んできた。



(ユージ、ヘンな気配探知♪)



(どこだ?)



 二人、それぞれ違う嗅覚で異変に気づいていた。



(わかんにゃい。あたしからは見えん……)



 サクラはそのまま空中を飛んで表通りのほうを見た。人ごみはまだ多いがそれらしい人間は見えない。



(ということはもうビルの中じゃない?)



 サクラが監視しているのは表通りだけだ。ビルは密集している。別の場所からビル伝いに移動してきたのならこの位置からだと見えない。


「JOLJUはここで待機!」

「了解だJO~」


 サクラはさらに上に向かって飛ぶ。そして屋上が見下ろせる高度まで上がった。


 屋上はよくあるNYスタイルで、レンガ造りで看板などはなく、ダクトや空調の室外機があるだけで、無人だ。



 が、サクラは異変を目ざとく見つけた。隣のビルと、ユージたちのいるビルの通気ダクトのひとつが剥がされていた。間違いない、侵入の形跡だ。



(ユージ! コードレッドコードレッド! 侵入確認)



 サクラがテレパシーで伝えたその直後、爆発音が響き、ビルが小刻みに揺れた。





「黒い天使・災厄者 vol 3」でした。


ということで、ようやく主人公、サクラとJOLJU登場です。


今回はあくまでユージ・メインのシリーズなのでサクラは補助的立ちまわりです。

飛鳥と違ってユージはサクラが事件に関わるのを嫌っているので。けしてサクラの身を案じているわけではないです(笑


ということで次回、ついにユージと<狂犬>、激突必死!


これからも「黒い天使・災厄者」を宜しくお願いします。


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