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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
189/206

黒い天使短編「JOLJUのロボット大戦」6END

「JOLJUのロボット大戦」6



JOLJUたち完全勝利!

こうして米軍は負けた。

戦闘終了の音声に微笑むJOLJU。

「オイラは元気にやってるJO」……。

そして吃驚のオチ!

***




「終わったJO」



 <ナイハード>を着陸させたJOLJUは、エンジンを切らずキャノピーを開き、コクピットから出て終わった模擬戦跡を見た。



 フルボッコにされた米軍が逃げていく。


 試合時間の1時間が経過した。



 つい2分程前「これで模擬戦は終了だJO~」と通告したので、米軍も悔しそうに渋々撤退していく。



 見渡せば、いくつも細い黒煙が上がっていた。戦闘機や武装ヘリやドローンや戦車がたくさん壊れた。


 しかし死人は出ていない。多分……。



「これで当分米国大統領は私に逆らえないわ」

 とロザミアは鼻高々だ。


 ちなみにJOLJUとロザミアは一度も撃墜されていない。


 撃墜ポイントはサクラと自動AIがそれぞれ2回の計4回。一方米軍側の被害は30機以上で歩兵も全員負傷したから完全全滅だ。



「ふふふっ! これがサクラちゃんの底力だ! 思い知ったか米軍!!」



 サクラもなんとかライフポイントの最後の1つは守り切ったから、生意気な啖呵を吐いている。なんだかんだいって後半はサクラの操縦技術も上がり、被弾はしたもののなんとかフォースバリアは守り切ったから大満足だ。撃墜ギリギリまで削られていたけど。



 ということで我儘な女二人は勝利で粋がっているが、一番活躍したJOLJUは特に興奮はなかった。



 ……まぁ……勝って当然だし……どうせ遊びだし……。



 JOLJUには政治も見栄もない。

 ただ単純に、思う存分<ナイハード>を動かせたことは楽しかった。

 ちゃんと動くことも嬉しい。


 この600年前……大親友の愛機で、JOLJUの愛機でもあった惑星パラ伝説のアーマー。それが600年という年月を経て、肝心のフィルニスト帝国が滅んだ今も尚、昔と変わらず動き続けていく。それがJOLJUには嬉しかった。



「いつかは地球の科学も進んで、こんなアーマーなんて玩具になっちゃうんだろうけど、それでもアーマーはオイラたちパラ人の歴史を語る上で重要だJO。いつまでも大事にしないと、だJO」



 そういうとJOLJUはコクピットに戻り、エンジンの戦闘モード解除のボタンを押した。

 その時だ。



「グゼリッド・クレア(作戦終了だ)」



 男の声がした。登録されている作戦終了の自動音声だ。



 これを聞いたJOLJUは、なんともいえない満足そうな笑顔を浮かべた。


 ほとんどの人間は知らない。

 この声は神帝アーガス=パプテシロスの肉声なのだ。

 神帝の肉声が残されていることは、JOLJUしか知らない。

 大親友の魂は、このアーマーの中にだけ残っている。


 この声を、JOLJUは何度聞いたかわからない。


 アーガスが亡くなってしばらくは、この声を聞くたびに涙が零れた。


 それが今は笑みが浮かべられるようになった。


 JOLJUはパラを思い出として整理して、今は地球のJOLJUとして生きている。



「オイラは元気でやってるJO。アーガス」


 そういうと、JOLJUは通常モードで<ナイハード>を発進させた。


 この後は戦艦<ヴィスカバル>の倉庫に収容し、また気が向いたとき動かして遊ぶ。



 戦争に使うことはない。



 だからきっと後数百年、このアーマーは残るだろう。





***





 こうしてJOLJUのアーマー遊びは終わり、三人は一日楽しんで帰ってきた。


 そして後日。


 仕事から帰ってパソコンを立ち上げたユージは、米国政府からの報告書がメールで届いているのを見つけた。



 何気に見て、仰天した。



「なんだこりゃ」



 米軍の被害報告。



「あのパラ人は本当に侵略の意図は今はないのか」という、思いっきりシリアスに検討と調査と内偵をユージに依頼……というか命令。骨董品相手に本気で戦ってフルボッコにされたのだ。あの結果に感心するのではなく米国政府は恐怖した。

 当然だ。米軍最新兵器で圧倒的物量を投下したのに女と子供とポケモン相手に遊ばれ、おちょくられて負けたのだ。あのまま10倍の兵力を投入したとしても勝てそうにない。

 ということは、あの三人がちょっとその気になったら地球側は完全に敗北して征服される現実を米国は今更痛感し、本気で心配している。

 JOLJUはともかく残り二人は「ムカついた」という理由だけでやりかねない。



 その責任を、家長であり三人の面倒を見ているユージに、米国は真剣に問い合わせてきたのだ。



 そういうことは本人に言うべきだが、言ってしまうと恥の上塗りだし、それで当人たちの機嫌を損なわれても困る。多分ものすごく勝ち誇った嫌味いっぱいに冷笑するだけだろうが。


 ということで米国政府の苦情……というか八つ当たりはユージに集中した。




「だからやりすぎるな、と言ったのに」



 そんなことを聞く三人ではない。


 そしてあの三人には地球を侵略する気は微塵もない。あの三人は地球の今の生活が好きだし楽しい。平和な生活も気に入っているし、ユージの言うことはちゃんと聞く。たまに暴走するが。


 だが政府は真剣で、ちゃんとした報告書を出せ! と何故かユージには偉そうに命じてきていた。ユージはちょっと政府にムカついた。あの馬鹿三人を飼っているのはユージとエダだ。何で怯えた側から文句を言われなきゃいけないのだ? むしろ米国はユージにお願いする立場じゃないのか!?



 そして最後に米国は嫌味のように被害報告と模擬戦経費を記載していた。



「……は……?」




 米軍の被害と経費、約4億ドル。



 おもいっきり嫌味に太文字ゴシック字で書いてあった。幸い死者は出なかったし、この費用を出せ、とは言わなかったが。



 ……大人げないのはどっちだ……!

 ……なんで俺に苦情を言ってくるんだ……!!



 怒り散らしたかったが、哀しい哉ユージはFBIで連邦政府職員なので、腹は立つが報告書を出さないといけない。何でこんな目にあうのか、この理不尽に我慢しなければいけない。



 ただ向かっ腹なので



「あの三馬鹿に侵略の意志は現在はありません。自分とエダが存命な内は! 俺はともかくエダに何かあれば……事故でも病気でも暗殺でもなんでも死ねば保障はありません! パワハラもセクハラも阿呆な馬鹿男のナンパも芸能界スカウトもパパラッチもなく、生活を監視したり干渉したりせず、米国の政治や物価高や変な嫌がらせを受けてエダが不快に思ったりしても保障しかねます! エダに何かあれば三馬鹿は暴走します。そうなれば俺でも止められません。米国はもちろん、世界が侵略を回避したいと願うのであれば、我が家の平和にご協力を!!」



 と……怒り心頭で報告書を書き、送り付けた。こいつも割と大人げない。



 そう……地球が侵略されないかどうかはユージよりエダにかかっている。三人ともユージよりエダが大好きなのだから。


 クロベ・ファミリーの王女ことエダの身に何かあったときは、あの三馬鹿は地球くらい侵略してしまう。あの三馬鹿を餌付けしている本当の飼い主はエダなのだ!



 ……あとは勝手に慌てふためけ!!



 そんな気分でユージはパソコンを閉じた。




 その後……。



 このメールを受け取った米国大統領と米国国防総省と軍は案の定慌てふためき……。



『いかにエダ=ファーロングの生活の平穏を維持するか?』という、くだらない議題を国家のトップたちが真剣に討論しあい、エダ(今はただの大学生なんですけどね)の価値がこれまで以上の重要な存在となり、各政府機関の最重要極秘指令として阿呆らしい命令が各方面に通達されたり、真剣に護衛計画が練られたり、ユージにもっと休暇を与えて家族サービスさせて宥めるべきだ、など馬鹿らしいことを検討するため連日会議がもたれたが……その米国と世界の緊張は、また別の物語である。


「JOLJUのロボット大戦」6でした。



ということでこのシリーズも完結です。

基本遊んだだけの話ですが……最後のJOLJUがちょこっとしんみりします。

JOLJUとアーガスの友情が垣間見れる瞬間です。そして<パラのJOLJU>から<地球のJOLJU>に変わったわけです。ちなみにアーガス君の死が正式に政府が認めたのはなんと没後120年後で、その死はJOLJUだけが秘密の場所で看取ったので国民は正確な没年日は知らず、半ば守護神的に扱われていたので認定が遅れたわけですが、JOLJU自身があまりアーガスの死を語らなかったのも理由の一つです。実はそれくらい特別友情が強いのがJOLJUです。


サクラもこんなセンチメンタルなJOLJUは知りませんね。


ユージがラストにオチで出てきたのは、オチでもありますがもう一つ意味があります。

昔のアーガスのポジションが、今のJOLJUにとってはユージです。親友の世代交代ですね。この二人の友情がどうして厚いかは姉妹作「AL」のほうで確認できます。


次もコメディー系のヨテイです。


これからも「黒い天使短編日常編」を宜しくお願いします。

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