黒い天使短編 「猫になったサクラ」後編
「猫になったサクラ」後編
サクラがニャンコになった!?
皆出て行って絶望的!
もはやサクラに為す術なし??
が
まさかの大展開!
***
誰もサクラ(人間)には気づかない。
飛鳥は仔猫さくらを連れて、客間にいってしまった。遊んでいるようだ。
JOLJUは目を覚ましたが、サクラの顔を見るなり「べぇー!」とあかんべぇーして、どこかに行ってしまった。
JOLJUを叱る事が出来るユージも、ドタバタしている間に出社した。
どうにもならない。
「このまま……サクラちゃんは消えるのか……にゃんこと同化して……くそ、あの夢は正夢だったのかぁ……」
そのくらいの覚醒能力はある。
あの夢が未来視だとしたら……段々<人間>のサクラの自我は薄まり、完全に猫になってしまう。JOLJUは馬鹿だが、力を使う時中途半端な事は起きない。今のサクラの自我が残っているのはサクラの存在能力だ。人間の能力ではないが、禁じられたサクラの能力の中に、<本体移動>の能力がある。
サクラが本気になって本能をフル回転させた時だけできる能力で、今の肉体が持たなくなった時、新しい本体を作って自分の魂を移動させる能力だ。恐らくその能力が発動して、今、魂が別離しているのだろう。
だがそれも長くは持たない。
サクラもこの能力は自分の意志で使ったことがなく、緊急避難で生命の危機に陥った時にだけ発動する。過去一度だけ発動させたが、その時自我が保てたのは僅か2時間だ。
限界は分からないが、数時間も続かない……と思う。
そしてJOLJUを怒らせて、あの馬鹿はどこかに行ってしまったので、いつ帰ってくるか分からない。今回ばかりは超科学力を持っているロザミアでも対応できない。正に完全に神の領域だ。
絶望した……。
「このまま猫として暮らすのか……もしくはカバモンに土下座するか……」
どっちも嫌だ。なんだこの究極の選択は? ……いや、土下座しろよ(笑
「まぁ……猫の生活も面白いかもしれん……今だって半野良猫みたいなもんだしなぁ……」
しみじみと自分の短い人間の人生を恋しがる。
JOLJUは単純だから、数日もすればJOLJUの機嫌は直るかもしれない。その頃、もう人間の自我はなくなっているかもしれないし、第一言葉が通じないかも……。あ、そんなことないか、確かJOLJUは動物とも会話ができたから。全然ハッピーにはなれないけど。
「あたしが何か悪いことでもしたか? (している) ……ああ、神様。このあたしを救いたまえ~。カバモン以外の神様ぁああ~」
しかし残酷かな。JOLJU以外に<神>の知り合いはいない。
もう何もやる気をなくし、ソファーに寝ころぶサクラ。
すると……なんか小さな生き物がいつのまにかやってくると、サクラの顔を舐めた。
「みぃーみぃー」
「なんだ、猫になったあたしか。いや、自分で自分を慰めても仕方がなくない?」
そこにいたのは仔猫さくらだった。
確かに可愛い猫、さすがはサクラの化身だ……とサクラは思ったが、全然ハッピーにはならない。
「飛鳥はアホだからまだいい。ユージはなんだ!? 娘が猫にされて平然としているなんて、おかしいんじゃないの!? 止めろよ!! どういう神経してンだあの男は!」
なんちゅう親だ!
世界で唯一(厳密には三人いるが)JOLJUに対して説教できる立場をもつのに、この暴挙を許すなんて常識あるのか!? ユージの理性は大丈夫か!?
しかしその怒りも虚しい。もうじき怒る事もできず、ただの愛玩動物になってしまう。
絶望だ。
と……その時だった。
玄関のドアが開いた。
「さくらにゃん、いる? さくらにゃーん」
「みぃ!」
仔猫さくらがサクラの上から飛び降り、玄関に駆けて行った。
そこにいたのはエダだった。
やってきた仔猫さくらを笑顔で抱き上げるエダ。
それを見てサクラは嘆息した。
……エダまであたしのことより猫サクラちゃん派か……。
泣こうかしら? いや、鳴くか? 今だと「みぃーみぃー」と声が出そうな気がする。
しかし……エダは違った。
「あ、サクラも起きたの? ちゃんとご飯食べた?」
「え!? エダにはあたしが見えるの!?」
「うん。かなり視づらくなっているけど視えるよ?」
救世主、キター!!
そうだ、エダがいた!
エダは第六感覚醒している。エダは霊体でも視ようと思えば見える!
これは唯一の希望の光!
思わずサクラは駆け出し、エダにしがみついた。
「えだぁぁぁぁー!! なんとかしてぇーーー!!」
「ど、どうしたの? サクラ」
「カバモンとユージのアホが苛めるぅっ!!」
「え? そうなの」
「早く元に戻してぇぇー!!」
「サクラ、自分で戻れないの?」
「戻れないぃぃぃ!!」
「元に戻すの<非認識化>だよ? 今最強レベルになっているよ?」
「んん??」
その瞬間……サクラは全て理解した。
***
エダ特製のパスタを食べるサクラと飛鳥とJOLJU。そして足元で昼のごはんを食べている仔猫のさくら。
「なんや、起きとったんなら言えや、サクラよ」
「…………」
仏頂面でパスタを食べるしかないサクラ。
なんてことはない。全て勘違いだった。
そもそも勘違いと偶然が見事に重なった……ただのサクラの一人ボケだった。
まず、不眠と疲労が失敗の元。
昨日疲れ切って帰宅したサクラは、半分寝ぼけながら「起こさないでよ! ぐっすり寝かせて~!」と、フラフラと寝室に向かったが、この時そういえば日本人の客がいて猫用のキャリーケースがあった。
エダの大学の日本人の友達が一時帰国するというので、そこで飼われていた<仔猫さくら>を預かったのだ。日本人ならば愛猫に<さくら>と名付けるのはよくあることだ。しかしサクラはいち早く寝たかったから、そんな事情は知らなかった。
そしてサクラは邪魔されず爆睡したいがため、自室からJOLJUを追い出した上に<非認識化>を最強にしてから寝た。どうやら力の加減を間違えて、それをオフにするのをすっかり忘れていた。
能力を持たないユージと飛鳥がサクラに気づくはずがない。
エダが気づいたのは、第六感覚醒しているからだ。
そしてJOLJUの「にへらぁ~」とした、満面の悪戯顔+哀れみを称えた間抜けな笑顔の意味は
「<非認識化>最強だとただれも気づかないJO」という意味で、「自分でなんとかしたら?」は「さっさと<非認識化>解けば?」という意味だった。それを寝ぼけた+パニくったサクラが勘違いしただけだ。
つまり!
全部サクラの一人ボケだった!
むろんこの間抜けな事実は誰も知らない。プライドの高いサクラが、こんなみっともない話、家族にだって言うはずがない。未来永劫笑いものになる。
……もっとも……一人だけ全て知っている奴がいる。
「サクラ~……オイラ、オヤツにアイスクリームのっけたデカいパンケーキが食べたい気分だJO~」
「…………」
今度こそ本当に悪意たっぷりの「にへらぁ~笑み」を浮かべるJOLJU。そう、この元神様は全部知っている。
パンケーキを作る技術はサクラにはない。
丁度家から3ブロックのところに、パンケーキ専門店ができたばかりだ。
つまり「奢れ」ということだ。
今回ばかりはこの屈辱と出費に耐えるしかない。
「お、ええな! パンケーキ! 本場の味やな!」
「サクラが奢ってくれるJO~」
「まぢか! ありがとサクラ!」
「……いいよ。奢る」
何も知らない飛鳥は大喜びする。
サクラは思った。
……いっそ、猫にしてくれ……と。
しかし、そんな非現実的な事が起きようはずがなかった。
<仔猫さくら>は5日後、元の飼い主のもとに返された。
<仔猫さくら>がどんな人生?を送るかは、また別の物語である。
「猫になったサクラ」後編 でした。
サクラのアホ話でした。
いくらJOLJUが何でもできても、そんな漫画みたいな悪戯をするはずがないです。
このように……サクラも最近はちょっとボケるようになりました。ちょっと?w
珍しくJOLJUが勝った?話です。
というか、ただサクラが自爆しただけの話です。
こういう短編もたまにあるのが「黒い天使」です。
次はどうしようかしら?
多分短い短編です。
これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。




