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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使」シリーズ
15/206

「黒い天使短編・飛鳥の事件簿インド編 11」

「黒い天使短編・飛鳥の事件簿インド編 11」!


子供の象を治癒させろ!!


超能力を持つマリー、大奮闘!!

だが中々骨折は治らない。


見守るだけの一同。諦めかけた時、飛鳥が閃く!!

黒い天使「飛鳥の事件簿」 <こうしてウチらは家に帰る?>



 <ドベルクの悪魔>、黙って見守っている。


 サクラたちもただ見守るだけである。


「神よ……癒したまえ。癒したまえーっ!」


 マリーは無我夢中に祈り、力を癒しの手である右手に意識と力を集中させている。彼女が何をしてくれているのか分かるのか、子象も大人しくしている。


 マリーが治癒を始めて30分になろうとしていた。しかしまだよくならないようだ。

「ま……マリーは言い出したらきかへんからなぁ~。子象、よくなるとええケド」

 と、飛鳥とセシルはマリーに期待をしていたが、サクラは素っ気無かった。


「無理だ無理。ポッキリはいってなくてもパッカリ割れてたもん。人間の骨だったらまだなんとかなるかもしれないけど相手は小さくても象! 人の背骨より太く硬い足の骨が治癒能力くらいではなんともならん」

「おまいはドライやな。少しは希望があってもええやん」

「ドライっていうか現実」サクラは欠伸をしながら四次元ポケットからドライフルーツの入った袋を取り出し食べ始めた。

「そもそもマリーの治癒能力は奇跡の力、特殊能力だけど、あれは本来人間が持っている回復能力や抵抗力を刺激させて自己回復力を異常促進させているの。魔法みたいに傷や病気をなかった事にしているわけではないし欠損細胞を補っているワケでもない」

「ふむ。でも回復はするんやろ?」

「自然回復力を促進させるんだから、重傷を相手にするほどマリーは疲れるのよ。今回の相手は小さいとはいえ象。この数日飲まず食わずで弱っているし、たかが骨折とはいえ、そこに必要なカロリーは人間の比じゃない。回復細胞も治癒力も人間と象じゃ勝手は違うんだから。それに第一、象は衰弱してる。マリーの能力はそっちにも作用するし」

「なんか色々ややこしそうやな」と飛鳥もサクラの掌の中にあるドライフルーツを分けてもらって、それを口に運ぶ。


「マリーの体力を仮に100として……一時間ぶっ通しで回復かけて消費するカロリーも100としよう。普通の人間の骨折が1/4のダメージで25カロリーだとしたら、マリーは人間なら4人は治せると仮定だ。今回の場合象のHPが400だとして、ダメージが200だとすれば、一回100しか治せないマリーにはどうやっても治せないワケ」


「何度か休憩を繰り返しても無理ですか?」と言ったのはセシル。しかしそれは無理である事をすぐにセシルも思い出した。人間相手の治癒でも回数を重ねれば目に見えて分かるほどマリーは消耗する。その疲労は少しの休憩でどうなるものでもないし、ユージもマリーの能力については「サクラのように回数無限じゃない。無理させすぎると命に関わる」と言っていたのを思い出した。


 その時……ほとんど同時に天の声……閃きが飛鳥とセシルの中に舞い降りた。


「サクラ……今さっき言った仮定の計算式は大体あっているんですか? つまりカロリー……マリーのエネルギーは、ほぼ半分くらいしかないんですか?」


「40%くらいね。マリーのど根性でなんとか50%いくかどうか。100にはほど遠い。象はそのくらいでかいンだからしょうがない」


「サクラよ。つまり……マリーが二人いたらなんとかなるかも、という事やな?」

「しかしマリーは一人だけ。これが現実である」

 今やマリーが疲れ諦めるのを待つだけモードの無責任サクラ。しかし飛鳥とセシルは顔を見合わせ「ニヤリ」と笑った。


「…………」





「ふざけるなぁーー!! サクラちゃんの体力がカラカラになったらどうすんだぁー!!」


「頑張れ! サボったらあかんで~! そのしわ寄せはマリーに行くンやから」

「サクラの治癒能力は回数無制限です。貴方は命の心配などせず根性を見せてください」


 そう。子象の治癒にサクラも加わった。サクラは散々文句を言ったが飛鳥とセシルは全く容赦なく強引にサクラをマリーの横に座らせほとんど無理やり治癒を始めさせた。


「マリー二人分でなんとかなるならサクラもやればいい。簡単な計算やな」

「確かサクラの治癒方法は細胞活性方法の応用ですよね? なら象相手にも効きますし、マリーとの能力の掛け算にもなります。ま、倒れたらテントまで背負って運んであげますから心置きなく頑張ってください」

「お前ら能力ないから簡単に言うけど、治癒って結構大変なんだぞ!!」

「マリーが頑張っとる。おまいも頑張れ~」

「くぬぅ~!! 普段は封印能力で使っちゃいかんのに! サクラちゃんの治癒能力は」

 本人のいう通り普段サクラの他人への治癒能力はできるだけ使うなと言われている特殊能力なのだが、封印レベルは低めでサクラの自己判断で解除できるレベルだ。


 という事で使っても駄目ではない。そして回復能力ではマリーには劣るもののサクラの場合集中的に使ってもマリーのように体力を大きく消耗するような疲れ方はしない。


 元々やる気がなかったサクラは一転、どうやら治さなければ飛鳥とセシルは許してくれそうにない。飛んで逃げてもいいが、そんなことをすればユージやエダに告げ口されて後で叱られる。それは御免だ。


 こうなったらサクラも本気で治すしかない。


 サクラはマリーとは違う方法をとった。無駄に全体を癒すのではなく、折れた骨を透過術で直接触れて一点集中で治す方法にした。このほうが体力の消耗は少なく効率がいい。


 こうして超能力少女二人による、子象の骨折治療大作戦が始まった。


 そうこうする事、さらに30分が経過する。


「……疲れた……」と零すサクラ。


「癒すのです!」

とマリーは今も真剣だ。だがその声にも疲れが表れ勢いも目立って落ちてきた。サクラはまだ余力がありそうだがマリーはもう限界で、今はもう根性でやりきっているような様相だ。


「がんばれー! 根性みせろー!」

「ガンバです、二人ともー」


 飛鳥とセシルは熱心に応援……などしていない。口は応援しているが、二人はオヤツのドライフルーツをコイン代わりにしてポーカーをして遊んでいる。それを悔しそうに睨むサクラ……。


 そしてさらに15分……ついに、子象の骨折は完治した。


「疲れたぁ~!!」バタンとその場で大の字になって寝転がるサクラ。息も荒く本当に疲れたようだ。しかしサクラはまだ元気なほうで、マリーは終わったと同時に「ばたんきゅー!」と言って(自動翻訳機がそう訳したので実際なんといったかは不明)その場に倒れこんでしまった。意識はあるがかなり激しい消耗で目を瞑って横になっている。


「よく頑張った! 感動したーっ! 痛みに耐えてよく頑張った!」

 1gも感動していない飛鳥の宣言を聞いても、サクラもマリーも突っ込む元気はない。


 とりあえずマリーはセシルが担いで穴から上げ、サクラは疲れた顔でふわふわと浮いて上がってきた。そして飛鳥とセシルがパワー手袋をはめ、<ドベルクの悪魔>サンにも協力してもらって、ロープを利用して子象を引き上げた。


 こうしてすっかり大人しくなった<ドベルクの悪魔>とその子供か孫である子象は仲良く森の奥に帰っていった。それを飛鳥とセシルは満足そうに見送っていた。


「いやぁ~! なんか『働いた!』ってカンジがするな! 村も救ったし象も救ったし」

「確かに今回はちょっとしたイベント尽くしでしたね」

「疲れた。ただただ疲れた」とサクラは不満一杯だ。なんだかんだとサクラは自分の意志にない行動や疲れることは大嫌いだ。無理やりやらされた仕事なら尚更である。


 という事で、一同村に戻っていった。


 その途中である。川のほうからJOLJUがやって来て鉢合わせた。


「いや~ちょっと色々やってて遅くなったJO」

「何してたんや? 今まで」

「発電機作ってたンだJO。今は避難してきた人も増えたし、まだ村の電圧は不安定だから、村の臨時病院と学校とムハマド君の家に特製発電機を設置してきたんだJO。どこも電気がないと困るし」


 ちなみに小型火力発電機なのだが、そこはJOLJU特製品。なんと薪で発電できるのだ! これならインドの山奥でも燃料に困らない、大変親切設定だ。


「臨時病院と学校は分かりますが、ムハマド君の家は一般家庭でしょう? JOLJUの友達なのは知っていますが特別扱いの理由は何かあるんですか?」

「あるJO!」ウムウムと頷くJOLJU。「10日後の決戦にはムハマド君は欠かせない我らがチームのレギュラープレーヤーだJO」


「プレーヤー?」


 サクラ、飛鳥、セシルは顔を見合わせる。そもそも今回の遠征はJOLJUの友達であるムハマド君が被災した事に端の発した援助活動だ。JOLJUが気にかけるのはよく分かるが、ブレーヤーとは何だ??


「オンライン・ゲームの集団戦のチーム仲間なんだJO。ムハマド君」


「…………」


「これでムハマド君も参加だJO! 目指せ上位ランキングだJO!!」



「「「今回の大事の理由はソレかぁっ!!!」」」



 サクラ、飛鳥、セシルが同時にツッコミを入れた。


 そういう事だ。


 大地震に見舞われたムハマド君たちを助けに行こうと言い出した理由の一つは、なんてことない、JOLJUの私的なゲームのためだった! ……いやいや、さすがにそれだけの理由ではなく心配も友情も親切心もあるのだろうが……しかしJOLJUの本音がたかがゲームであったと聞くと、これまでの苦労が馬鹿馬鹿しいというかJOLJUの我侭に理不尽を感じるというか……。とにかく全員を脱力させるには十分だった。


 まぁ……サクラたちがJOLJUの贔屓に文句を言える身分ではない。サクラや飛鳥たちのほうがよほどJOLJUに色々してもらっている。



 ということで、一同も帰る準備を始める事にした。



「黒い天使短編・飛鳥の事件簿インド編 11」でした。


ということでドタバタ治療編も終了です。


これで今回のインド編の大きなイベントは終了しました。

あいかわらず色々事件が起きて色々活動するサクラと飛鳥たちのちょっとした冒険編でした。

今回は日常レベル冒険編なので起こる事件もこの程度ですが、これが長編、大長編になるともっとすごい事件が怒涛のようにおそいかかるわけなんですが今回はこんなもんですね。


ということで次回はオチ、帰国編です。


最後までドタバタしますよー


ということなので「飛鳥の事件簿インド編」は次回完結です。


これからも「黒い天使」を宜しくお願いします。

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